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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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葛藤からの復活

「うおおお!」


 巨大な竜巻は激しいごう音とともにフェミングを姿が隠れる程巻き込み、そのまま登り竜の様に天井にまで届きフェミングを叩きつけた。


「ぐ、ぐおお」


 フェミングは落ちて来た。

 何とか立とうとする。


 しかし宝児は間髪入れずもう1発竜巻を放った。

 目に緑色の聖霊が宿っておりそれがフェミングを睨みつけている感じである。


 確かに宝児なのだが一種雰囲気が別人のようだ。


 先程まで意気消沈していたのが嘘の様だ。

 怒りと悟りが同居したような表情だ。


 シギアとミラムロは呆然として見ていた。

 しかしシギアは驚いているが完全にクリウが死んだ事実を受け止めきれていない。


 宝児は言う。

「僕は確かに偽善者だ。皆を平等に見ていない。あんたの言う様に親しい仲間が死んだ時だけ深く悲しんでいる。でもそれは確かに事実だ。でも僕はもう言われても構わない。エゴイズムの塊だと言われようが僕があんたと戦い倒す」


 フェミングは思った。

 この小僧にこんな力があるなんてデータにないぞ。

 隠していたのか?


 ミラムロは叫んだ。

「シギアさん!」


 シギアは何かと思った。

「?」


「宝児さんをフォローして! そうすれば止めがさせるわ!」


 宝児も言った。

「僕もお願いします!」


「……」

 しかしシギアは弱気な表情でクリウにエネルギーを送り続けている。

 宝児、すごいな、俺より精神的にずっとタフだ。


「シギアさん!」

 しかしシギアはうつろな目で力なく答えた。

「俺は、勝つよりもクリウを助けたい」


 それはクリウを何としても助けたい熱のこもった気持ちより、うつろな気持ちをただそこにぶつけているだけの様だった。


 ミラムロはシギアの意を汲んだ上で控えめに言った。

「でも、辛いですがクリウさんはもう」


 フェミングは立ち上がってきた。

「おのれ!」

「はっ!」

 

 宝児は力を振り絞り向かって来たフェミングに再度竜巻魔法をかけた。

 これを破れなかったフェミングはまた巻き込まれ回転させられた。


 一方シギアはまだうつろだ。


 ミラムロは再度声をかけた。

「シギアさん! 大丈夫なんですか⁉」


 シギアは力がない。

「俺は敵に勝つより人の命を救いたい」

「でも」


 シギアは説明した。

「君が入る前、洪水を起こした敵が出て来た時、皆は敵を倒すより溺れた人を助ける事を優先したんだ。俺は早く敵を倒す事を考えていたんだけど。皆に責められた。その時以来敵に勝つより人を助ける方が大事だと思ったんだ。皆に言われた事が少しショックでね」


「……」

「クリウは助からないかもしれないけど」


 ミラムロは言った。

「でも今は違うと思います」

「えっ?」


 ミラムロは続けた。

「多分、レオンさん達がここにいてもクリウさんに一縷の望みをかけて助けるよりあいつを倒す事を考えると思います。私は少なくとも!」


「!」

「今はどんなに辛くとも前に進まなければならないんだと思います。それにクリウさんもそう言うと思います」

「……」 

 シギアはショックを受けた。

 視野の違う考え、そして自分よりも強さを感じる意見だったからだ。


 シギアは微笑み溜息をついた。

「君達2人とも強いんだな」

「……」



 宝児は言う。

「シギアさん、あいつに何を言われても僕は受け止められます。エゴイズムだって何だって良いじゃないですか!」


 シギアは立ち上がった。

「よし!」


 宝児はもう1発竜巻でフェミングを放り上げた。

 そして落ちて来たところを奥義で切り裂いた。


 致命傷だった。

「う、うう」


 フェミングは命乞いはしなかったもののなにか言いたげだった。

「助けるんですか?」


 シギアは首を横に振った。

「ううん」

  

「クリウの仇だからって言う意味じゃなく、敵を皆助けようなんて甘い事考えてられないんだってわかったんだ。甘い事考えてたからクリウを死なせてしまったんだ。でも戦争は敵も味方もいつ死ぬかわからない。それが本当に分かってなかったんだ」


「僕もです」


 ミラムロは言った。

「シギアさん、シュトウルムには人を生き返らす力のある高名な白魔導士がいると聞いた事が有ります。もしかしたら」

「そうなのか。わかった。まずは前に進む事だな」


 宝児は痛がった。

「うっ、体が痛い……」

「何とか這ってでも進みましょう」


 3人はクリウの遺体を背負い3人で肩を組んで倒れない様進み扉の向こうに行った。


        


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