あがくメガスと諭すシギア
「覚悟しろ、メガス」
先程までぼろぼろだった様子とうって変わり、シギアは悟りを得たような凛とした表情で立った。
体力も完全回復したがそれ以上に心も浄化された様で、怒り、苦しさ、憎しみ等が大きく減っている。
メガスもこれまでと明らかに違うと感じ取った。
しかしまさかシギアが自分より強くなったのでは等とは意地でも認められなかった。
「く……」
シギアは剣を抜いてメガス目掛け一閃した。
剣の衝撃波が三日月型に飛ぶ。
「おのれ」
メガスも三日月型衝撃波を撃ち返した。
2人の8メートル程の距離の中央でぶつかり合う。
シギアもメガスも剣を振り切った状態で継続してエネルギーを送り続ける。
「ぐぐ……」
シギアが何故か落ち着いた表情なのに対しメガスは必死だった。
負けたくない、や国を守る等と別に、シギアが実は自分より強いのでは、またシギアが自分を見下し憐れんでいるのではとさえ感じる目つきに怒りと悔しさを感じたからだ。
ま、負けるわけがない、あ、あんな小僧に、その為悪魔王とも1つになった!
う、うおおお!
シギアはどこかまだ全力でない感じだがメガスは汗をかき至って必死だ。
その内メガスの衝撃波が押され始めた。
「な!」
「まさか、あんな奴にこの私が押されるなど!」
皆は動揺した。
マーティラスとクリウが話す。
「メガスが焦ってる。それだけじゃなくシギアは一段高い所から受け止めている様にも見える」
「受け止めている?」
「ああ、力だけでなく怒り、苦しみ、悲しみ、あがき、それらの感情を全て神の様な視点で受け止めている神々しささえ感じる」
「女神様は彼にそんな力を」
メガスは押された。そして避けられず食い吹き飛ばされた。
本来は絶対に避けられないわけではなかった。
しかし意地や自分の方が押されてかつ焦っている、それを認めたくない弱さを受け止められなかった。
先程5分前までは自分が圧倒的有利だったのに。
しかしメガスは剣を取り立ち上がった。
「おのれ、ならば剣で!」
と全ての意地を賭けるようにシギアに向かって言った。
勿論シギアも身構え向かって行く。
しかしシギアには余裕がある。それは見る者全てに明らかだった。
かつ見下してもいない、感情や存在を一段高く受け止めているようだ。
特に目からそれを感じる。
そして2人の剣がぶつかり合う。
ちょうど30度の角度のバツ印になった。
剣の向こうからメガスは歯ぎしりをしながらシギアを激しく睨む。
「何だその悟った様な憐れんだような眼は! 私はお前より上の存在だぞ膝まづけ!」
「……」
シギアは目つきを変えず何も答えない。
剣を一旦放したメガスが再度切りかかる。
しかし軌道が同じようでとっくに読まれスピードも落ちていた。
シギアは受け止めたがあまり表情を変えない。
そして
「かけた! 悪霊の剣が!」
シギアの最高ランクの剣に遂に悪霊の剣がかけた。
「う、うおおお、そんな事があ!」
かけた剣で再度切りかかったが今度は遂に剣が折れた。
悪霊の剣が床に落ちる。
床に破片になった剣を見てメガスは言った。
「剣が折れたぐらい何だと言うのだ! 貴様は私に勝てん! 先代の王達よ我に力を!」
と天に手を挙げ祈りそして素手で殴りかかった。
しかしシギアに受け止められてしまった。
「な!」
「もう、止めようぜ、メガス」
「な、に⁉」
シギアの言い方は決して意地悪でも挑発的でもなく諭すようだった。
怒りがあまりない。
それを感じたメガスは当惑した。
「もう無理だ。あんたらしくなく取り乱してる」
「取り乱して等!」
「一国の主なんだろ? それとも若すぎたか」
「な、う、うるさい! 生意気な事を言うな!」
と再度殴りかかったが受け止められた。
メガスはわめいた。
「庶民、下民、奴隷の分際で! 貴様など道に落ちている物を食べる人種だ!」
「やっぱりあんた取り乱して本来の自分を見失ってるな」
「うるさい!」
「もう国の王なんて無理だろ」
「黙れ!」
そしてシギアは遂に手で殴った。
メガスは倒れた。
「観念しろよ。あんたには罪を償ってもらう」
「償うだと」
シギアはあまり怒っていない。
メガスは見上げた。
「処刑されるかも知れないけどそれでも」
「償うだと、どう償うと言うんだ、私を馬鹿にするな」
「あんたの部下と同じ牢に入って反省しろ」
「部下だと? あんな何の中身もない奴隷や下僕どもと同じ場所に行き臭い飯を食えと言うのか!」
これに観客の傭兵は怒った。
「何だと! おまえもう王やめろ!」
ディスピット達も言った。
「あの小僧追い詰められてからが正念場なのに。これも世襲制のせいだ」
「あんたは何もない自分を取り繕って国民の前に見せてたんだろ」
「うるさい!」
「大義名分だって父親をまねただけだろ」
「うるさい!」
メガスは核心を突かれた。
しかし息を整えにやりと笑った。
「?」
「ふはははは!!」
「何?」
いきなりメガスが笑いだし皆は当惑した。
「私が真の後継者だと思ったか?」
「?」
「ラスビイ、行け、出番だ! 第3皇子!」




