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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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薄れゆく意識の中で

 やはりシギアは沈んでいた。

 体もだが、精神もだった。


 1人きりになったからこそ自分の本音と向き合えた。

 吐露出来た。

 皆には恥ずかしくて言えなかった事も


 生きようとあがこうとすればあがける。

 しかしあえてそれをしなかった。


 もはや生きる意欲がない。

 生きていても仕方ないと感じていた。

 

 いや生きる意欲がないのではなく生きる意味がない。

 いやもっと言えば生きる資格がないのだ


 人の命を優先する行動が取れなかった自分は勇者失格だ。と思っていた。

 いやそれ以前に人間としてかなりまずい。


 何故こんな基本が分かっていなかったのか。


 いやとっくに分かっていた、しかしいつからか環境や他人のせいにし心を塞ぐようにしてしまったのだ。


 勇者学校時代の授業が頭に浮かぶ。


 勇者学校では戦いよりまず人命の重さと人助けの大事さをいやと言う程学んだ。

 

 苦手な水中人命救助特訓もした。

 しかしいつからか強くなる事ばかり考えるようになってそう言った教えが頭から薄れた。


 シギアは薄れゆく意識の中で思っていた。

 さっきは久しぶりに本音を結構言ったな。


 俺はあまり本音を言わない主義なのに恥ずかしかったな。


 考え事は続く。

 

 でも俺は宝児もレオンハルトの意見も正しいと思ってる。散々彼らに色々言ったけど彼らの方が正しい。


 もし俺が行かなかったせいでおぼれた、助け損ねた人が1人でもいたら……取り返しのつかない事に、俺は助けられなかったんじゃなく見捨てた事になる、


 それに俺は確固たる決意も考えもなく、覚悟もないのに、戦いでかなり敵兵の命を奪った。


 それも命の価値をわかってないって事だ。

 ああ死んで生まれ変わりたい。

 このまま死ぬだろうけど。


 巻き込まれたからとか戦争だからと相手の命を奪うのは卑怯者で弱虫だ。


 いや弱虫よりも、命の価値を理解していないのは残虐な帝国兵と変わらないじゃないか。俺は残虐だ。

 いや正義ぶってるだけ俺の方が質が悪い。


 懺悔でもしたい。

 と薄れゆく意識の中で思っていた。


 このまま死のう、孤独に苦手な水中で死ぬのが俺らしい。天国でなく地獄に行こう。


 すると幻か、シギアの前方に沈む物体が見えた。

 何だあれ、魚じゃなくて……人だ! と思った。


 ところがシギアは気づいた。

 あれは確かに沈みかけてる人間だ! た、大変だ俺が助けないと! と思った。


「はあ!」

 とシギアは体に気合を入れた。

 動け、動いてくれ俺の体! と必死だった。


 シギアは思った。

 勇者が泳げなきゃカッコ悪いとかそんな次元の問題じゃないんだ! 

 俺にはあの沈んでいる人を助ける義務がある、いや役割がある、人としてだ! 勇者じゃなく。


 宝児から教わった事、いや最初から分かっていても目を背けていたんだ! 


 恥ずかしくて……でも俺は助けて見せる! 恥ずかしい、俺は今度こそ本気になって見せる!

 そう誓った。しかし。


「う、うぷっ!」

 シギアは水をかなり飲んでしまった。


 それはまさに泳げない者が必死にあがく姿だった。

 こんなにあがいたのはいつぶりだろう?


「あ、ああう!」

 初めて泳いだ子供の様な姿で手足をじたばたさせ必死に沈んでいる人に近づいた。


 あ、あと少し、もう少し! と思っていた。


 そしてついに溺れている人の手をつかめた。

 手をつかめた! このまま地上へ! と思った。



 しかし、体が浮かない。


 浮いてくれ俺の体! 俺は沈んでもいい。この人だけは救わないと。この人がどこの誰だかわからなくても。う、うう、と思っていた。


 クリウに回復してもらっても限界に近かった。

 しかしそこで水中で2人の体をつかんだ者がいた。


 だ、誰だ! と思った。

 それは宝児だった。


「2人かつぐのは辛いですが僕は水泳部です! 少し我慢して下さい!」


 宝児は水中で2人を捕まえ重さに苦しみながら上昇した。

「はあ、はあ!」


 そして遂に陸にたどり着いた。

 疲れた体でシギアと小太りの中年男性を引き上げた。


 そして休む間もなく2人の腹を交互に押した。

「二人ともしっかりして下さい!」


「あ、ああ」

「シギアさん!」


 シギアが先にはっと目を覚ました。

「よ、よし! 2人でこの人を助けよう」


 シギアは起きて宝児と一緒に男性の腹を押した。

「シギアさん、大丈夫ですか?」

「ああ!」


「シギアさんってすごく必死なんですね。レオンハルトさんが少し自分本位な人だって言ってたから」


「あのやろう……ま、まあね」


 そして男性は息を吹き返した。

「やった!」

「良かった」


 宝児は言った

「じゃあ、この人を連れて戻りましょう皆の所に」


「いや……」

「えっ?」


「俺は行く、帝国の洪水を起こした奴の所に」


 流石に宝児は止めた。

「待って下さい今の体力じゃ」


「元はと言えば俺が取り逃がしたからだ。責任もある、だから追う。大丈夫だ1人で行く」

 宝児は行く。


「僕も行きます」

「君がか⁉」


「シギアさんがもし溺れたら僕なら助けられます」

「わかった、ん?」


 宝児の手から青白い光が出ていた。


 またあの光が出てる。いや溺れた為の錯覚か。

 



次話は登場人物紹介となります。

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