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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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裏切りとシュトウルムの政策

 捕まったシギアはどこかうなだれた、ともすれば死を覚悟したような表情だった。

 

 あまりグライへの憎しみはなかった。

 前だったらもっと人間不信になっていただろう。


 しかし数々の経験や出会いが彼の考えを変えかつ度量も身につけさせていた。


 ただ虚しく、しかしどこか最初から裏切りをわかっていた様な気持ちだった。


 しかしグライの代わりに処刑され勇者としての役目を全うしどこか満足だった。


 一方で皆が来てくれるのではと言う気持ちもあった。


 勝ち誇ったリーダー格の兵士は嘲笑いながらシギアの顎を掴んだ。


「どうだ、仲間に裏切られた気分は。まるでさらし者だな」

「はーっはっは!」


 他の帝国兵は笑った。

 しかし幹部的な若き騎士ミンガードは表情を変えなかった。


 彼は冷酷な様で純粋さも感じる瞳と細めの顎と清潔感が印象的な十八歳程の青年だ。


「ぬう?」

 

 リーダー格の兵はシギアが思ったより悔しがらないのに苛立った。

「貴様、すました顔をしてないで悔しがったらどうだ?」


 どすっとシギアの腹にパンチを入れた。 

「悔しがれ!」

「ぐっ!」


 シギアはあまり怒らず黙って耐えている。

「怒れ!」


 また兵は挑発し殴った。

 しかしシギアは怒らなかった。


「やれやれえ!」

 兵達ははやし立てた。


「散々我々をこけにした罰だ!」

 シギアを敗戦屈辱の捌け口にしていた。


 他の兵もシギアを殴った。

「やめろ」


 突如ミンガードは兵士の腕を取って制止に来た。

 抑えた口調で止めた。


「ミンガード様、何故」


 やけに落ちついたかつ穏やかさのある口調だ。

「やめろ。処刑は後で良いだろう」

 帝国兵的でない。


 確かに威圧感も感じるが。


「こいつが憎くないんですか」


「……」

 ミンガードは何も言わなかった。


 小僧が……と思い帝国兵は引っ込んだ。


 シギアは苦しみながらミンガードの雰囲気に他の帝国兵、騎士とは違う雰囲気を感じた。



 一方ヘリウム兵達は町に突入していた。

「シギアはどこだ?」


「あいつを助けたけば我々を倒して行け」

 とイバールともう一人鉄仮面を着けた騎士が現れた。


 デュバンは最前列で叫んだ。

「お前らがボスか!」


「ボスを前面に配置して来たか」

 とレオンハルトも続いた。


「シギアもこの町も解放してもらうぞ」

 ドレッドも続ける。


 鉄仮面の騎士は言った。

「いいか、まずあの『勇者パーティ』とやらを倒すんだ」


 レオンハルト達は身構えた。

 デュバンは吠えた。


「シギアがいない今俺がやってやるぜ!」


「落ち着け」

 とマーティラスはデュバンを止めた。


 そして先輩騎士は指示した。


「レオンハルトとデュバン、ドレッド、アリザイン、マーティラス、そしてガイでこの2人の相手をするんだ」


「任せとけ!」

 とデュバンは叫んだ。


 ガイも加わった。

「俺を隊に加えてくれた恩義に応える!」


 そして他の騎士、兵士は他の帝国兵と戦い始めた。



 その頃、メガス達は城の大広間で会議をしていた。

 そこにはずらりと参謀役家臣が並ぶ。


 ハーブラー伯爵は言う。

「勇者が捕まりました。準備は整いました。処刑準備を」


 ディスビット伯爵は言う。

「急いでシギアを助けようとヘリウム兵達は焦るでしょう」


 軍長のガルマスは言う。

「勇者の周りは特別警護を厚くしています。突破は出来ません。奴らは焦るでしょう」


 メガスは穏やかに答えた。

「ありがとう。だが私はウッドティの町を奪還されても良い計算だった。何故なら6大幹部を勇者パーティを倒すため砦に集結させ、そこで勇者パーティを全滅させる手はずだ。あの6人を連続で倒す事など出来るはずがない」


 ハーブラーは思った。


 余裕を漂わせているがそれは若い経験知らずにも見える。

 どこか甘い、と。


 24歳としては天才でも。

 オロゴン王も戦いの達人ではあったが。


 ディスビットは小声で話した。

「確かにオロゴン陛下は強かった。しかし『悪魔王のささやきによって力を得た』と言う事を説得力を持たせる為勝ち続けなければならなくなった。国民が付いて来たのもオロゴン陛下より背後に悪魔王が付いていると言う宗教的心理を使った物だ。その為まず少数民族を狙った」


 軍長は言った。

「我らの勝利は揺るぎない!」


 メガスは言った。

「我々は必ず勝利を掴み世界をシュトウルム国民が望む様変えるのだ」


 しかし家臣達は内心思っていた。


 勝ってもらわねば困るのだよ。その為に税金を増やし貨幣を増やし傭兵の略奪や農民反乱を押さえ3部会の承認を得ているんだろう。


 戦争の出費を絹や羊毛を安く買い高く売る事で賄っているんだ。

 それと奴隷売買もな。


 メガスは気づかず言う。

「ヘリウムの渇きかつ肥沃でもある土地や文化を手に入れられれば我々の国力は更に増す」


 実はシュトウルムではガルデローンを倒した際、ガルデローンと手を組みヘリウムを倒した方が良かったのでは、あるいはヘリウムと和平を結んだ方が良いのではと言う意見などが対立していた。


 ヘリウムの交渉では「主従関係解消や同盟破棄、幹部等の捕虜身代金」等が話されていた。


 ハーブラーは思っていた。

 だから王を選考制にすれば良かったんだ。


 今の勢いは完全にヘリウムが上だろう。


 悪魔王はメガス様にも付いているのかよく分からん。

 あの小僧を補佐したのも我々が権利を奪い取る為だがな。


 ディスビットは思った。

 オロゴン王やその前の代は恐ろしく皆逆らえなかったがあの小僧は甘い。


 メガスは先日演説していた。

「我々は必ず大陸を統一する。その為に微力ながら力を見せます」


 とメガスは控えめに言いかつ続けた。

「今ヘリウムの勢いは確かに強く町も砦も奪還されている。しかし戦いはまだ始まりである。枝が折れただけでは木は折れない!」

 と締めくくっていた。


 国民の受けは良かった。

 それはメガスが「若さと人格と才能及び外見」を併せ持っており、かつ悪魔王の力があると言う事が大きい。 


 

   


 

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