ミンガードの素性
ミンガードの姿を見たべロウは怪訝な顔をした。
「ミミ―デン様の若い頃に似ている。まさかあいつは本物の?」
グリザインは呆れた。
「は? 馬鹿を言うな。メガス様の兄ならもう26だろう。どうやって若返ると言うんだ。それ以前にあの方は戦で亡くなった。それは確かだ」
しかしベロウの疑念は消えない。
「しかし、あの男前から気になっていたが並の存在感ではない。何と言うか全体から漂う何かが。まるで王族の様だ。似ている、見れば見る程若い頃のミミーデン様に。あの方は誰よりも平和を愛し父上や他の貴族と対立した。あの方がなくなって半年後ミンガードは入隊して来た」
グリザインはベロウの疑念に呆れていた。
「あいつがまさかミミ―デン様だと言うのか? 馬鹿馬鹿しい。そんな事ある訳ないだろう。戦闘中だぞ今は」
「しかしさっきからあいつは術に怯えていない?」
「ふん。怯えてるだけじゃないのか?」
ミンガードは動じていない。
レオンハルトはミンガードに只者ではない気配を感じた。
「あ、あなたは一体? 魔術にかかっていないのですか」
ミンガードは唐突に聞いた。
「僕が、何歳に見えるかい?」
「え?」
「僕があいつを引き付けよう」
「うおお!」
グリザインは襲い掛かって来た。
「来た!」
デュバンとレオンハルト、マーティラスにはとてつもなくグリザインが大きく見えた。
3人は自分の視覚を疑った。
マーティラスは念動を放ったが効かない。
デュバンは慌て恐怖さえ感じた。
屈辱だった。
「な、何だこんなはずはない! あいつは確かに人間の大きさだ!」
ベロウは言った。
「はっはは! 貴様らの心には『鬼』が住み着いているのよ! 恐怖でグリザインの姿を直視できない魔物がな! そう簡単に、いや絶対にそれは解けはせん!」
デュバンは精一杯立ち向かった。
「こんな幻覚に負けるか!」
しかし打ち払おうとするもののデュバンにはグリザインが5メートル以上の巨人に見える。
「何故だ! 何故あいつがあんなに巨大に見える! 何故振り払えないんだ!」
「それは貴様の心が恐怖に負けているからだ! グリザインの発する闘気が貴様らの想像を遥かに上回っている為に心が押しつぶされ視覚までおかしくなっているのさ!」
「うわああ! 俺は負けん恐怖なんかに! 俺は怯えてなんかいない!」
「それが怯えている証拠だ。貴様は所詮勢いと口だけの男だ。怖くて逃げだしたくて仕方ないんだ」
「これが、恐怖」
レオンハルトはデュバン程じゃないが確実に自覚していた。
圧倒的過ぎるグリザインに恐怖を感じ、魔術でそれが最大限になっている。
くっ、シギアならこんな事に負けないはずだ!
レオンハルトは目をつぶり集中した。
「しかも現実に今シギアはいない。あいつは俺達だけで倒さなければならないんだ。俺達はシギアに頼り過ぎたんだ。思い出すんだ特訓を」
レオンハルトは回想した。
昨日夜レオンハルトとデュバン、シギアは特訓をしていた。
「俺の腕を、足を、生命を取るつもりで来てくれ」
「……」
「ためらうな!」
「よし……」
シギアは決意し容赦せず全開で奥義を放ちレオンハルトも奥義をぶつけた。
2人の中央で火花が激しくぶつかった。




