レオンハルト命がけの特訓
火花が散り、闘気が乱れ光のエネルギーが周囲に飛散して行く。
それ程シギアとレオンハルトの奥義のぶつかり合いは熾烈だった。
周囲に紙や木の破片があったら火の玉が飛んで燃え火事になりかねなかった。
しかし2人の表情は実は対照的であった。
レオンハルトが「もう後がない」とい言う様な闘気を全開にした死に物狂いの表情なのにシギアはまだ冷静さを維持している。
目つきは確かに真面目だがどこか冷めている。
と言うか、余裕がある。
2人は一旦剣を放した。
レオンハルトは言う。
「どうした。本気で来てくれ」
「まだ本気じゃないってばれてたのか」
「わかるさ」
「でも本気は危険すぎる。明日から戦いだ」
「だからこそなんだ。明日が戦いでも、今ここで死んでもいい」
「え?」
「そこまでの覚悟がなければ、新しい境地には行けない。新技も生み出せない。お前だから頼んでるんだ」
「……」
「頼む」
「分かった」
シギアは決意した。
そして2人はもう1度構え直した。
デュバンは見守る。
そして全力で正面から剣をぶつけた。
レオンハルトはシギアだけでなく別の悪魔か何かとでも戦うような形相だった。
シギアはどこか迷いがある。
「命を取っても構わない」と言われても本当に取る訳には行かないと思っている。
そして2人は一旦離れもう1度ぶつかった。
「ぐ、ぐぬぬぬ!」
刃のぶつけ合いの末レオンハルトは押し戻された。
「はあ、はあ」
シギアは言った。
「やっぱり、少し踏み込みが甘いよ」
「やはりそうか。俺自身まだ死の恐怖を克服出来てないって事か。前に一人前に認められる試験で先輩相手に同じような事をやったのに俺は弱い人間だ」
レオンハルトは先輩騎士とかつて命の取り合い覚悟の手合いをやった事を思い出した。
そして父親とも。
「レオン、お前が一人前になるまでは学校が終わって友人と遊ぶ事も許さん。そして修練が終わったら家の手伝いだ」
……何でここまで厳しいんだ。
俺は言う通りだと思う気持ちと反抗的な気持ちのちょうど中間にあった。
そして父と先輩の指導で強くなったが周囲には大分堅物と呼ばれる様になった。
しかし俺はまだ本当の恐怖など知らないのかもしれない。
そこへシミュレーションバトルを指導したあの宮廷魔術師が来た。
「私が手助けしてあげよう」
「え?」
「それ!」
と魔術師は幻覚魔法をかけた。
「これは一体? ん?」
何とレオンハルトにはシギアが大きなドラゴンに見えた。
「どう言う事だ?」
「この魔術は君の恐怖心を大きくし視覚に反映する」
「そうか。シギアが怪物に見えるのは俺の恐怖のせいか。よし来い!」
ドラゴンはレオンハルトの視覚で吠える。
「俺は命の全てをかけなければ次へ行けないんだ! 新しい奥義も生み出せないんだ。巨大な怪物にも立ち向かって見せる」
そしてレオンハルトは回想を止めた。
目を閉じ精神集中している。
何と好都合な事だ。偶然昨日の特訓と同じ様な魔術をかけられるとは。
デュバンは一方恐怖と戦っていた。
しかし苦しんだ。
頭を抱えた。
「うわああ!」
ベロウは言う。
「はっはは! 貴様の中で恐怖はどんどん大きくなって行くぞ!」
「くそ! 俺は克服してやる!」
やけになって突っ込んで行きべロウの魔法を食らいそうになったがマーティラスが咄嗟に助けた。
ベロウは言った。
「中々精神力があるな! だが死をも恐れない位でなければその魔術は破れんぞ」
グリザインはミンガードと戦っていた。
ミンガードはバックジャンプしてマーティラス達の所へ来た。
その時上着の袖がめくれ腕に紋章が見えた。
マーティラスは驚いた。
「その紋章は確かハーディング家の! え?」
ミンガードは間を置いて答えた。
「そう、僕はメガスの兄ミミ―デンさ」
「えっ!」
「僕が若く見えるとかかい? 怪我をして整形手術してね」
「貴方は亡くなったと。何故正体を隠してシュトウルムにいるのですか」
「ヘリウムと和平に持って行く為だ」
「!」
グリザインは言った。
「おい貴様あまりでたらめを言うな。ミミ―デン様の名を名乗る等不届きな」
「僕は戦で重傷を負い、顔や体を手術し正体を隠してシュトウルムに入った。何故なら父オロゴンや弟メガスは戦争大好きで僕と対立し、僕はこれ以上彼らが他国と争うのを止めたかったからだ」




