魔帝王の決断・1
「ミランネちゃん、異世界人招きを減らして」
魔帝王の面会に最初からそう言われた。
「分かりました。ですが、何故ですか」
これは陛下からの命令。従うしかない。
「えと、他国から文句言われているし、一人ぐらいよこせと言われたり...」
魔帝王の目が泳いでいる。こんな分かりやすい魔帝王は珍しい。もじもじしていると、本音が出た。
「その...ナッシュの仕事量が増すし」
「ほほお」
そういう事か。ヒュー先生の報告は聞いたが、相手側の方も相当舞い上がっでいるね。
「分かりました。では、教育任務から外して、研究メインに戻した方がいいでは」
『あぁ、それは駄目‼ナッシュは教えるのが好きだからこのままがいいって言ったの」
「はぁ」
家に帰ったらヒュー先生お呼び出しだね。
「申し訳ございません、お嬢様」
ヒュー先生は部屋に入ってすぐ謝罪した。
「謝る必要ある?」
「いや、タっ...陛下の無茶振りが...」
ふうん。タリヤ呼ばわりか。
「想定内な事だったわ。毎月二人の異世界人をずっと招きしたら、この世界は無茶苦茶になるし」
異世界人は面白いんだけど、この世界のバランスを崩しやすいものでもある。だから、いつか中止になる可能性は高かった。半年ぐらいで十人招きしたら色々やらかして止めさせられると思ったが、今回は減らすだけになった。三ヶ月に一回、つまり年四回招きしてもいいって言われた。
そして、教育はちょっと浅く見てたと反省している。異世界人特有の言語理解機能は万全じゃない事、教育に馴れてない子や価値観が違い過ぎて戸惑う子。人見知りなステラや色んな事に突っ込んでしまうダグラスとチカ。頭を抱えたくなるぐらい問題が日に日に起こる。
「ただし、教師を増やそうと思っている」
「生徒を減らすなら今の人数で足りると思いますが」
「それが計画通りに進むならの話わね。今の三人は年内に旅立つと思わない。彼等がそうしたいと言っても、教導者を付けないと心配するわ。だから来年は六人以上滞在する。そして、教育レベルはバラバラになる。だから、せめて教師三人が欲しいわ。休み等を問題なく取れるようにしようと思う」
「...自分はクビになりますか」
ヒュー先生は自信なさそうに質問してきた。
「クビにならないわ。仕事は問題なくスムーズにこなすし、模擬戦のランクも高い。同僚関係もいいと聞く」
「...」
「ヒュー先生はどうしたいの?魔帝王ーーナタリヤ姉様と?」
「どうって」
こっちも動揺しているが、話を進むしかない。
「何も考えないで付き合える人ではないよ。あの人はこの世界を左右出来るわ。配偶者になる覚悟があるの?」
「配偶者ってそこまで」
「正直、多分ヒュー先生しかないよ。ナタリヤ姉様の相手に出来るの。でも、先生は違うよね。他の人を選べる。静かにこのまま生きたいなら、ナタリヤ姉様と別れなさい。私は何とかするから、今の内に終わらないと大問題になってしまうわ」
もう遅いと思うけど。姉様は完全に落ちている。ただ、ヒュー先生はわかりづらい。遊びと言えないが、真剣に付き合っているかどうかは彼の気持ち次第。
「タリヤと一緒に居たいと言ったら?」
「だったら、全力でサポートするわ。配偶者になりたいなら、私の養子になって、正式にルイン家の一人としてナタリヤ姉様と結婚出来るの」
「いいんですか」
「むしろ良すぎ提案だと思うけど?皇家二人にルイン家と結ばれると、無敵になるよ」
「いいえ、敵だらけになりますよね」
ヒュー先生はそれぐらい分かるよね。権力持ちすぎると問題になる。虫どころか蛇や蠍も来てしまう。
「何ビビってんの、先生。それぐらい根性持ってないと今すぐ別れなさい。世界を敵に回してもいいぐらい覚悟がないなら話にならない」
私はそうだった。母国を捨ててここに移住した時はそれぐらいの覚悟はあった。じゃなきゃ地位のない商人ライフの方が良かった。アズ兄と結婚するなら地位は勿論、権力も出来るだけ多く持たないと駄目なんだ。
「お嬢様...」
「姉様の為でもあるのよ。彼女が期待始めたら大変だから。3日考えなさい。次の模擬戦の前に答え出しなさい」
「...分かりました」
これからは不定期最新になります。最後まで頑張ります!!!




