女神の助言
「夢でうなされていますね。前の王様の様に」
「……」
シギアは嬉しいのか何ともつかない気持ちだった。
そして答えた。
「あんたが俺を召喚したんですよね」
「そうです」
女神はあまり悪びれない。
シギアは溜息をついた。皮肉っぽかった。
「大変でしたよ」
「お疲れ様、楽しい事はありましたか?」
お疲れ様、から次の言葉が早かった。
シギアはまた溜息をついた。
「まあ、ありました」
「皆さん、多くの仲間と出会えましたね」
シギアは嫌そうな顔をした。
「ええ、楽しかったですよ。最初はもう何が何だか分からなくて頭がこんがらがりました」
「今は帝国と戦う事に迷いはないですか?」
「ええ」
一見切れがいい答えだった。
しかし女神は突っ込んだ。
「本当に?」
「はい。で、俺の両親は今どこに?」
シギアはどことなく答えに自信がなく、1番気にしている質問をした。
女神から笑顔が無くなった。
「病院に入院しています。命に別状はありません。ですが」
「ですが?」
シギアは何かとはらはらした。
「入院費が長引くと足りなくなるそうです」
いてもたってもいられなくなった。
「そ、そんな! 何とかしないと! そもそも俺は家計を助けるために勇者を目指したんだ」
女神は諭し落ち着かせようとした。
「でもあなたはシュトウルム帝国と戦う義務があります」
「そ、そりゃ今ここを離れる事が出来ないのは分かってます」
「では今のままでいいのですね」
女神はシギアに同情しながら少しきつく突っ込んだ。
シギアには女神がとても意地悪に見えた。
「何で嫌な問いかけするんですか。悩ませないで下さい」
「いえ、悩まなければいけません。親を取るかヘリウムを取るか」
「どちらも選べるわけないじゃないですか」
怒っている。
女神は自分が間違っているとは思っていなかった。
「選ばなければどちらも中途半端になります」
シギアは回想し言った。
「アリザインが言った。俺の命は俺だけの物じゃないと。でも帝国の兵を大勢殺してしまった」
「貴方が許せなくて怒ったんならそれで良いでしょう。貴方は自分の事を自分で決められないのですか」
また少しきつい、しかし人間に比べると温和な「穏やかな圧」とでも言う雰囲気で話した。
「あ、あんたが勝手に召喚したんじゃ!」
突如、女神は平手打ちを食らわせた。
逆上ではなくあくまで落ち着きながら責めた。
「最初はそうであったかもしれない。でも勇者とはどんな敵が来ようと状況になろうと屈せず立ち向かう人を指すのです。貴方は現実を受け止めなければいけません。それは戦う事、それに皆に結構愛されている事それらを忘れてはいくら強くても勇者でありません。ではそろそろ消えます。もう大丈夫でしょう。貴方を選んだのは決して強く才能があるからだけではありません」
女神は消えた。
「あっ!」
フィリオがノックした。
「大丈夫ですか? 何かあったんですか」
シギアはフィリオを部屋に入れた。
フィリオは勘づいた。
「もしかして女神様が」
「来た」
「久しぶりですね。で何のお話だったんですか」
「……」
シギアは思った。
迷いを完全に捨てるのも間違いなんじゃないかと俺は思う。迷わないのもおかしいと。
でも決めるのは自分だ。だからヘリウムに残る。
さすがに不安そうだった。




