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魔嬢様の遊び  作者: たんぽコロ
2ー魔嬢様の賭け事
30/44

教師の休日・1

 新生徒が来てから一週間が過ぎた。


 忙しいが、やり甲斐のある事だと思っている。


「ヒュー先生、明日は何の授業ですか」


 可愛らしい生徒の一人が楽しく質問してきた。


 チカ・レーギド。


 一週間半前に招きされた人は成人したばかりの身長低め元気一杯の女性。日焼けした肌と白に近い長い金髪は印象的で、昔話のウッドエルフを思わせる。この世界に珍しいピンク色の目がキラキラしてこっちを見上げる。


「バカ、明日はやっとの休日だよ。授業はなし。街に行ってもいいってミラ姉が言った」


 もう一人の新人がつっこんだ。


 ダグラス・ウインター。


 灰色の肌が印象的で黒い髪はオレンジ色の目と密かに尖っている耳を隠している。彼は成長した体だと言っているが、童顔なのか十六歳ぐらいに見える。


「マチに行って何したいですか」


 ステラは眠そうに聞いた。うん、新しいペースにまだなれてないね。新しい二人が来る前、昼寝をたっぷりとったステラは皆と一緒に勉強したいと言い出して、昼寝を一時間に縮んだ。授業の後、放課後寝をしてから遊んで晩御飯食べて寝るというスケジュールに変更したが、彼女の幼児体に厳しいかもしれない。健康担当のセルシに相談したほうが良さそう。


「新しい世界だよ!どんな所なのか見たいじゃないかよ?人はどんな生活しているのか、何を売っているのか、何を食べているのか、気になるだろう?」


「一人は怖いです」


 人見知りのステラはそう言った。まぁ、一ヶ月で邸宅から出たがらない幼児はそうよね。


「流石に一人で行けないよ。誰かが付いてくるだろう」


「私はヒュー先生がいいです!」


 チカはもっと近くに来て、両手を握り拳にして顎の当てる。この変な動きは異世界特有の仕草なのか。


「チカ君の案内はレクセに決まりました。目立ちたくないので、彼と観光中の兄妹として街巡りです」


 彼女の目がぱあと輝いた。うん、優しいイケメン好きなチカは反論する筈がない。


「じゃあ、僕は?」


「ダグラス君にはロデリックです」


「誰」


「シツジさんです。長い青白いサラサラ髪の背の高い静かな人です。」


 ステラが答えた。記憶力が良くて、一ヶ月で邸宅の人の名前と特徴を全部覚えているらしい。


「何で僕には知らない人なんだ」


「ロデリックは首都出身で、一番詳しいです。ダグラス君の案内に最適だと思います。」


「じゃ、先生はステラか。そもそも街に出るのか」


「私は行きません。図書室にひきこもります。」


 ステラ、幼児は引きこもらない。セルシは絶対に散歩させるから。


「自分は休日ですが、研究を進みたいと思います」


「えぇ、先生も一緒に出掛けましょー」


「はいはい、雑談はもう終わりにしましょう。さて、帝国の首都の名はなんでしょう。ステラ、教えないで下さい。これぐらい覚えないと街に行かせません。」


「「えぇ」」



 ーーー


 久しぶりにゆっくり起きた。寝室には細長い縦の窓があって、そこから朝日が入る。シンプルなベッドは心地良くて、数分ぐらいそのままゴロゴロした。マトレスはオセオットの毛とスライムで作られて、雲のように柔らかい。シーツは魔蜘蛛糸とコットンのブレンドで肌に気持ちいい。

 やっと立ち上がって背伸びしたら、あくびがつい出た。頭を軽く掻いた。

 寝巻きのまま隣の部屋に移動した。小さな居間はロデリックと共用しているが、彼は朝早くから出た。だから自分は洗面台でゆっくりひげ剃りして顔を洗った。ロデリックやレクセが休みだったら、あいつらと運動やゲームでもやるが、今日は出来ない。二人は街の案内に抜擢されたから仕方ない。


朝食食べたら、暇なやつに当たってみれば良い。教え子に遭遇したら巻込む確率は高いので、街に出かけない方がいい。昼食後、研究をちょっとして、終わったら誰かと酒場にでも行こう。


 そう。普通な休日の始まりだった。悪い予感が一切感じなかった。


 自分は将来を見通せる力や先見の明がない事は明確だ。一欠片でもあったら、こんなのんびりな目覚めは出来る筈がなかった。


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