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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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水上の死闘 倒す為の決意

 シギアは傷ついた体でカイングロの所へ行った。

 水で足元をすくわれそうになりながらも1歩1歩歯をかみしめる様に進んだ。


 シギアは肩で息をしていた。

 何しろ窒息寸前だったのだ。

 また激しい感傷でメンタルも傷ついていた。


 宝児はシギアの様子を見た。

「シギアさん、肩を貸して下さい」


 しかしシギアは安心させるように微笑んだ。

「いや、大丈夫だ。君も疲れてるだろ」


 シギアは心の中で強く決意していた。


 俺は今度こそ本気になって見せる。

 誰も死なせはしない、他人の為に戦う。

 と思っていた。


 その頃カイングロは思っていた。

「しまった! ぬかった。あいつが死んだかどうか確かめなかった。ファッティ、水かさをもっと増す事は出来ないか」

 

 水の魔法使いファッティは答えた。

「いえ、これ以上水かさがあがると調べにくくなります。今でも足の踏み場がありません」

「水を減らす魔法はないのか」


「ありません。うっかりすると我々が水に沈みます」

「やっかいだな。今キングヘイル様にご連絡したが、勇者が死んだか確認しなかった事をつつかれそうだな」


 その頃カイングロがいる基地とはさらに大きな基地の場所に同じく支配者、上司らしき男が膝を組んで座っていた。


 そこもシュトウルム帝国の基地の1つであった。カイングロがいる基地とはそう離れていない為連絡や状況を知る事も容易だった。


 顔が横に広いひげを生やした非常に屈強な男だった。

 角の生えた牛のような兜をかぶり黄色に金がかった色の鎧を着ていた。


 体と合わせて総重量が凄そうで、その重さが激しい威圧感を作っていた。

 そこへ部下が来た。


「キングヘイル様、ご報告します。カイングロ様から、勇者を倒したとご報告です」


 キングヘイルはにやりと肘をつきながら威圧感を保って見せた。

 部下はかなり震えている。


「ほう、それは朗報だ。しかしきちんと確認したのだろうか。あいつに任せておいたがどうも今1歩詰めが甘い所があるのでな。帰ったら問い詰めるか」



 部下は報告だけでキングヘイルにおびえていた。

 キングヘイルはにやりとした。


「そう怯えずともよい。お前が処刑になるわけではない。ところで状況としては勇者に刺客が2人やられた所だ。それだけでない、相乗効果でまた何やらパーティ構想だの言う情報が耳に入った。ワンザめ何をする気だ」

「今兵を増やして勇者を捜索しております」


「ふむ、まあ今後の予定として他の町や占領地にも兵を増やす。鉱山が近くにあるから力のある者を使い資源を掘らせる。奴らは永遠に地獄のように労働させる。くっくく。しかし、もう1人何かおかしな小僧がワンザの所にどこからか来たらしい。一体どこから……全く強そうに見えず特殊能力も持っていないという事だが、気になるな」


 その頃カイングロはシギアを探していた。

「どこだ! 勇者はどこだ!」


 そこへ突如、高所から少女の声が聞こえた。

「待ちなさい!」

「誰だ⁉」


 それは水質調査をしていた男性達に声をかけた少女の声だった。

 しかし場所が高い為カイングロは姿を確認出来なかった。


「ふふ」

 と帽子に顔を隠しながら少女は微笑んだ。


「顔が見えん! 貴様勇者の仲間か」

 と言った瞬間、威嚇の様にカイングロ達の所に雷が落ちた。


「いきなり雷が落ちた! 何だ⁉」


 ファッテイは言う。

「強力な雷属性の魔法です」


「おのれ! 誰か知らんが!」

 カイングロは火球を放ち少女のいる足場を崩し、建物が崩れどうなったのか声の主は消えた。


「しまった外して姿を確認出来なかった」

 ファッティは悔しがった。


「あんなやつ勇者の仲間にいましたか」

「うむ。だから確認したかった。キングヘイル様への報告もある」


 その時声が聞こえた。

「待て!」

「ぬっ!」


 シギアが来た。

「カイングロ! 今度こそ倒す!」

 

 シギアは思った。

 俺は冷たい人間だ。だからあいつらの罪を責める権利はないかもしれない、大して違わない、同類かもしれない、だからせめて俺に出きる事は皆を救い流されてる人をこれ以上増やさない為あいつらを倒す!

 

 そして自分の意識も変わるため!


「貴様の仲間に雷魔法を使える奴がいたとはな」

「な、なんの事だ?」


「ふん、まあいい、しかしはっはっは! もう満身創痍でないのか⁉」

 シギアは苦しみながら隠すようににやりとした。

「試して見るか?」


「ふん⁉」

 カイングロが声をかけると6人隠れていた兵士たちが出て来た。


 宝児は怯えた

「兵達がこんなに!」


「やれい!」

 カイングロが号令をかけた。


「はあ!」

 兵士たちは一斉にシギアに襲い掛かった

「うおお!」

 

 しかし、傷ついていても

 シギアの強さは圧倒的だった。


 一斉攻撃を上手く空中にジャンプしてかわし後方に着地した。

 兵達はシギアの身のこなしに「おお」と驚いている。


 着地したシギアは兵の中心に立ち囲まれながらも呼吸を整え各兵士達と間合いと距離を保った。


 兵達とはそれぞれ3メートル程離れている。

 シギアは前方だけでなく横や後方にも目と気配察知を行き渡らせけん制した。


 じわりじわりとシギアに隙が無いか伺う兵士達。

 足場をじりじり確認し複数の相手に身構えるシギア。  


 隙の探り合いにしびれを切らし、緊張に耐えられなくなった最前の兵が襲い掛かって来た。


 シギアは1発目、2発目をかわした。


 そこへ後ろの兵が切りかかって来たが、後ろ向きで剣を出して防ぎ、次に横からくる兵士には剣を立てて防いだ。


 今度は前から別の兵が来たが剣を受け力比べをする。

「ぬぬ」

「ぐぐ」


 シギアは上手く払い肘鉄を兵の腹に食らわせて、その隙に振りかぶり切りを食らわせ、今度は後ろから来た兵にも後ろ向きで蹴りを放ち、更には横からの兵の攻撃にも対処した。

 

 1人は豪快に腹部を横切りした。

 次の1人はさっと半身を斜めに切った。


 シギアはまるで流れる様に1人1人対処し切り捨てて行った

 人を切るのに流れる様にと言う表現が悪かったとしても。


「あ、ああ」

 と言いながら兵士は倒れて行った。


「はあ、はあ!」

 シギアは疲れを隠した。


 シギアが叫ぶと最後の1人も倒れた。


 カイングロはあとずさりした。

「ぬうう…」


 と言いカイングロは火球を撃って来た。しかしシギアは剣ではじいた。


「ぬう!」


 カイングロは2、3発目を放ったが、これもはじかれた。

 直径3メートルの火球をである。


 ファッティは怯えた。

「あの威力の火球を弾くとはあれが勇者か」


 カイングロは高所から降りた。

「ならば剣でやってやる」


 シギアも剣を構えた。


「罪もない人を大勢ひどい目にあわせやがって」

「それがどうした」

「成敗してやるよ」


 シギアは睨み叫んだ。

「ぬおお」


 2人は同時に突進しぶつかり合った水しぶきが飛び散る。

「ぬうう!」

 

 カイングロはキングヘイルへの報告、シギアは今度こそ本気になると言う思いが重なり両者凄まじい気迫だった。


「ぐぐ」

「はああ」


 剣が斜め10度の角度同士でぶつかり急な角度の罰印を作りながら睨み合う。

 両者1歩も引かない。


 シギアの怒りを上手くあしらおうとカイングロは先に剣をのけ防御体勢を取った。

 

 シギアは構え突進したがカイングロは横に回転して避けた。


 怒るシギアに対し、カイングロは少し余裕がある。

 洪水はさらに激しくなり戦いを表している様だった。


 シギアは先手をとるように攻めに攻めた。

 隙の少ない連続的な刃での突きを見舞った。


 しかし焦っている様だった。

 その証拠にその後真横からの大振り攻撃をした。

 それがどこかカイングロに伝わった


「様子がおかしい。確かに怒りで焦るのもわかるが」


 シギアはバックステップしたそしてスキル「波動」を放った。


「ぬああ!」


 カイングロは5メートル近く吹っ飛ばされた。

「ぐあ!」


「よし奥義で一気に勝負をつけてやる」

 シギアの剣が光り始めた。


「やはり何故かこいつは勝負を焦っている。体力の問題だと思ったが! 待てよファッティー!」


「はっ!」

 ファッティは水魔法を放つとシギアは弾かれて川に落ち息が出来ず苦しんだ。


「わかったぞ! 貴様は泳げないんだな! どうも自分を水からかばう感じがしたが! ファッティもっとやれ!」


 ファッティはさらに水魔法を放った。

 水かさが増し水の勢いが増した。


「が、がふ!」

 シギアは溺れた。 


「シギアさん!」

「宝児! 来るな!」


「ふん!」

 ファッティは宝児の前に立ちふさがった

「先にはいかせんぞ」


 その時宝児の手がシギアが前に何度か見たのは間違いでなく、青白く光った。


 手に眩い光が集まり球体になった。


「何だあれは⁉」


 ファッティは驚いた。


 宝児は「助けたい!」と言う一心で叫んだ。

「うおお!」


 すると青白い光が発射されファッティを襲い倒した。

「何だ!」

 反動で宝児は倒れた。


 カイングロは驚いて宝児の方を見た。

 まさに不意打ちだった。


 予想も全くしていなかった。

 あんな奴にあんな力が。


 宝児は立て続けにまるで何かが取りついた様に青い波動をカイングロに向け放った。

 

 何も出来ない自分だけどシギアさんを倒す術が欲しい!

 その一念だった。

 シギアもかなり驚いた。


「うおお!」

「ぐああ!」


 青い波動がカイングロに決まった。


「今だ!」

 宝児の技に動揺しながらもシギアはひるんだカイングロに飛び掛かり倒せそうに見えた。


 しかし、そうは問屋が卸さなかった。


「大振りだな」

 と言いカイングロは反撃しシギアは脇を薄く切られた。


「勝負を焦った者がこの私に勝てるか」

 

 シギアはバックステップして距離を空けたがすぐ縮められ左下から右上の30度程のすくうような切り技がシギアの胸と肩を切った。


 更に右上の顔付近への少し角度をずらしながらの断続的打突を放った。


 速い剣が少しずつ剣の角度をずらしながら顔の左下、右下も狙って来る。

 シギアは右下の脇腹を狙ったが防がれた。

 

「その位お見通しだ」 


 かわされた!

 シギアの胸に嫌な予感が走る。


 シギアは右脇にも剣を食ってしまった。

 更に予期しない足払いを受け倒された。

 

 ダウンしたシギアは見下ろすカイングロに足を刺された。

「ぐああ!」


 さらにカイングロは顔を狙い、避けるシギアを楽しむ様に剣を何発も突き立てる。

 

 シギアは顔をそらしたり転がって避ける。

「顔をぶっ刺され顔面崩壊して血まみれになって死ね!」


 しかしシギアは咄嗟にカイングロの足を蹴りで払い体勢が崩れた所を巴投げした。

「ぐっ!」


 そして剣を一閃、叫びと共にカイングロの肩から腿まで斜めに光の剣で切った。


「はあ、はあ」


「やったか」


 シギアはカイングロが動かなかくなったのを確認した。

「よし捕まえよう」

「生かすんですか」


「反省させる為、罪の償いさせるためさ」

「意外と優しいんですね」



 とりあえずは解決した雰囲気だった。


「宝児、一体。もしかして力を隠していたのか?」

「いえ全然違います! 僕にあんな力。自分でも一体何が何だか」


「じゃあ何で」

「分からないんです。がむしゃらになったらいきなり僕の手から」



「その話は後でしよう。帰ろう」

 宝児はシギアの肩を担いだ。


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