魔嬢様の人形遊びー8
ラストスパートです。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
「ルイン侯爵、そろそろ帝王国に帰ろう。空気が不味い。」
アズ兄が私を呼んだ。
「かしこまりました、殿下。」
軽いお辞儀をし、頭を上げたら、アズ兄が手を差し出した。その手を取ると顔はなぜか熱く感じた。
『真っ赤だぞ、ラン。』
『。。。!指摘しなくても分かってますっ!』
てか、絶対真っ赤ではないはず。私の顔はその機能がない。ルージュやチークを付けないと幽霊か吸血鬼と呼ばれる私は自然に赤くなる事は断じてない。
『。。。まだ未練あるか。』
『ううん、スッキリした。平民たちは心配だけど。』
『あぁ、素早く革命起こした方がいい。じゃないとこいつ等が侵入する。』
私たちの前にオルフィナ王国とハーレスト商国の代理人が来た。
「ミランネーーいや、ルイン侯爵の方がいいか。全部含めておめでとうございます。ここまで圧勝出来ると正直思いませんでした。私では無理でした。感動です。」
「フィリップ叔父さん、ミランネでいいですよ。商売側を助けられた身ですから。私も幸運で良かったですわ。ルイン家をこれからも長続きできるよう頑張りたいと思います。」
ハーレスト商国の代理人フィリップ・スポイルは母の兄で、元ルイン家の跡継ぎ。お爺さんは彼が家を捨てたものだと睨んでたけど、私はそうと思わない。商会として優しく見守ってくださった。万が一、最悪状態になったら、叔父さんは逃げる道を作ってくれた。スポイル家に嫁入して、貴族ではないが十分充実できる商人ライフの道があってからこそ、この賭けが出来た。
「ミランネちゃんは帝王国に上手く行かないなら、いつでもハーレストに来てもいいよ。いい婿を紹介してあげる。」
言葉を崩して冗談のように言ってたけど、叔父さんはなぜかアズ兄の方を見ていた。
ちょっと魔圧力感じた。
「心配なさらないでください、叔父さん。私の商売力はそんなしょぼい物だと思いますか。」
ん?なんか魔圧力強くなった?
「アズール皇太子、もう立ち退きますか。貿易協定会議は?」
オルフィナ王国代理人が話を変えた。
「中止。カヒラがこれだけ慌しいと話にならん。」
おい、皇太子。一応皆が国の代理人で同じ立場だよ。敬語使わな過ぎて忘れたか。
うわ、顔見たら凄い不機嫌。指摘しない方がいい。
「後日で連絡する。カヒラなしで進む方向に。」
代理人二人が顔色変わらず頷いた。ご愁傷様、カヒラ王国。
会場を出たら、アズ兄は騎士たちに念話で指示した。詳しくはわからないが、念話を使っている感覚の後、騎士たちは素早く走り出した。
「ラン、ちょっと失礼。」
何が起きてるか分からなくて左右を見てたら、アズ兄に抱っこされた。
姫様抱っこ。
生耳で【ラン】と聞くのは久しぶり過ぎてで心臓が暴走してますけど!
心臓の音が大きすぎてアズ兄に聞かれたらもっともっと恥ずかしいんですけど!
絶対聞こえる!
だって、顔が近いんだ!
胸と胸が当たってるんだ!
ナゼカトイウトーー
姫様抱っこされているから。
完全に混乱状態で固まっている間、過大な魔力に包まれ、違う所に移動した。
「。。。え。転移動?」
頭がびっくりするぐらい冷えた。これは私たちの研究で理論上可能となった魔法だが、まだまだアルファテスト中のはずだった。
「あぁ。今はまだ転点の所にしか移動出来ないし、距離はまだまだだが、結構安定してる。魔法使用量はとんでもないけど。」
狭い部屋にいた。正直、私のクローゼットより小さい。アズ兄は作りつけソファに座ってて、私は彼の膝の上。。。で。。。
「もっと驚いて喜ぶと思った。。。」
アズ兄はちょっと拗ねた。
かわいい。間近で見て尚更。
じゃなくて!
「えっと、私はなぜ膝の上デスカ。。。」
姫様抱っこは転移動のためなら飲み込める。けど、ここに来てからアズ兄の腕がまだ私の腰に回ってて、片手が私の手といつの間にかつないでて、イイ匂いしてて、血液上がりっぱなし状態で気絶しそう。
「いや?」
だからそういう問題じゃない!!色気満々美声で耳に囁くと息できない。失神する。目が近い。まつ毛長っ。
「ラン。」
今自覚した。私、美声攻撃に弱っ!全身がびくっとした。
「んッ!」
今何の音出した、私?!どこから出た?!全身か!体の裏切りもの!
「べっ別に。」
声はちゃんと出た。
。。。
嫌がるわけないじゃん!
顔をそらした。目が会うと顔は燃える。真っ赤になれないと先言ってたけど、それは取り消す。真っ赤に違いない。
「クク。よかった。」
アズ兄は壁を二回ノックしたら、部屋は丸ごと動いた。
「うわっ。。。え、魔動車?」
動きは違和感あるぐらいスムーズだった。ドアにある小さな窓から見える夜景色は動いていた。
てか、小さい部屋といったが、これは車内だと馬鹿でかいわ!
魔動車はお爺さんのお葬式に魔帝王国に行った時には見かけたが、こんな広くはなかった。
「これも試作品。幻想魔法で外からは馬車にしか見えないけど。」
「へえ。魔法池はどんなサイズなの?最高速度は?」
「Lサイズの新型で最高速度は80km/hr。帝王国で維持した真っすぐ一本道にしか出せた事はない。。。それより。ラン。」
「何?」
「顔見せてくれる?」
「っ!」
上手く誤魔化してたと思ったけど、ダメだった。
ぎこちなく顔を合わせた。
やばい。近い。
淡い青色の目に溺れる。
「キスしていい?」
。
。
。
「はい。」
毒毒吐いて最後激甘かっ!!
はい。
最初から言いましたが、主人公マジ性格悪いです。それでも好きです。おろおろツンデレになるのはアズ兄の前だけです。
キャラを書き始めた時、アズ兄はこんなに攻めると思わなかったが、こうなりました。
毒舌甘攻め。ありかな。
これで「人形遊び」編は終わりです。
まだまだネタあります。ストックしてあるので、ほぼ二日に一回投稿のペースで続きます。朝6時か夜6時予約時刻です。
感想聞きたいです!
次は「王太子の悩み」編。「前・中・後」に分けました。王太子苦手な人は「前・中」をスキップして「後」だけ読んでも大丈夫だと思います。ただ、王太子の思想や視点はミランネと大分違うので、読むと印象変わると思います。