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王の目覚め

 王は、夜中に目が覚めた。

 悪夢と呼ぶに相応しい辛い夢はひどく彼を苦しめ、午前三時半と言う中途な時間に覚めさせるに十分な力があった。


 王ワンザはつぶやいた。

「どうしたものか……」


 その夢は大変にリアルで、そのまま現実の嫌な事が映写されているような内容だった。

 辛い夢は嫌な事を思い出させるに十分すぎた。


 ヘリウム王国国王ワンザは寝床で溜息をついた。

 不可効力的に彼は最近の昼の出来事を回想した。

「この国をシュトウルム帝国から守るにはどうしたら……」


 シュトウルム帝国とはヘリウム国の大陸上隣に位置する強大な軍事国家である。

 国土面積は約二倍、人口も二倍だ。


 軍事費に膨大な費用をかけ軍備を増強し、徴兵制があり能力の高い人間はすぐ入隊させる。

 それはヘリウムにいつか攻め込むことも目的の1つであった。


 ワンザは夢の中で現実と同様に、帝国兵にへリウム王国が攻められ町は占領され、兵は殺され食料は略奪され、民衆の悲鳴と鳴き声がこだまする映像を見た。



「もう、耐えられない」

 

 夢の中の村人の声が悲痛だった。

 その為、前日の昼は王を含めた大臣や官僚、騎士長らの会議が開かれていた。


 城の中の横四メートル縦十メートルの広大な会議室と同様に部屋の大半を占める大きなテーブルで隣り合ったり向かい合ったりして座っているが椅子は一定の距離が置かれそれが緊張感を作り出していた。


 防衛大臣は切り出す。

「帝国の攻めが本格化した。もはや一時の猶予もない」


 官僚は現状を簡略的に説明する。

「シュトウルム帝国の強さは予想をはるかに上回り、拠点を3つ奪われ、最近は城下町への嫌がらせが始まっています。民衆は怯え眠れない日々を過ごしています。暴力を受け金品は奪われ女性はさらわれています」


 他の議員たちは続けて説明した。


「騎士団、兵士達もその度出動しましたが勝てません。帝国は強い。我が国を大きく上回っています」

「このままではこの城も城下町もいずれ明け渡す日が」


「ぬ……」

 ワンザは打ち当たる問題に顔をしかめた。

 なるべく兵や町民達の苦しみを理解し察しようとした。


 帝国の攻めに対してすぐにでもワンザは「それはならん」「そうはさせん」と言いたかった。言うべきだった。


 しかし現実を見ずにそう言った無責任発言は立場上出来かねた。

何か、何か策は……とワンザは会議の席で言葉に詰まっていた。


 そして、ここでワンザの昼の回想は終わり再び舞台は深夜の寝室に戻る。時間は四時を回っていた。

「寝る気分じゃないがかといって寝なければ明日に差し支える」


 そう言って気分を紛らわそうと寝室をうろうろしていたワンザは、再び床に着こうとしたがそこに突如まぶしい光が発せられた。


「うわっ!」


 あまりのまぶしさに目がくらんだ。


 何とそこには直径一メートルほどの四方に光を発する球体があり、光は少しずつ弱まり柔らかい感じの光に変わっていった。


 そして10秒程経ち大分光が抑えられて来ると、それは段々と光が人間の形となっていった。

 それが人間型に変わると、何とそこには女神がいた。


「えっ!」

女神だった。人間ではない。


 白い半透明の衣と背中に生えた大きな羽、衣服の間から見える傷一つない美しい肌。

 それにワンザは見とれ吸い込まれた。


 小さい妖精がもう少し年上になった、十七からニ十一位の人間の女性に見える、目をつぶり微笑む女神と言う雰囲気だった。


「あ、あっ‼」


 開けた目は緋色に輝き気高さと優しさ、この世を全て包み込むような包容力を併せ持った印象の顔、長く神々しささえ感じる髪の柔らかさと流れはどんな方法で頭髪洗浄してもあらゆる人間の女性に出せるものではなかった。


 女神は口に指を当てた

「しーっ、お静かに!」

 

「あ、あ」

ワンザは何とか平静さを取り持とうとした。


 女神は切り出した。へりくだった話し方だった。

 同時に王の心の内や悩みを全て承知している様だった。

「親愛なるヘリウム王よ、国が滅ぼされるのではとお困りの様ですね」


「あ、ああ……」

ワンザは戸惑いまだ的確な答えを返せない。


「わかりました。私たちが国を救う勇者を遣わしましょう」

「えっ⁉ 勇者⁉」


 女神は慌てるワンザの表情がどこか楽し気だった。

「はい、それでは今日中にカンデル神殿まで王様お一人でいらして下さい。では」


 そう言って、ゆっくり女神は消え球体も無くなった。

「あっ!」

と追おうとした時すでに女神は消えた。


 ワンザは王と言う立場上あたふたを最小限に抑えた。


「夢ではない、覚めた時に来たのだからな。うーむ、常識ではにわかに信じられん話だ。話せば幻を見たと皆は言うだろう。だが私は信じてみたい。元々へリウムは宗教国家だ。だから神が降臨されたのかもしれん。私一人で、と言っていたな。私が一人で行けば当然家臣たちは猛反対するだろう、いやそれ以前に話を信じてもらえないかも」


 しかしワンザは考え込んで奮い立った。

「よし、行こう!」

お読みいただきありがとうございます。

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