魔嬢様の人形遊びー3
「この茶番を終わりにしろ、ルイン侯爵。」
響きのいい重さのある声が全員の注目を掴む。
エイテルニア帝国大師で会議の帝国代理人、アズール皇太子。昼夏を真冬に出来る氷青の瞳は切れ長の龍目と完璧輪郭の顔とショートカットサラサラ青寄りの黒髪を見事なコンビネーションプレイで強面美丈夫に完成した。あの鋭い視線が私に突く。
「えっあ、あの申し訳ございません、ワタクシはネアキ伯爵家のー」
恥と混乱が混ざっている調子眼鏡は媚を売ろうとしたところ、皇太子は
「黙れ。お前に話していない。」
と答えた。
「申し訳ございません、殿下。そろそろ終わりに向かいます。あ、最後の駒が到着しました。」
私は頭を下げて、お詫びしました。馬鹿野郎共がその言葉を理解する前に後ろから焦った声が叫んだ。
「ミランネ嬢!馬鹿な息子をなんとかするから、どうか今夜の失策を忘れて下さい!」
カヒラ王国の国王ペトルが走って来た。
冷や汗がダラダラと流れている。
馬鹿調子者ペアが仕込んだ緊急会議を抜け出して来たらしい。やっぱり彼の力が弱まっている。修羅場が始まってからおよそ十二分。色んな意味で遅い。
「それは出来ませんわ。私、とても傷ついています。」
私の忍耐袋が。
「陛下に失礼だ!反逆でもするつもりか。」
調子者大臣は警備と騎士達に合図を送った。が、誰も動かない。
「反逆ですか。まさかそんな恐れ多い事なんてする訳ありませんわ」
カヒラ国王はちょっとホッとした。
「じゃ、契約破棄の罰賞・没収はーー」
「勿論全部支払って下さいませ。今直ぐここで。」
「罰賞?没収?」
マルコは間抜けな声で疑問を列べた。
「あら、知りませんでしたか。ネアキ伯爵まで?まぁ、もしかしてそうだとは思ったが、まさか大臣なのに自国の財源と負債事情も分からないなんて」
私はクスクスと笑っちゃった。あらいけない。
「この国を滅ぼす気か!」
ペトルが乱れ始めた。
「どうですか、殿下。望むように動きますわ。」
そう呟いても、私の目は数歩前のペトルから離れない。
「えっあ。。。」
マルコは混乱し過ぎて言葉は出せなかった。まぁ、アイツから何も求めていないけど。
「そうだなぁ。隣国がこんな廐肥所だと悪臭が漏れる」
キターッ。お久しぶりのアズ兄の猛毒舌攻撃が遠見の皆の顔から血を引かせる。この真剣な顔から戸惑いのない美声が発する言葉のダメージ急上昇効果抜群。
内容はほぼ宣戦布告で、国際貿易協定更新の為に来た大師としては大失格だが。
「なッ。。。帝国とつるんでるか!反逆者を逮捕!」