ミンガードの問いかけと勇者としての答え
シギアとミンガードの戦いは続いた。
甲乙付け難い実力の両者であった。
しかし、とてもハイレベルなので客観的にはわかりにくいのだが、2人共本気を出していない様な雰囲気があった。
両者考えている事は違うが。
シギアは確かに一刻も早く仲間の元へ行く為全力で戦った。
しかし一方でミンガードは本当に命を奪う必要がある人間なのかと言う疑問が彼をどこか躊躇させた。
矛盾する2つの理由と気持ちが彼を悩ませた。
一方ミンガードは本気を出しているのかよく分からない。
汗をあまりかいていない所もまだ全力ではない事なのかもしれない。
何と言うか、感情的になって一気に攻めて来ないのでシギアも気持ちが読みにくかった。
よし、ならば大技に持ち込めば彼も応じて本気を出すかもしれない、そこで見極めるんだ。
とシギアは思った。
シギアは剣を交わしながら隙を見て上手く距離を取り奥義を出す準備をしようとした。
それをミンガードは見越しているのかよく分からない表情をしている。
シギアは間合いが取れた。
「よし、これで!」
とその時、戦いながらミンガードは突如口を開いた。
低く穏やかに。
彼はこう言った。
「君は傷ついたのか?」
「え?」
意外過ぎる言葉だった。
意味も。タイミングも。
いや言い方や響きも。
「えっ?」
とアレーナやリザリーも驚いた。
また、不意に言った。
「仲間に裏切られたろう」
流石にシギアはこれに戸惑った。
さらに帝国兵も戸惑った。
「ミンガード様、何の話をしてるんだ」
シギアは手を止めず返した。
しかしさすがに調子を狂わされた。
下を向き気味に答えた。
「え、ああ、憎いよ。あいつは憎い」
「……」
ミンガードは剣を止めた。
そして一呼吸置いて言った。
剣を置きながら。
「そうか、なら追いかけて行って彼を殺せばどうだ
「え?」
これも先程の言葉と同じ位シギアには意外でさすがに慌てた。
シギアは剣をストップした。
そして取り繕う様に言った。
焦った。
「え、ま、まあいいさ、他にやる事あるし。今回は見逃してやるか、今度会ったら許さないけど」
まるで急所を突かれた様にシギアは何を言ってるか分からなかった。
しかしミンガードは慌てない。
「命を懸けて助けに来たんだろう。それが騙しだった」
2人共剣を止めている。
今度は割とすぐ返した。
「そんなに傷ついてないさ」
「何故だ」
この言い方も穏やかだった。
シギアは戸惑いながら誠実に答えた。
「何となくそんな予感はしてた。あいつは信用できなさそうだと思ってたよ」
「君は裏切られ傷ついている」
「……」
これは言い返せなかった。
帝国兵は言う。
「な、何を言ってるんだミンガード様」
アレーナも思った。
他の帝国兵とは違う。
ミンガードはさらに深掘りする様に続けた。
「そうだろう」
「俺は勇者としての役割を学んだ通り果たせたから良いと思ってるよ」
「勇者の役割?」
「勇者学校で勇者のあるべき姿を学んだ」
「それは」
興味がありそうに聞いてきた。
「勇者は人の為、仲間だけでなく嫌いな人や悪人の為にも犠牲にならなきゃいけないって良く先生に言われた」
ミンガードはじっくり聞いた。
「……今度は仲間を助けに行こうと言うのか」
「自分の為だけどな」
「君は嘘が上手そうで大分苦手だな」
「……」
「早く仲間の所へ行きたいんだろう?」
「……」
戸惑いと照れがあった。
それはミンガードが自分の事を正義感の強い人間として見ていたからだ。
ミンガードは問う。
「じゃあその仲間がさっきの盗賊の様に裏切ったらどうするんだ」
シギアは真摯に説明した。
「あの盗賊より付き合いの長い奴らさ」
「付き合いの長い奴らでも裏切る。その方が裏切られたダメージは大きい」
「……」
これに言い返せなかった。
「それでもいいか」
またミンガードは聞いた。
ミンガードはシギアの答えを聞かずまた言った。
「君は素直じゃないと言われて突っ張ってそうだな。本心と違う事を言う事が多くないか。ひょっとして君は私を殺さずここを通りたいと思っていないか」
これはまたシギアの心を突いた。
「ま、まさか。そんなに甘くないだろ。あんたにも役目があるんだし」
慌てが確かにある。
ミンガードはシギアの心を知ってか知らずか続けた。
「ああ、皆そうさ。君達から見たら悪人の帝国兵達も皆自分の役割がある。そして家族もいる」
これまでにない相手だとシギアは思った。
「ああ、俺は若造だから、悪人と戦ってばかりいるとついそういう事を忘れそうになる。そうだな。あんたの言う通りだ。だからそれを理解した上で通してもらう為本気を出すよ」
そう言って決意を固める様に口を閉じ腰に剣をやり力を蓄え始めた。
そして呼応するようにミンガードも同様の構えを取り力を溜め始めた。
辺りに凄まじいパワーが渦巻く。
帝国兵は慌てる。
「ミンガード様の奥義が見られるのか!」
シギアも1,2分と力を溜める。
アレーナもリザリーも見守る。
そして力を溜めながら睨み合い、パワーは両者共最高に達した。
アレーナ、リザリーは息を飲んだ。
「ぶ、ぶつかる」
次の瞬間両者は奥義を放った。
「行け!」
「ぬおお!」
ミンガードが初めて感情を全開にし叫んだ。
そして剣の光が2人の中央でぶつかり合い大爆発を起こした。
「うわああ!」
「きゃああ!」
帝国兵達もアレーナ、リザリーも爆発の風で吹き飛んだ。
そして煙で見えなくなった。
「どうなったの?」
アレーナが見るとシギアは血を流し倒れている。
「シギア!」
「うう」
シギアはすぐ起き上がれなかった。
しばらく見下ろしていたミンガードはやがてシギアの手を取った。
「な⁉️」
この行動に帝国兵は仰天した。
「君は本気を出さなかったな」
「本気さ」
「君はつくづく嘘が苦手だな」
「あんたが鋭すぎるだけさ」
「よかろう、通れ」
「な⁉️」
シギアも驚いたが帝国兵はもっと驚いた。
「仲間を助けたいんだろう?」
「裏切りだ! ミンガードが裏切ったぞ!」
1方ワンザ達は大広間でこれまでのいきさつを会議していた。
ドアッシー国権利取り合いについて。
ワンザは言う。
「ヘリウムもあまり内政干渉しない国で国内改革が最初優先されたが、軍部の一部独断でドアッシー国に権利を打ち立てたい考えが出てガルデローン外交官達とも話し合った」
ワンザは続ける
「これがガルデローンにもシュトウルムにも摩擦や反感を生んだ。
ガルデローンはドアッシーに大きな利益を持っていた。しかし元ははガルデローンの圧力にドアッシーが自治機能を持つ事が目標だった」
軍部は言う。
「ヘリウム軍部は強い国にする為の国内改革のみならず、ドアッシー国の権利を得る事が国を強くする事だと思った」
ワンザは言う。
「そしてドアッシー国を統治するガルデローン軍部とぶつかる意見も出て賛同者も出た。占領により防衛問題から解放される見方が出たが、軍内部の意見が割れた」
ドアッシー国はヘリウムがいつどう言う行動に出るかと言う緊迫感にあった。
ヘリウム軍部はドアッシー国出兵スケジュールも半ば決まっていた。同時にガルデローンの排ヘリウム機運も高まった。
ドアッシー国はヘリウムかガルデローンどちらの官に統治させるかもめた。勿論シュトウルムの動向を気にしながら。
「そして国民の為ドアッシー占領の声が高まった。軍事行動によりガルデローンとぶつかろうと」
しかしこの案はなくなり代わりにシュトウルムがガルデローンに攻めこんだ。




