おせっかいと奥義
「アリザインの空気投げを瞬時に防ぐなんて何て言うとんでもない奴だ」
シギアはさすがに驚いた。
「ぬうう」
普段動揺を見せないアリザインも少し見せてしまった感じだ。
「ふふ、どうした?」
サリディアスは余裕綽綽だった。
しかし、その時アリザインは急に体が大幅に軽くなった感じがした。
「アリザイン! 今よ!」
アレーナは何故か叫んだ。
「ぬうう!」
疑問に思いながらもアリザインは再度空気投げを放った。
「ぐっ、ぐう!」
すると何とサリディアスは空気投げで吹き飛ばされた。
「おおっ!」
「空気投げが効いた!」
皆はどよめいた。
アレーナは再度叫んだ。
「今よ! 剣でとどめを!」
しかしアリザインは動きを止め、少し怒りをにじませアレーナの方を向いた。
「君がやったのか?」
「えっ?」
アレーナは厳しい目を向けられ少し怯えた。
予想外の反応だったようだ。
そしてためらい口を開いた。
「……そうよ。貴方に体術スピード上げの魔法をかけたわ」
しかしアリザインは不機嫌だった。
「助けてもらって何だが、手出しはしないでもらいたかった」
アレーナは申し訳ないと思いながら恐る恐る口を開いた。
「……確かに一対一の勝負かもしれない、でもあいつは何人でかかっても良いからって言ったから」
その気持ちを半ば理解しながら言った。
「助けてもらってすまない。確かに俺一人では追い詰められたかもしれない。だが俺は最後まで自分の力でやりたかった」
再度アレーナは委縮した。のけぞり気味だった。
シギアは腕を組み黙って見守る。
するとサリディアスは起き上がって来た。
「なるほど、急にスピードが上がって何が起きたのかと思ったが、そのおせっかい女が手を出したわけか。構わんぞ。何な貴様ら全員でもいいぞ。負けるとは思えんがな」
しかしアリザインはきっぱり言った。
「俺が戦う、そしてお前を倒して見せる」
サリディアスは見下しながら言った。
「良いのかな? 下手に助けを拒んだばかりに命を落としても」
「構わん。いや絶対に俺は勝つ」
何かを決意、決断したような表情と口調だった。
憎しみとはまた違った。
サリディアスはにやりとした。
「行くぞ!」
アリザインは中段構えで防御と剣勢力を固めた。
また中段は袈裟切りに移行しやすい。
それは構えを堅固にし隙をなくし相手の打ってくる部位をある程度限定する。
得意の袈裟切りでアリザインは攻めた。
流石に強い圧がある。
しかしサリディアスは決して楽ではないがこれを張りで防ぐ。
そしてすぐ攻めにつなげる為の防御体勢で反撃してくる。
どちらかと言うと攻め主体が好きなアリザインも得意の袈裟切りを何発か防がれると戦法の見直しを迫られた。
受けに徹したサリディアスだが受けすぎると攻撃に転じるのが難しくなる。
しかしそこで最初から反撃を考えるのがサリディアスの強さだ。
アリザインは一気に突っ込みタックルで倒そうとした。
これには皆どよめいた。
「タックルか!」
しかしサリディアスはアリザインの肩を掴み右手を足の間に突っ込んで投げて防ごうとした。
「くっ!」
アリザインは苦しんだがこらえた。
二人は再度剣を取った。
サリディアスは少しだけ汗をかいたがまだ笑っていた。
「攻め方を変えた様だな。多少変わった技を出しても俺は動揺せん」
生半可な技などこいつには通用しない!
アリザインはシギアやレオンハルトの様に腰に剣を当てたすると剣が光りだした。
「おお、俺達と同じような剣の奥義か」
「ほう」
アリザインは腰を落とし腹を出しへそを床に向け十分なエネルギーを剣に注入した。
そして叫んだ。
「行くぞ!」
右足を大きく踏み出し光った剣で力をため込んだ袈裟切りを渾身の力でくり出した。
「俺の奥義は袈裟切り型だ」
「さっきの袈裟切りとは違うようだな!」
光が太刀筋の後を追う残光の様になり剣の激しい速さと強さの軌道を光らせた。
「これは、防御に徹さんと!」
サリディアスは受けた。
アリザインは中級者の様に受け流されてその後切られても良いと思っていた。
「攻防一体」ではなかった。
斬撃は剣の物打に腕が先行する。
しかし正中線を振り下ろす切り下ろしをすると、相手よりさきに
自分の剣が当たる事になる。
「合擊」は遅れて正中線を打つ事により相手を外しこちらは当たる。
「ぬううう!」
受けるサリディアスがこれまでになく焦って熱くなっている。
シギア達も気づいた。
「あいつの顔つきが変わった!」
二人の鍔迫り合いは続く。
「ぬああああ!」
「ぬうう!」
「はああ!」
サリディアスは必死に剣を弾いた。両者とも剣を落とした。
「ふ、防いだ……」
「余裕でなかったとしても」
タードは不安視した。
「アリザインはどうするつもりなんだ」
シギアが答えた。
「俺が交代する」
しかし横やりが入った。
「嫌俺に行かせてくれ」
「エイスラー」
アリザインは剣を自ら捨てた。
サリディアスは不可解そうな顔をした。
「何のつもりだ?」
「これで最後の勝負だ」




