ギルギザンの一手
シギアとギルギザンの戦いは熾烈を極めていた。
相変わらず8万度の火炎が凄まじいスピードと短い発射間隔でシギアを襲う。
シギアはかろうじて高速の灼熱火炎をかわした、が。
もう少しで皮膚と服が焦げそうだった程熱が来ている。
冷や汗をかいた。
嫌、冷や汗どころではない、即死と隣り合わせの恐怖だった。
灰にされる……
眉間にシワを寄せ、歯ぎしりの様に歯ががちがち震えた。
「いくら女神に力をもらったとはいえ8万度の火炎が防げる訳がない」
それは厳然たる事実である。
しかし35メートル以上上空にいれば何とか火炎は届かない感じではあった。
「ここからなら届かないだろうが、逆に攻撃もしづらい。急降下すれば反撃を受けてしまう可能性が高い。奴に隙は小さい」
女神がシギアの心に語り掛けた。
「私が与えた新しい羽根があるとはいえ、あまり高度を高く且つ高速移動を繰り返せば貴方の体力も魔力も著しく消耗し最悪墜落してしまいます」
「墜落、じゃあ高度を落とすか地上戦に持ち込むしかないという事ですね」
「貴方はまだ戦わなければならない敵が残っています、ここで力を使い果たす訳に行きません。それと貴方のスキルのバリアもパワーアップしています。1度程ならギルギザンの火炎も防げるでしょう」
「1度ですか」
「よし、少しずつ高度を下げよう」
シギアは体力が落ちた事を悟られない様飛行高度を落として行った。
その頃シュトウルム城ではミンガードの前に竜化したマライが現れていた。
ミンガードはじっと見つめる。
恐れがなく落ち着いている。
マライは思った。
ミミ―デン様、何故こんなに落ち着いてらっしゃる? ああ聞く事が出来ないのが辛い。
ミンガードはじっとマライの目を見て言った。
「君は、マライ様?」
マライはミンガードの驚くべき洞察力に驚きながら不器用に頷いた。
「前に会った時君は竜族の血がどうとか思わせぶりな事を言った」
過去回想
マライとミンガードは会談の際竜族の話になっていた。
「じゃあ、ワンザ王の家系に竜族の血を引く者がいるって?」
「た、例えばですわ、例えば。もし私が竜になったりしたら軽蔑しますか?」
「そんな」
~戻る~
「マライさんなんだね」
マライは前足でミンガードを掴んだ。
「ここから脱出するのか。わかった。行こう」
マライは心の中で思った。
それだけでなく皆さんが戦っている場所へ行きます。私達がいなければ勝てないでしょう。
そしてマライは城を壊し抜け出そうとしていた。
「王様は?」
マライは心で言った。
こう言うとあれですが、お父様を戦場に連れて行ったら逆に命を落とす可能性があります。
そう言って
「いたぞ!」
と言って駆け付けて来た番人達を火炎で焼き払った。
カーレル隊長は指示した。
「宝児君はレオンハルト、アレーナ君はミラムロ君と一緒に戦ってくれ」
「えっでも」
「確かにこちらの戦力は落ちるがかといって彼らも負けるわけにはいかん」
「分かりました」
シギアは上手く捕まらない様に力を振り絞りながら複雑な動きで高度を下げて行った。
ギルギザンは太い声で言う。
「くく、貴様体力が落ちて来たな」
「……」
そして8メートル程の高さまで降りて来た時ギルギザンは爪で切ろうと前足をふりかざして来たが、これはそんなに速くなくかわせた。
「まだ尻尾があるわ!」
と言いながら尻尾を振り回したが確かに物理的破壊力は凄いが動きは遅かった。
「あいつ火炎以外は遅いんじゃ」
と兵達は言った。
シギアは
それが弱みなのか? でもどこか加減してるようにも見える。
そして遂にシギアは地上に降りた。
「地上に降りたな! もうこれで左右方向にしか逃げ道はないぞ!」
とギルギザンは言い高速の火炎を放った。
シギアは素晴らしい身のこなしで走って避けて行く。
しかし余裕はない。
また次が飛んで来る。
「くっ!」
転がって伏せたりした。
ついにヘリウム兵は決意した。
「もうシギア1人に任せていられない!」
「よせ!」
「あいつは動きが鈍い!」
と言い止めるのを聞かない兵の1人が突撃すると、ギルギザンは先程までとは比べ物にならないスピードで前足を兵に振るった。
「あっ!」
一瞬で兵は体を切り裂かれた。さらに追い打ちの火炎で黒焦げにされた。
「うっ!」
シギアは目を覆った。
「はっはっは! 俺がわざと鈍く動いていたのをあのバカは気づかなかった様だな! さらに!」
今度は長射程高速の火炎を遠くの兵士に撃った。
兵士10名は燃えた。
「!」
「驚いたか! 貴様を油断させる為火炎の威力をいたのよ!」
更にギルギザンは火炎を別の兵に吐き、兵達は無残な灰となった。
「更にこんな攻撃も出来るのだよ!」
ギルギザンは小さめの火炎弾を吐き隕石の様に兵達に降らせた。
「うわああ!」
また、10人以上の犠牲者が出た。
「よせ! 俺だけを狙え!」
とシギアは言いわざと当たりやすい場所に移動した。
「ふん、馬鹿め!」
とギルギザンは渾身の炎をシギアに放ったがシギアはさっき言われたバリアを張った。
「危ない!」
とクリウとマーティラスは飛び出しバリアをシギアと一緒に張った。
「私たちのバリアもパワーアップしてるはず!」
「ぐおおお! すまない2人共!」
「押し返してやる!」
マーティラスは怒鳴った。
しかしこれでもギルギザンの火炎が押している。
「ぐ、ぐああああ!」
「はーっはっはは!!」
「だめかっ!」
そして3人は直撃は避けられたが吹き飛ばされた。
「な、何てパワーだ」
しかも兵が叫んだ。
「何だあいつら!」
何と丘の上に悪魔王のもう2匹の刺客、ゴーレム型モンスターとゴースナイトと呼ばれる甲冑の中身のない騎士が現れた。




