シギアのパワーアップと女神の道
「くらいたまえ」
ヒルデバルは天を覆う閃光の様に手から強力な衝撃波を放ち兵士達を襲った。
威信を表す様に背中のマントをなびかせた。
「わああ!」
しかし怯える兵士達の前にまさに一瞬のスピードでパワーアップしたシギアは疾風の様に飛び込み降り立ち、剣の一閃で衝撃波を切断して見せた
「何⁉ 私の波動を!」
「何だあのスピードは⁉」
皆呆然としている。
「え?」
「えっ! シギアさっき火炎の直撃を食って」
「誰か回復させたか? いや、どうなってるんだ」
「何か雰囲気が違わないか?」
皆は戦闘心はあっても以前よりどこか落ち着き払った目つき及び全身の雰囲気、たたずまいになったシギアに気づいた。
不思議な雰囲気だった。
何かが今までと違う。
以前の熱くなったシギアが「炎」なら、今は「風」「空気」のようだった。
太陽ともまた違う。
無、透明、影、そんな言葉があった。
シギアは落ち着き払った表情でヒルデバル達に対し剣を向け牽制するような姿勢を取った。
「ふん」
シギアをヒルデバル達3人とキングへイルが取り囲んだ。
「1人で私達全員を相手にすると言う事で良いのかな?」
さすがに皆この状況は危機的に見えた。
「無茶だ! いくら何でも!」
ヒルデバルは睨み距離と間合いを測った。
そしてにらみ合いの末、ヒルデバルとキングへイルは矢のようなスピードと勢いで接近戦で挑みかかり、ガム・ゴルドは後ろから火の玉を撃とうとした。
シギアは何なりと正面からの攻撃を受け、さらに一瞬で反転しガム・ゴルドの火の玉を真っ二つにした。
「なっ!」
さらに驚くヒルデバル達とジメーンに対し剣を遠くから一閃すると激しい光で目がくらみ衝撃も同時に飛んだ。
「ぐあああ!」
皆もその光で目がくらみその光がようやく落ち着くとシギアは4人のちょうど等距離で真ん中に位置し構え一遍に相手してやると言う雰囲気だった。
囲まれたシギアは異常な存在感だった。
しかしシギアの目は確かに相手をにらんでいる様で憎しみが少なくどこか悟ったような雰囲気も感じる。
剣の構えや動きにも全く隙も無駄も無くなった。
仲間達や兵達も思った。
こやつに何が起きた?
ヒルデバルは思った。
シギアはつい3分ほど前の女神とのやりとりを思い出した。
「貴方に堕天使でない天使の羽根、強靭にレベルアップしたからだAランクの剣を与えます」
「Aランクの剣?」
「ええ、最上位の。しかしまだ上のSランクがあります。それを取って来ます」
ヒルデバルは切りかかった。
最小限の動きでシギアは受けた。
その次の打突も、その次もほとんど動じず。
「ぬ?」
「うおおお!」
キングへイルは突進した。だが軽くかわした。
シギアは唐突に言った。
ぼそりとしていた。
「ここは通してもらう、だがあんた達を殺したくはない」
「ぬ?」
さらにシギアは言った。
「あんたはクリウ達を生き返らせた」
「ふん」
「あんた達は俺達を皆殺しにせず交渉を持ちかけて来た。だから俺も殺したくない」
「ふふ、中々甘いね」
「俺は、いや女神様は皆大勢敵を殺したくて来てるんじゃない。出来れば和平したいんだ」
「何」
「そうです」
と声が聞こえた。
その瞬間空中に30メートル程の大きさで女神が現れた。
「お、おおお!」
とヘリウム兵はひれ伏した。
「私はシギアに敵を全滅させる為と言うより戦いを終わらせる役目で新しい力を与えました」
「女神様が降臨したぞ!」
「私はこれからシュトウルム城までの安全な道を作ります」
「ええい! そうはさせん!」
と悪魔王は人間大の大きさで現れ言った。
ジメーンは言った。
「私はサービスでお前の仲間を生き返らせてやった。何故だかわかるか? 私は生死をつかさどる魔法を自在に操れる。命をまた奪う事も簡単だからだ」
と言い詠唱したジメーンは暗闇の塊のような魔法を投げつけた。
「即死魔法!」
「あっ、あれは食らうと!」
シギアを暗闇の玉が囲み命を奪おうとする。しかし何事もなく出て来た。
「馬鹿な!」
「効かないわけじゃない。無効確率が大きく上がったんだ」
「おのれ!」
ヒルデバルとキングへイルが襲い掛かったが剣の一閃で振り払った。
激しい光と衝撃が包む。
ギルギザンは苛立った。
「いくらパワーアップしても私の炎は8万度だ!」
と言い火炎を吐いたが、シギアは数段増したスピードで空中に逃げお返しに剣の一閃でギルギザンを攻撃した。
「ぐ、ぐおお」
「ギルギザンがダメージを受けてる!」




