女神が与える新しい力
「シギア!」
皆が絶叫する中シギアはかろうじて人間の姿を保ってはいても、まるで焼き尽くされた灰の様に黒くなり、力を失い落ちて行き、地面に落ちた。
「!」
「うっ!」
あまりの無残さに皆目を背け、生死を確認しに行く勇気がなかった。
ギルギザンは重く大きな声で笑った。
「はーっはっは! 俺の火炎は8万度だぞ! いかに天界の勇者であろうと人間が耐えられる温度ではない! 今度こそ死んだな!」
しかし皆はギルギザンに言われても現実を受け止められなかった。
一方ガルマスは完全に戸惑っていた。
「私を助けただと⁉ な、何故だ! 何の理由で!」
宝児は何とか声を絞り出した。
「貴方を助けたいからじゃないんですか」
クリウも言った。
「確かに貴方は敵だけどそれでも命を取りたくないと思ったんじゃないですか。彼は貴方の仲間の幹部達も皆生かしたまま捕まえて罪を償わせようとしてます」
「何だと? 私の命を取りたくない?」
「敵であっても彼はすぐ命を奪うのはよしとしないわ。だからと言って誰も殺さないなんて出来る訳ないと思ってるけど」
ガルマスは激しく煮えたぎった。
情けをかけられ命を助けられた。
これでも私は戦わなければいけないのか。
そんな資格があるのか。
しかし迷うガルマスの前に空中から悪魔王が現れた。
「悩んでいるのかガルマス! 悩みを無くすよう心を操ってやるぞ」
「ぐっ!」
悪魔王はガルマスの心に念を送り始めた。
さらに丘の上にさらなる伏兵が現れた。
ヒルデバルとジメーン、ガム・ゴルドとキングへイルだった。
「なっ⁉ あいつらもここに」
兵達は「まだあんな強敵が」とすくんでしまった。
その様子を笑うようにヒルデバルは言った。
「ガルマス様、いやガルマス、敵に命を助けられた上に裏切ろうとしたな」
ジメーンは言う。
「貴様は悪魔王様に操られ狂戦士となれ。もしあいつらに勝ったら罪を許してやる」
「ぐう!」
ガルマスは頭を押さえている。
兵士達は畏怖した。
「もうだめだ。ボスクラスがこんな大挙して来たら勝つ見込みはない」
「うろたえるな! シギアの敵討ちで突っ込むぞ」
「待て!」
副隊長は言った。
「ここは冷静にまずドラゴンを遠距離攻撃しろ。冷静さを失うな」
「それにあのドラゴンには白魔法が有効」
とクリウも言った。
「やけくそになるな」
カーレルは言った。
ヒルデバルは嘲笑った。
「特攻以外に君達に出来る事などない無能だが、まあこれから絶望するだろう」
ギルギザンも言った。
「私の炎に全員焼かれるか? ヘリウム兵は無力なものだな」
その頃シギアは他の人に見えない暗闇の中で眩い光の玉に包まれていた。
「シギア」
「ん?」
そこに女神が現れた。
「追い詰められてしまったようですね。貴方に新しい力を与えましょう」
「新しい力?」
「この状況ではもうヘリウムに勝ち目はありません。私は守護する義務があります。まず貴方の体97パーセントが死んでしまいました。それを治しさらに強靭な肉体と」
「と?」
「堕天使ではない真の『天使の羽根』を与えます。そしてさらに上のランクの剣を」
「そんなのがあったんですか」
「あなたはもう堕天使でありません」
「でも、こう言うとあれですが何故今まで力を貸してくれなかったんですか」
「すみません。私はずっと悪魔の力を抑えていました。それと貴方がまだ真の勇者でないと思っていたのです。ですが貴方は身を挺して敵であるガルマスを助けた。だから今は違うのです」
「俺が真の勇者」
眩い光と共にシギアの体力が回復し体が強靭になって行く。そして羽根が生え剣が降臨した。




