舌戦 宗教、国の論争
マーティラスは十字架のペンダントを掴み印を切った。
すると魔術師と同じ様な「念」の形の波動が出た。
これが魔術師の攻撃をまた防いだ。
魔術師は気づいた。
「胸の十字架、そうか、お前は元聖職者の騎士だな! その攻撃は白魔法の一種だろう。やっと攻撃の正体が分かった」
マーティラスは落ち着いて答えた。
「そうだ、私はヘリウム正教会の一員で白魔法の修行をしながら騎士となった。攻撃に使う為の技を身に付けるためにな」
魔術師は嫌味っぽく言った。
「白魔法使いは回復だけしていれば良い物を。神に逆らって相手を殺すようになったか」
少しだけマーティラスは言葉に詰まった。
「……戦う必要が出来たからだ。いかな非暴力主義であろうと」
「神に仕える者が相手を攻撃して良いのか? 正当防衛と言う言い訳か? お前たちは自分たちの代わりに神に戦ってもらう弱者だと踏んでいたが、武器を取って良くなったのかな?」
言い方が皮肉たっぷりだった。
そして念攻撃をしたがこれをマーティラスは白魔法の印の念波で防いだ
マーティラスは少し間を置いたが言い返した。
「神の名の下に国や平和のために戦うのは悪ではないと結論を多くの信者が出した」
「お前自身の意志はどうなんだ?」
「我々の信じる神は1つだ。別の国に移住した者も神の前では同胞だ。それをおかしな宗教政策によって異端とみなし処刑するとは許さん。神は弱き者の為の存在だ。神を敬っている人を殺すなど許さん。同胞を守る戦いでもあるんだ」
「貴様らの聖地は我々が占領する」
「神を信じない物が聖地占領等と!」
「信じてるさ、悪魔をだがな!」
マーティラスは訴えかけた。
「処刑された人々はお前たちを許したんだ!」
「くだらん」
デュバンも呼応した。
「そうだ、敵や悪人も決して憎み切っちゃいけないんだ。俺は平和の為に戦い抜いて見せる!」
「貴様はあの男より単純だな。宗教信者が悪人を殺す矛盾に気づかず切りあいをやっている」
デュバンの攻撃が防がれ、腹を切られ腕を刺された。
「ぐおお……」
マーティラスは訴えた。
「軍備拡張を辞めろ。そんな物は平和を生み出さない。するにしても各国が足並みを揃えなければ意味がないんだ」
「ではそれに代わる他国の関係の抑止になる『何か』は貴様らにわかるのか? 悪を放置するな仲間を助けろが貴様らの大儀名分だろう」
「悪を罰し正しい平和を維持する事が神の教えを履行する方法だ」
「勝手な解釈だな。非暴力主義じゃないのか? それに聖職者は交戦で敵の財産を没収しただろう。しかも貴様らヘリウムは悪魔教会の住人が逃げ込んだ建物に火をつけたろう」
「そんなのは捏造だ! 我々は異教徒だからと殺しはしない! 貴様らだろう異教徒を殺したのは!」
「当然だ、シュトウルムについた悪魔のおかげで我々は快進撃出来た」
「悪魔は貴様たちだ。奴隷を売買するな。奴隷を弁護し救い信仰に導くのが我々の役だ」
「奴隷がいなければ交易用商品が作れない 貴族は支配し奴隷は支配される」
「土地を失い教育も受けられずひたすら働かされるのか!」
「黙れ! 都合よく平和主義になったり戦闘主義になるえせ聖職者め」
「ぐあ!」
マーティラスは片膝をついた。
「どうした? 言い返せんか? 中途半端な平和主義の持ち主が」
マーティラスは歯ぎしりをした。
そこへカーレル隊長が来た。
「軍事と信仰は両立出来る。信仰を持ち戦うのは大変な事で祈るのも大変な事だ。神は権威だ。人間の上に立つ存在だ。我々は神に仕えているんだ」
「宗教信者は戦争に加担しているだけだ」
「うおお!」
デュバンは剣持っていない左手で気功の様な膜を手のひらに出し剣を止めた。煙が出ている。
「ぬう! 素手でもこんな技が!」
「簡単に負けられない。でも憎い相手を憎めばいい訳じゃないんだ!」




