真夜中の焦燥
シギアは決戦の夜、寝室で眠りについていた。
しかし悪い事に以前のワンザと同様悪夢にうなされていた。
「父さん、母さん!」
夢の中でシギアは叫んだ
それはシギアにとって本当に最悪な状況だった。
夢の中でシギアの両親は病気の状態で帝国にとらわれ、兵達が行く手を邪魔していた。
現実には本来ありえない状況だが。
長い曲がった地獄の様な空間の坂道の頂上に両親がおり、その下を無数の帝国兵が阻んでいる。
1番上に座っているメガスはシギアに言った。
「早くしなければお前の両親は死ぬぞ。尤もお前にこれだけの兵を全員殺す度胸と覚悟があればだが」
「ぐっ!」
シギアは即答出来ず悩んだ。冷や汗をかいた。
メガスは嘲笑った。
「何をためらっている。早くした方が良いのではないか?」
シギアは行く手を阻む兵達をすぐに切る事が出来なかった。
何故か。憎むべき敵なのに。両親を救わねばならないのに。
シギアは思った。
これだけの兵の命を奪う……?
兵はシギアの両親に剣を突きつけた。
「ひいっ!」
メガスはさらに挑発かつ楽しみの様に言った。
「もしかしてお前は単に召喚されて巻き込まれて訳も分からず戦って来ただけなのかな。覚悟も葛藤の末に出した答えもなく。さらに言えば『その内状況が好転するだろう』等と踏んでいたのではないか?」
「……」
シギアは何も言い返せない。
メガスは続けた。
「もしかして、『自分は単に何も知らず巻き込まれただけだから敵の命を奪う覚悟も十分に無く戦って来た。今も覚悟や戦う理由がない』と言うような気持ちではないのかな」
「……」
シギアはまた言い返せなかった。
それは完全に全部ではないが思い当たる、図星に近い部分が幾つかあったからだ。
またそれを見抜いているメガスに言いようもない恐れを感じた。
メガスの声が太くなった。
「ふん、笑わせる、所詮はただのガキだ。もしかして我々が何故戦争をしているか理由も知らないのではあるまいな」
メガスの言い方は冷たく憎々し気だったが、反論が出来なかった。
気持ちを言い当てられたことにどんな攻撃を受けるよりも深い恐怖を感じた。
いい加減な回答など出せない。
シギアは悩み答えをすぐ出さなかった。
そして数十秒の沈黙後口を開いた。
しかし、シギアは震えながら立ち尽くし言った。
「やっぱり、殺せない……」
そんなシギアを見てメガスは笑った。
面白い余興を見たような反応である。
完全に見下している。
自分には遠く及ばない愚かで弱い者だと思っている。
そしてメガスは口を開き手を伸ばし念力の様な物を送った。
「甘い奴だ!」
「ぐあ!」
シギアは体が動かなくなった。
メガスは手の念力でシギアの自由を奪い圧で締め付けた。
「親を助ける事も出来ずここで死ね!」
「ぐわあ!」
そこで、夢から覚めた。
「夢か……」
シギアは大量の汗をかいていた。
「何故あんな夢を……」
今まで危機に陥ってもこんな量の汗はかいていない。
シギアは余韻を消せなかった。
本当に近い未来にそのような事が起きるのではと言う恐怖に包まれた。
「全部、見透かされてる。俺は弱く単純で覚悟もない人間だ。言わなくてもばれてるんだ」
その時だった。
突如ちょうど枕の横に光の玉が現れた。
「うわ!」
それはワンザの元に何度か現れたあの光の玉だった。
そしてその光は人間の形となりあの女神の姿になった。
「あんたが、女神様、ですね」
「シギア、初めましてに近いお久しぶり」
女神は怒ってはいない。ただ微笑んでいた。




