パワー特化の初ダンジョン
ミカンはゴーストの案内で森の奥の隠しダンジョンに足を踏み入れた。
そこを探索しながら2人は会話を楽しんでいる。
「このゲームは隠しダンジョンをクリアすると初クリア報酬として専用装備をもらえるんですけど、スキルを持ってるとダンジョンに誰も入れないように予約出来るんですよね」
「なるほど。ここが放置してる間に攻略されなかったのはすでにあんたが予約してたからなんだ」
「そう。予約にはダンジョン攻略を一回してる必要があるんですけど、私はすでに亡霊のダンジョンをクリアしてるんです」
「ゴーストの名にふさわしい専用装備もそこで得たんだね」
「オリジナルシリーズと呼ばれて生産職の人でも真似できない一品ものです。それぞれに専用のスキルもセットされていて、オリジナルシリーズをゲットした人はほとんど上位プレイヤーになりました」
「てことは、ゴーストも上位なの!?」
「えぇ、前回のイベントで2位になりましたよ」
「とんでもない人に出会っちゃったんだ...」
「安心してください。防御だけに振ってるので素早さは一緒ですから、アイテムやスキルによっては逃げられます」
「安心できないわぁ。もしも敵になったらパワー極振りでもその盾を突き破れないかもしれないってことじゃん」
「なら、フレンドになりましょう。パーティーを組むのもいいですよ。今までソロで戦ってきたので」
「こんな人といきなり仲間になれるなら願ったり叶ったりだよ。しかも、私はパワー特化だから防御が薄いからね」
「では、私はパーティーメンバーとして最強の盾になりましょう」
「そっちがそうしてくれるなら、私は最強の武器となって敵を全滅させよう」
こうして初期装備のミカンと初回イベ2位のゴーストが手を組むことになった。
2人の利害は一致してるから何も問題ない。
ゴーストは戦ってるところを見せてくれるなら敵にならない。
ミカンは敵にならないのならいくらでも戦ってるところを見せてやる。
こうして一致したからこそ極振り勢が攻防揃ってパーティーを組むことになったのだ。
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しばらく歩いてミカンは違和感を感じた。
その違和感はすぐそばにいる強者が原因であることに間違いない。
「ねぇ、ゴースト。もしかして雑魚達が怯えるくらい強かったりする?」
「現状の最高レベルである20にはなってますね」
「...なるほど。ボスと遊ぶだけにするか」
ミカンは雑魚と戯れることを諦めて先を急ぐことにした。
ゴーストは早くミカンが戦ってるところが見たくてうずうずしてきてしまった。
ゴーストはしばらくして我慢の限界がきてミカンをお姫様抱っこした。
「うわっ!なにすんの!」
「暇なのでさっさと行くことにしました。速いですから気をつけて」
次の瞬間、ゴーストはミカンと一緒に〈シャドーダイブ〉で影の中に入った。
そこから奥を目指して滑るように素早く進んで行った。
これはメリットがかなり大きいが、デメリットとして連れ込んだ相手が振り落とされると影の中でゲームオーバーになることがある。
ゴーストはミカンに気をつけてあげながら邪魔されることなくゴールに進んで行く。
まぁ、これが速いせいですぐに着いてしまったのでミカンが振り落とされる可能性は限りなく少なかった。
影を出るとゴーストはミカンを下ろしてボス部屋の扉の前に立たせた。
「さぁ、到着しましたよ。文句は後で聞きますからさっさと見せてください」
ミカンはゴーストにもう性格をある程度把握されて「ぐぬぬ」と悔しそうな声を漏らした。
でも、とりあえずミカンも戦いたいので先に進むことにした。
大きな扉をミカンが開けて先に進んで行く。
中に入ると巨大なカラスのボスモンスターが待ち構えていた。
「相手にとって不足なし。私の刀と銃を持って倒してやる」
ミカンはそう言いながら両手に両方の武器を持った。
その背後で扉が閉まると、ゴーストはそこら辺の壁に寄りかかって見学をする体勢になった。