不屈の戦士達
クリウの聖白魔法が通用しなかった。
クリウは歯ぎしりをし動揺を隠した。
メガスは笑った。
「確かに悪魔王様は闇属性だ。しかし私は聖属性には結構強い方でね。まあ悪魔教の熱心な信者であるが」
しかしクリウはめげずもう1発撃った。
以前までと比べ物にならない威力になっていた。
大きな聖球がメガスに迫る。
しかし、確かに完全に当たったが、これも大したダメージは与えられなかった。
「ぐっ……」
クリウは唇を噛んだ。
メガスは言う。
「勇者もこの様だし貴様も皆を回復する魔力がもう残ってないんじゃないか? 万策尽きたか、ぬ?」
何とクリウは3発目を発射した。
「懲りん奴だな」
しかし軌道はシギアの捕まった方へ行った。
「ぬ?」
爆発でローブは砕けた。
そして煙と共にシギアは瘴気のロープから脱出した。
「くっ、そう言う事かいまいましい女め」
と即座に剣状の瘴気を出しクリウを刺し貫いてダウンさせた。
「とうとう回復役までやられたな。ぬっ?」
シギアは素早く空中に移動しており振りかぶり垂直に切りかかった。
これは不意打ちとはいえ受け止められたが、シギアはまだ諦めない。
「あきれた根性だ」
「はあっ!」
シギアは連続で攻めて行った。
さっきほどの単調さが無くなった。
「憎しみは悪への道だ。戦いを終わらせる為戦うんだ。戦え」
と教師達の言葉を思い出し仲間が皆やられ怒り爆発しそうなのを抑えた。
怒りを抑えているのはメガスに伝わった。
切りかかるが通用しない。
右80度の袈裟切り。
左60度の袈裟切り。
防がれはしたが単調さは無くなっていた。
そしてシギアの内面との戦いでもあった。
「冷静に、しかし悪を許すな!」
確かにスピードも落ち着きも上がっていた。
しかしそれでもメガスの方が力は上だった。
切り払われてしまう。
「ぐっ!」
「はああ!」
諦めずに攻め続けるシギア。
食い下がった。
「全く諦めが悪い」
シギアは不意に聞いた。
「あんたは自己野心で戦うのか、それとも親たちの意志を継ぐ為か」
「親の意思を継ぐ為だ。ハーディング家が世界を統一する夢を成し遂げる為だ」
「殺されたり支配される側には夢じゃない」
「ひょっとして私を揺さぶりに来ているのかな」
様子をディスピット達が噂した。
「やはりあのメガスの小僧は多少有能でも自分の芯がない。親の意を継ごうとしているだけだ、基盤がなく、それに力に溺れやすい。悪魔王の力を手にして思い上がり最悪自滅するのではないか」
遂にメガスは奥義を放ちシギアは吹っ飛ばされた。
「今のは『人間としての』力を出しただけだ。今度は悪魔王の力も加味する」
今度はまるで暴風の様な衝撃波がシギアの全身を襲った。
まだ意識のあるレオンハルト達は「もうこれまでか」と思った。
しかしシギアはまだ立ち上がった。
「まだだ」
体中が焦げている。
目は死んでいない。
黒焦げの様で心はさらに燃えているのだ。
そして憎しみの怒りではない。
「うおおお!」
決死の覚悟で切りかかった。
メガスは予想だにしない気迫に少しだけ押され始めた。
「ぐ」
しかしいきなりシギアは転倒した。
何と突如ラスビイがシギアの足を引っ張ったのだ。
「なっ!」
「ふふん、よくやった」
「くっ、お前何か怪しいと思ってたけど」
「そこが甘い。怪しくてもヘリウムは甘いんだ」
「気づかなかったか。ラスビイが我々のスパイだと。いやただのスパイだったらいいが」
「ただのってどう言う意味だ」
追求する余裕がなかった。
「まあいい、死ね」
倒れたシギアに剣を向けるメガスの足を今度はミンガードが押さえた。
「き、貴様!」
「まさかまだ私を説得出来ると思っているんじゃないだろうな」
「思っていない。今はシギア君達を助ける」
「貴様に肉親の情が捨てられるか」
と剣を向けたメガスに白魔法が襲い掛かった。
「誰だ⁉」
クリウは力を振り絞り立った。




