魔嬢様の人形遊びー7
カヒラ王は息が上がりすぎて殴りを中断した。
数年間、一番運動に近い行動が娼館遊びだとこうなるね。
区切りがいいと思って、魔法空間からもう一本の巻紙を取り出した。
遊び気分で馬鹿王子を真似てバサリと広げた。
私は女性の平均身長より高いにも関わらず、巻紙が長すぎて棒が大理石をカタっと叩いた。
「調べたところ、今の宝庫にある物は1億5980万4230帝金貨の価値があります。ちょっとまけて1億6千万としましょう。ルイン家の使用人が回収しています。この計算でよろしいですか。」
「待て!勝手に話を進めるな!」
馬鹿王太子が喋りだした。カレンは馬鹿兄の手当をしようとしていた。
あんな弱いパンチで上がれないなんてガッカリだ。お前らが送り出した暗殺者に比べれば甘チョロいだ。
手を頬に当てて困ったなぁポーズを取った。
「この際を逃せば支払わない確率は上がリますね。だって、私はこの国に居座りたくありませんわ。
残りの4千万金貨だけだった話だが、如何ですか殿下。カヒラ王族の2億の借金、帝王が全部買い取ってくれませんか。格安にしますわ。」
「買い取る。。。?」
マルコが話をまだ理解出来なくて、間抜けな繰り返し機能がついた。人形はオウムの真似をしなくてもいいのに。あ、もしかしてバグってんのか。この不良品。
「ふむ。4千万だったらなんとなく取り出せそうが、流石に2億は厳しいな。払わなければ魔帝王が軍隊でも起こすだろう。手間で面倒だ。」
「殿下、そう言わないで下さいませ。久しぶりに実戦出来ると魔法軍はきっと喜びますわ。」
「ん、そうだな。最近、破壊隊を抑えるの精一杯で、何かを生贄にしようかと悩んだ。分かった、カヒラ王族の借金はエイテルニアが買い取る。」
「ちょっと待ってください!それは。。。!」
エセ大臣は焦って割り込んだ。
そりゃそうだ。
王族が隣国に公認借金しているのはどんなに恥ずかしくて危ない事なのか馬鹿操り師でも分かった。
国財産目線でも2億は厳しかったが、4千万は何とか出来た。
結局、政府資金から残りの4千万を出すということになりました。
これで借金返済完了。おめでとうございます。
ホールに次々と宝箱などが溢れた。
普通は観客を呼ぶ真似はしないが、違う部屋に連れられたら暗殺修羅場が待っているに違いないので、皆様に見守っていただいてた。
だって、夜空色のドレスはお気に入りで、汚れるのはいやだった。
「お嬢様。ちょっとよろしいですか。」
宝庫担当の部下エルが隣に現れた。
観客はともかく、魔法騎士一人までびっくりするのは情けない。これはアズ兄による再訓練決定だね。
「何かしら?」
「リストの中から一つの品が宝庫に見つからなくて。。。」
「あ。心当たりありますわ。もしかしてイエローダイヤのネックレスですか。」
「はい。」
私は騎士の輪から歩み出た。
放心状態の王をスルーして、何かを言いたげたいマルコに目もくれず、顔が腫れてマジ不細工になったネアキ伯爵大臣を支えているカレンの前に到着した。淡い黄色のふわふわドレスと似合うこの少女の首に見覚えのある品があった。
「ネアキ様、そのネックレスを外してください。」
「!!こっこれはーー」
まさか自分に関わるだと思わなかったね。
目が泳いでいる。手でネックレスを隠しても、皆様見たよ。
遠見中、見せ散らしたお前が悪い。
「王子様からのプレゼントですか。それとも借りただけですか。」
「。。。。」
歯を食いしばってこっちを睨んでも変わらないわ。答えろ。
「プレゼントだわ!私に一番似合うってマルコ様が言ってたわ。」
「そうですか。エル、価格は?」
暗記しているのにわざわざエルに問った。
「12万帝金貨です、お嬢様。」
「では、ネアキ伯爵。また政府資金から出しますか。それとも、マルコ王子様の資産から支払えますか。」
伯爵はまだ意識あるみたいで、妹の首にあるネックレスを素早く外してこっちに投げた。エルが綺麗にキャッチした。
「これで全部ですね。」
大理石の上に私を超える高さで箱のピラミッドが積んでいた。エルがネックレスを箱に入れ、ピラミッドに足したら姿を消した。
私は差し指で小さな丸を描いて、全部を魔法空間に仕舞う。
「お騒がせしてすみません。」
観客達にお詫びして、私はとある人の前に止まった。
「あ、忘れる所でした、ラオダ公爵。」
オッサンがびくっとしました。
無関係だと思ったか。
「私物を邸宅から移しました。もちろん、ラオダ家のモノは残しました。問題ないとは思いますが。。。」
念話で続いた。
『あの女の腹の中に宿っている子は誰の子かなあ。彼女は多分マルコと言い切るけど、魔眼で見たら。。。ふふ』
嘘だけど。妊娠しているぐらいわかるが、まだ誰の子とははっきり分からない。
調べたところ、オッサンの子の確率は。。。三割かな。マルコは二割。一番確率高いのは。。。。ま、お楽しみということで。
オッサンは凍結した。
バレてないとでも思ったの?邸宅の使用人達の中では常識だった。
運転手達は結構具体的な事まで話せるよ。酒場で盛り上がるネタらしい。
「愛着のある馬車は残しておきました。」
あの使用済みの馬車は一応私の物だが、あげる。汚すぎて燃やすごみにしたいが、馬車は悪くない。悪くないけど、見ると鳥肌が立って手から浄化の火が漏れ出す。
だからごめん、馬車。連れていけない。
馬たちは連れて行くけど。
実は父側のお爺さんもお金にだらしなくて、土地をほぼ全部売っちまった。領地はない。
邸宅の管理費でもギリギリ払えるぐらいの不動産利益はあるけど、公爵レベルの生活費は厳しい。
だからお父さんは大臣の給料で何とか補って、新しいものはお母さんが経営した商会で買って、商会が使用人を雇った。
ちなみに、商会は母が子供の時から営業して、帝王国を拠点として残したので、帝王国法律上男女問わず私は継ぐ事が出来た。カヒラだったらややこしかった。
ともかく、邸宅にあるモノの七割が商会のモノ。使用人含めて。二割の人たちはまだ解任していないが、念のため推薦状を書いておいた。最後の一割はオッサンが雇った人たちで、私には関係ない。
お小遣いだと思って睨んでたオッサンはその不動産利益でどう生活するのか。ま、完全他人なので、何があっても知らない。
ミランネが唯一本気で謝罪する相手は。。。馬車だけです。
もっと他の者があるんじゃないですか。。。ないですか。はい。