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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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目の前の人の命

9月13日改稿。

微妙な感情や照れが伝わる様直しました。

 しかし、シギアはもう1発火球を今度はカイングロから食ってしまった。


「3発目は予想出来なかった様だな」


 高所から火だるまになって落ち地面に叩きつけられ倒れるシギア。

 大分ダメージが重なった様だった。


「死んだか?」


 シギアはまだ息があるがすぐに動けない程のダメージだった。


 カイングロは建物から降りシギアを抱え水に叩き落した。

「はーっはっは! これで勇者も終わりだな!」


 シギアはさながら死体のごとく逆らえず流されて行った。


 宝児達は最初飛び込んだ方向と反対方向へ、シギア達のいる方へ行こうとしていた。


 そして溺れたレオンハルトに気が付いた。


「レオンハルトさん!」


 そして掴んだ。

 ドレッドは気付いた。

 「沈まない様水中で鎧を外したのか」


 さらにその近くにシギアは流れて来た。

「あれシギアじゃないか」



 宝児達はシギアとレオンハルトを抱えて何とか陸地に上がった。

 クリウはシギアに魔法をかけた。

「早く、回復の白魔法をかけないと」


 クリウの手から白い光が発せられシギアはいくらか回復した。

 シギアは何とか目を覚ました。


 しかし、レオンハルトはまだ起きない。

「どうなったんだ……」

 とシギアはつぶやいた。


 宝児は喜んだ。


「あっ、シギアさん! 目が覚めたんですね! でもレオンハルトさんが!」

「なっ!」


 フィリオが言った。

「鎧を付けたまま飛び込んだらしいです。だから途中で外したんです」


 シギアは腰砕けになりながらレオンハルトに腹を押して声をかけた。

「レオン! しっかりしてくれ!」


 ドレッドやクリウ達は腹を押して水を出そうとした。


 シギアは叫んだ。

「レオン、何故そこまでしたんだ」


 宝児はシギアに何かを教える様に言った。

「僕は個人的ですが敵をやっつけるよりおぼれてる人を助けるのが大事です」

「!」


 シギアは強い衝撃を受けた。

 まるで生まれて初めて違う考えの相手に指摘された様だった。


 宝児は続けた。心なしか少しシギアを責めているような雰囲気だった。

「それと、僕はまだ戦えないから自分に出来る事をやりたかったんです」


 ドレッドも言った。

「俺もだ」


 クリウ、フィリオも同意した。

「私も」

「私もです」

「……」


 黙ったままのシギアにドレッドが聞いた。

「おい、どうしたんだよシギア」


 シギアはいつもより自信なくこわごわ自分の考えを説明した。

「皆が飛び込んだら帝国をやっつける人がいなくなる。だってそうだろ? 敵を倒さなければ水はどんどん増えるんだ。その分流される人が増える。助けられない人が出てくる」


 全身特に拳を震わせ釈明の様に言った。目もそれ気味だ。

 言い訳の様で自信がない。


 ドレッドは相手の考えを汲んだ上で答えた、全否定ではなく。

「そうであっても俺は人助けの方が大事だ」


「!」

 ドレッドが宝児と同意見だったことも驚きだった。


 シギアは黙っていたがぽつぽつとまた自信なげに話し始めた。


 それは自分が人の命を優先しない人間だと皆に思われる恐れを心に持っていた。


「さっき、レオンも同じ事を言っていた。鎧を外して敵にやられても人を助ける方が大事だと。でも俺は敵を倒す事を考えていた。敵を倒さなければ洪水を防げない、だから倒す方が先決だと。でもそういう問題じゃないんだよな」


「俺が勇者の称号があるのにおかしいんだよ」

 とぽつり言った。

 何故かシギアは反省の弁を言えてほっとした奇妙な感覚があった。


 俺は何てひどい奴だ。

 と今度は心の中だけで言った。

 言うのは照れ臭かった。


「……」

 皆、何も言えなかった。シギアの知らない一面を初めて見た気持ちだった。


 シギアは微笑みながら思った。

 俺はひどい奴だな。

 しかし本音を口に出すのは恥ずかしかった。


「あ、あああ」

 とシギアはどう振舞っていいか分からずむしゃくしゃした。


 また心の中でつぶやいた

 俺は最低だよ。人間として。前から分かってたけど。

 人命より戦い優先。


「そんな」

 宝児は否定した。


 しかしシギアは続けた。

「そうだな、人命は大事だよな」

申し訳なさそうだった。


 いや、皆に教わるまで分からなかった。例え戦う者が全滅してしまったとしても目の前で苦しんでいる人を助けるのが先なんだ。


 シギアは少し黙ってまた続けた。

「レオンに嫌な事一杯言ったけど」


 俺の方がずっとずっと最低だ。

 と心で言った。

「……」


 皆は何も言わなかったがシギアは続けた。

「まあ最初から俺は変な奴だったけど」


 シギアは少し黙ってまた話した。


「宝児、君はすごいな。まだここに来てわずかなのにあれだけの行動力と人を助ける気持ちがあるんだから」


「はあ!」

 そこへレオンハルトが息を吹き返した。


 皆駆け寄る。

「大丈夫か!」


 何とか意識を取り戻した様だった。

「はあ、はあ」


 シギアは聞いた。


「大丈夫か」

「シギア……」


 シギアはレオンハルトに謝った。

 めずらしくかなりへこんでいる。


「すまない、あいつ倒し損ねた」

「……」


 シギアは謝罪を繰り返した。

「すまない」


 レオンハルトは必死に絞り出した。


「いや、それはいい。寧ろ全然気にしていない。ただ、そうじゃなく俺はお前とあまりパーティを組みたくない」


「!」

 これはかなり衝撃を受けた。


 レオンハルトは力を振り絞り語り掛けた。

「お前は強い。それに冷静で洞察力もある。だがお前は敵を倒す効率性の方を重視してしまっている。元々そういう考え方なんだとわかった」


「……」

 何も言えなかった。


 クリウはかばった。

「レオン、今シギアはそれを理解したのよ」


 レオンハルトははあはあ申し訳なさそうに言った。

「こういうとあれだが、俺は宝児君の方がずっと立派な人間だと思うぞ。たとえ負けても目の前の人を助ける事が大事なんだから」


「……」


 シギアはダメージが少し回復し立ち上がった。


 レオンハルトは聞いた。

「どうするんだ」


「俺は最低だ。最低の勇者だ、だから」


 だからおれも人助けを優先する。

 ここは心の中で言った。


 宝児はつらそうだった。

「シギアさん」


 シギアは飛び込もうとした。

 ところが何故か淵で躊躇している。


「どうしたんですか」

 フィリオが聞いた。


「あ、あの、実は怖い」

「は⁉」


「お、俺、泳げないんだよ」

「はあ⁉」

 これは皆完全に仰天した。


「ちょっと無理しないで!」

「う、うおお!」


 シギアは溺れている人を助けるため意を決して飛び込んだ。しかし流されて行ってしまった。


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