命の重さがわかる人a
「君は命の重さがわかるかい?」
「は?」
「命の重さを聞いているのさ。」
「・・・・・」
何を言っているのだろう?
街で散歩をしていたら、見ず知らずの青年に話し掛けられなぜか命の質量について質問されている。
「えっ..と...、心臓と同じくらいですか?」
「違う違う!!そういうことじゃない!!!」
「...じゃあ、体重?」
「全っっっ然違う!そんな話じゃないことくらい君にもわかるただろう!?」
うわぁ...、めんどくさい。
「そうじゃなくてっ!もっと..こう...あれだ!!あれ!」
うん。おかしい人ということだけは今はっきりわかった。いや、少し前からわかっているか。
「あの...、あれですよね!命は掛けがえのない大事なものですよね!!」
これで大丈夫だろう。
「う~ん...、少しだけ違うかな?」
もうお腹が減った。暖かいシチューが食べたいよぉ。
「じゃあ、質問を変えよう。」
変えんでいい。
「命の重さがわかる人は、どんな人だと思うかい?」
「優しい人?」
「うん。違うね!」
よし一発殴ろうか。
「なぜですか?命を大切にする人は優しい人だとおもいます。」
「大切にするかどうかじゃない。命の重さを理解しているかどうかだ。」
はぁ...、もう無理だ、帰ろう。
「重要なのは命を大切にできるかではなく、命の重さを秤にのせ考えられるかどうかだ。」
・・・・・・・・。
「命を大切にすることはとても素晴らしいことだよ。でもそうじゃない。なんでも命を優先すると物事が進まなくなるときがある。その時に命を秤にのせ、悩むことができるかどうかだ。」
「.....はい、」
「命の重さがわからない人はいくら秤にのせても、どちらが重いかわからない。そういう人は、皆命を優先する。」
青年が私の目の奥を覗くように真っ直ぐこちらを視てくる。
「命の重さがわかる人は命を秤のせ、考え、悩み、決断し、時には命をも切り捨てる。」
青年は私から視線を外し青い空を見上げながら続けた。
「僕にはわからなった。命の重さが、命というものが...、」
青年はまた私の目を覗き込んできた。
「君のような自由な人なら、わかるかと思ったのだけどね。」
「なぜ私が自由だと思ったんですか?」
青年は笑顔でこう言った?
「君が、人殺しに見えたからさ。」
あぁ...、やっばり殴ればよかったかなぁ...。