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魔嬢様の遊び  作者: たんぽコロ
2ー魔嬢様の賭け事
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教師の休日・2

ヒュー編後、定期最新は続けられなさそうですが、頑張ります。いつか『人形遊び』編の編集もやりたいです。


誤字報告してくださってありがとうございます。

邸宅の従業員専用食堂はキッチンの隣にある。ランチの下準備をのこのこ始めた料理見習い達からパンの耳とバター、お嬢様の朝ご飯の残りのベーコンやサラダをもらって、それを朝飯にした。

見習いのモニカは簡単な朝食を作って上げてもいいと言ったが、そんな手間をかける事をさせない。


「ヒュー先生に食べ残りなんて...」


「十分美味しくて豪華ですよ。ここのパンの耳が好きです」


本音だ。残りとはいえ、たった数時間前に一流料理人が調理した余った物を好きなだけ食べられる。パンの耳だって今朝焼いたばかりの真っ白のパンをサンドイッチに作った時の残り物で、まだ温かくて柔らかい。黄金色のパンの耳は通常の茶色硬いパンとは大違い。


今まで人生で食べた物に比べれば、余裕で上位に入る。


食堂にいつも常備されているカフィを一杯持って、遅い朝食を食べた。時間をたっぷり使ってゆっくり食べた。


『ナッシュ。緊急事態。影移動準備』


頭の中にとある女性の声がはっきり響く。


エルミナ。苗字は無いと言う事は孤児の中でも一番残酷な立場。若い時に親に捨てられ、何も知らないまま生き続ける。名前だって多分お嬢様が名付けたと思う。あんな綺麗な貴族っぽい名前は孤児院関係の人が思い浮かばない。


食器を片付けながら、胸の左上にある魔印に魔力を流して、『了解』と返事した。


最近の研究物、通知方法に使っているのはこの魔印。まぁ、最初は従業員達の悪ふざけを通す為の言い訳として始めたが。一番理想としたのはお嬢様の魔印を使って身元判明機能を罠に入れたかったが、却下された。悪ふざけトップの自分とエルミナの魔法を二重設置にした方がいいとお嬢様が言ったら、反論出来なかった。


それはお嬢様が自分とエルミナを信頼している証だ。自分とエルミナが認める人ならば邸宅にほぼ自由に動ける。


正直、エルミナはともかく、何で自分をそこまで信頼しているのか解らない。邸宅の従業員の中でまだ新参者の立場の自分。お嬢様を従う経歴は断然に浅い。


つい酒の場でエルとレクセに聞いたら、「いや、先生はお嬢様に被害したいならそんな回りくどい事はしないんでしょ。それに、今の生活を壊す真似はしないと信じているんじゃない?」とレクセが指摘した。エルも頷いた。


自分も納得しちゃった。今の生活は楽しい。


図書室の通常管理は元ラオダ邸宅担当の従業員に任せて、偶に首都の古本屋に潜って珍しい物を探す任務になった。

異世界人の教育だって結構面白い。思いもよらない発想や行動、恐ろしいぐらい知識を吸い取る三人だが、教えがいのある生徒達。

そして、面白い研究に参加出来る。魔印、影歩き、魔法罠、汚れ防止布。自分の発想ではないが、もうほぼ遊び感覚で意見を交わしながら進化しようと皆と一緒に頑張る。

自分の研究だって自由に選んでいい。適正のなさそうな主題でもきっちり報告すれば好きなだけ研究すればいいとお嬢様が言ってた。


二年前、試しに魔法使適正と性格の繋がりを研究したいと言ったら、お嬢様は思いの外食いついた。固定概念に過ぎないと世間に思われているが、お嬢様はその事が本当かどうか知りたいと言った。そして、魔法色の事もついでに調べてと追加注文された。


老若男女、身分問わず知らない人と話して、性格と適性の事を観察しながら調査した。おかげで、一年間の飲み代が研究費として払ってくれた。引っ越したばかりで誰も知らない自分は研究の為に積極的に街を歩き回った。魔帝国の愛称に相応しいエイテルニアの国民は魔力基準が高い。カヒラ民は十人に一人が魔力持ちで、エイテルニア民は三人に一人だと同僚が調査結果として発表した。屋台のおっさんや野菜屋の婆やは皆魔力が測れるぐらい強い。だから研究は結構楽だったし、色んな人と知り合ったせいで自分はラヒタルに顔が広い。そして、同僚の飲み代も払うと言ったら、皆が手伝ってくれた。研究が終わっても街の散歩はいつも色んな人に話しかけられて時間がかかる。その雑談に付き合うのは意外と楽しい。邸宅の従業員とも仲良くなれた。すっかりみんなで飲みに行く習慣がついてしまった。


で、その情報をまとめてお嬢様に渡したら、彼女は想像以上に喜んでた。お嬢様はその情報が役に立つと言った。


それが転生者招きに使われた。魂の性格が何となくわかる事が大変便利だと言われた。


生徒達を見るたび、思ってしまう。自分の研究がこの子達の人生を変えた。自分の研究のせいでこの子達が選ばれた。

教え子達は中身まで可愛いと思っている。もっと相応しい魂があっても、今の転生者達と交換したくない。もしそうしないといけなくなったら、猛反対して死ぬ気で守る覚悟がある。

でも、ちょっと罪悪感が残る。この子達が選ばれたから、他の人が救われない。もし、本当に転生したい人があっても、自分の研究のせいで選ばれなかったらと…


落ち込み始めるとエルミナの声がまた頭の中に響いた。『私の影に直ぐ移動して』


魔法を暗くして影に溶いた。そうすると、体がその中に滑る感じで、影歩きする。本当に速くて便利な魔法だと常に思うが、暗殺技だと忘れられない。だって、鍵かかっている部屋や扉すらない部屋に気軽に入れる。普通の見張りがあっても無駄。対策として邸宅には影罠があらゆる所に掛けられているが、胸の魔印がそれらを無効にする。そして、影護衛のユリに軽く挨拶してからエルミナの影から出た。


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