アレーナの覚醒
「ぐ、ぐう」
爆破魔法を食った3人、アレーナは立ち上がろうとしたが中々うつ伏せから起き上がれなかった。
ガム・ゴルドは言った。
「ほう、その2人の男はともかくお嬢さん中々タフだな。あの魔法を受けて」
ドレッドは苦しみながら言った。
「やはり剣で切りつけるしか。普通魔法使いは後衛でボディガードに屈強な戦士を付けて来る。しかしあいつ1人で来ると言う事はボディガードを必要としていない、接近戦にも強いと言う事だろう。さっきの空気投げの様に上級の接近技も持っているだろう。迂闊には近づけない」
しかしアリザインは同じく傷ついた体を引きずりながら絞り出す様に、かつ何かを覚悟するように言った。
「しかしだからと言って迂闊でも近づかなければ奴は倒せない。それに遠距離なら有利と言う訳でもない。コアは死んだ」
そしてアリザインは1人ぼろぼろながらも力強く立ち上がった。
ドレッドは聞いた。
彼の悲壮さを感じとっていた。
「どうするつもりだ」
アリザインは横向きで答えた。
「俺はいつ死んでもいい暗殺隊要員として育てられた。だから死を覚悟している」
「無茶はやめろ。それとも何か策があるのか」
「……」
「あるのか」
ドレッドは2度聞いた。
アリザインは誰にも伝わる悲壮な顔で体と剣を引き釣りガム・ゴルドに向き直った。
うっ、何かを覚悟した目。
とアレーナは気づいた。
「アリザイン!」
と止めようとしたがそれから先が続かなかった。
ガム・ゴルドは雰囲気がただ事でないのに気づいた。
「ぬ……」
アリザインは何かを決意した。
そして全てをかけるように突進した。
ガム・ゴルドは表情から何かを感じ取った。
ぬう?
アリザインは心で叫んだ。
シギア達に助けてもらったこの命、惜しくはない!
「捨て身⁉」
アリザインは切りかかり少しだけガム・ゴルドの右腕に傷を付けたがそれより速く深く氷の剣が彼の左胸を貫いた。
「……‼️」
ドレッドとアレーナは絶句した。
ガム・ゴルドは笑みを無くし真摯に褒めた。
「見事だよ。君は死を覚悟した戦いをした。そういう目をしていた。心臓を貫く魔法使わなければ私は負けていたかもしれん」
「甘い」
アリザインはにやりとし切りかかった。
「何⁉」
アリザインは不死の怪物の怪物の如く「死んだが生きた目」の様な表情でまるでスローモーションの動きの仕草で切りかかった。
ドレッド、アレーナは呆気に取られた。
「これが死を超えた執念?」
しかしアリザインの2刀目はガム・ゴルドの体をわずかに傷つけたに過ぎなかった。
ガム・ゴルドは機転で2本目の氷柱を今度は右の胸に突き刺した。
鮮血が飛びアリザインは倒れた。
アレーナはもう何が起きているか分からなかった。
ガム・ゴルドは決して馬鹿にせず言った。
「立派な勇士だったよ。本当に死ぬ覚悟とは」
その時あの声が部屋に響いた。
「はっはっは、よくやったガム・ゴルド! お前達に朗報だが予言通りクリウと言う女も死んだ!」
「!!」
「これでコアと言う弓兵も合わせて3人目だな。少しは人の死が身近に感じられたかな」
「ぐう!」
アレーナは憤激しようとしたがガム・ゴルドは答えた。
「おっと、君達は今まで我々の仲間を大勢殺して来た事を忘れたかな」
「うっ!」
「まさか自分の仲間の時だけ怒るなんて虫の良い事を言うつもりかな?」
アレーナ達はフェミングがシギア達に言った時と同じ様なショックを受けてしまった。
勿論戦いに参加していないリザリーもだ。
「う、うう」
しかし、アレーナは心の灯に火を付けた。
「ぐ、ぐう……! 諦めない! 私はまだ諦めない!」
とアレーナは体を引き釣り立とうとした。
その時アレーナの体内が光った。
「雷の聖霊が?」
アレーナは思い出した。
宝児君と特訓した時、私の体の中の雷の聖霊と共鳴させる事で引き出した。
宝児君の水の聖霊がもしかして覚醒した。
宝児の声が遠くから聞こえた感じがした。
「アレーナさん、立って下さい! 僕達も戦ってます! 僕の聖霊が覚醒すれば貴方の聖霊も」
アレーナは立ち上がった。
「な、何だ⁉」
アレーナの体から眩い光が放たれ雷のエネルギーが凄い量集まった。
「何だあれは?」
ガム・ゴルドは初めてうろたえた。
アレーナは指先に特大の雷を集めて行く。
そして手に大きな槍の様な形に固まった。
「ぬう⁉」
「何だありゃ⁉️」
ドレッドも畏怖した。
そしてアレーナの手から槍形の雷が発せられた。
ガム・ゴルドも怯まず大きな雷を撃ち返した。
「ぐ、ぐぐ!」
2つの雷が正面衝突する。
アレーナの雷の方が押していた。
「バカな! こんな!」
ガム・ゴルドは防ぎきれず近くで雷が爆発を起こした。
そしてドレッドが呆然とする中煙の中から右腕を負傷した姿でガム・ゴルドが現れた。




