メガスの思惑
「皆、ここは一時撤退だ!」
砦が瓦解する中、シギアは先導した。
ジメーンは言った。
「逃げたら待機した兵達がヘリウムの城下町になだれ込むぞ。市民は皆殺しだ。お前達と条文をかわしたろう。負けた場合は国を引き渡すと」
ドレッドは言った。
「負けたらヘリウムを引き渡す取り決めです。それに付け込んで来るかも知れません」
デュバンは言った。
「まあ、ここで撤退すれば勝ちでも負けでもない引き分けだが」
レオンハルトは言った。
「恐らく奴らも勝ちか負けかどちらかしかないと思っていただろう。引き分けはあり得ないと。もしかして兵を城の近くに待機させて襲わせるかもしれない」
ワンザとマライは言った。
「儂が行こう。儂が人質になり殺されよう」
「私も行きます」
「そんな、王様!」
ワンザは強く言った。
「いや行ってくれ。いや命令だ。行くんだ! 君達には生きる権利がある」
ミンガードは言った。
「僕も残ります。裏切り者の皇子の首が奴らは欲しいでしょう」
「王様を行かせなければ皆殺されてしまう……。 くっ!」
シギア達は涙を飲み撤退した。全力で走った。
途中クリウは皆の傷を回復した。
ワンザ達はヒルデバル達の元へ行った。
そして言った。
「儂を殺してくれ」
「私も」
「僕もだ」
「王自ら人質か。我々に決定権限はない。メガス様達の決定を待つしかない」
ヒルデバル達はシギア達をそれ以上追わず、メガス達を連れシュトウルムに帰った。
そして次の日メガスは城でヒルデバルとジメーンに言った。
「そうか。ワンザは自分と引き換えに勇者パーティ達を逃がすと。成程、我々に取っては勇者パーティを倒す事よりワンザ達を人質にする事の方が収穫は大きいかもしれん」
「はっ」
「君達の役目は勇者パーティを倒す事だ。必ず倒すのだ。2度目はない」
「はっ!」
メガスは続けた。
「ヒルデバル達に決定権限を与えていなかったのは良くなかった。元々勝利と敗北の2つに1つしか考えていなかったのは落ち度だ。しかし最上級の人質を得られた。それにどうせ我々が勝てば一族は処刑だ。まとめてあの世に送ってやろう。軍長ガルマス、最終決戦の指揮は君が」
「はっ!」
次にシュトウルム城の会議室で
「今度の我が城及びそこまでの道のりが最終戦争となる」
ディスピットは思った。
何故落ち着いていられるこの小僧。これは経験や含蓄から来る自信ではないだろう。ただの強がりか。
ハーブラーは思った。
何か奥の手があるのか、ないのを隠しているのではあるまいな。
我々と距離を保っている。それは世襲制を続ける為に他の貴族を入れさせないのだろう。
もう少し一枚岩なら我が軍はもっと強く。
メガスは余裕を漂わせ聞いた。
「心配するな、我々には悪魔王が付いている」
ハーブラーは聞いた。
「悪魔王様はどこに」
「マリーバ」
とメガスが呼ぶと入って来た僧侶は詠唱し悪魔王を会議室のテーブル上空に呼び出した。
「お、おお」
メガスは説明する。
「まずヘリウムでの最終決戦の持ち駒だが、まずガルマスにコロシアムで鍛えた元犯罪者達を傭兵として使う。それと機械兵器を用意した」
「機械兵器?」
「そうだ。ヘリウムの奴らが試練の洞窟で遭遇した幽霊の怪物。あれは実は悪魔教会の技術で作った機械の怪物だ。並の人間ではとてもかなわない機械の怪物を番人の1つとして用意する」
「悪魔教会が機械の技術で作った怪物?」
「そうだ。ただし気を付けるのは悪魔教会の連中が力を付け王の座を狙っている事だ。私が気づいてないと思っているのだろうが」
「そして人質の中でも最もこざかしい人物が」
メガスはそう言って会議室を後にしミミ―デンが繋がれている牢へ行った。
メガスはミミ―デンを嘲笑う様ににやりと見た。
ミミ―デンは目つきを変えない。
「久しぶりですね。兄上」
「……」
「まさか生きていた上に顔を若く整形までするとは。ちょうど私が初めて軍務に着いた頃貴方はその位の年の顔だった」
「……」
「領土が欲しくなったのですか」
「領土等欲しくない」
「では何が」
「和平だ」
「それは無理ですね」
「僕が代表になる」
「笑わせる。貴方は考えが父上や他の貴族と違うから煙たがられて勘当の意を込め戦地に送られ皆の望み通り死ぬ予定だった。
「僕はある敵兵士を助けた。すると敵の魔法使いが僕を助け傷を治してくれた。だから僕は戦いより和平を望む様になったんだ」
「ヘリウムと和平など笑わせる。どうしてもと言うなら私と決闘でもするんだな。いや決闘は決定している。皆が見ている前で」
そう言ってメガスは憐れむ様に去った。
そして会議室に戻って来たメガスは様々な説明を加えた。
「まだあと1つとっておきの策があるが」
「それは?」
「おいおい説明しよう」
そしてメガスは町で演説した。
「次のヘリウムとの戦いは最終決戦、世界最終決戦となる。我々には悪魔王が付いている。必ずや勝利を得、皆は勝利の国の国民になるのだ!」
拍手喝采が起きた。
一方ヘリウムはワンザが人質に取られ意気消沈したのか。落ち込んでいる市民だけでなくやけくそで火事などの嫌がらせが起きた。
「ひどいな」
「期待に応えられなかったからかも知れない」
しかしヘリウム兵達は傷の手当と舞台編制を続けた。
すると1人の傷ついた若者が城に来た。
「僕は逃げて来たシュトウルムの兵だ!」




