勇者の行方・5
「アリスの下着はどんな感じ?」
部屋の中が一気に冷めた。女性全員は凍った目でリクを見てた。恐太子だって呆れた顔だった。
「知るわけ無いじゃないですか」
「。。。」
「難問だね。答えはノーパンかな」
猫。それは流石無い。
うさぎ。そんな目で見ないで。
白鳥は殺気たっぷりの視線で無言だった。あ、口開いた。
「布は三角形で、蝶結び。」
「テーブルの子が本物だ!」
リクは自信満々でそう叫んだ。大正解に違いない。
アリスの故郷はリクのと結構似てて、この世界のぶかぶかな下着に馴れなかった。だから、彼女はビキニ風のシンプル下着を自ら作って、普段使いにした。
その下着姿はこの世界に衝撃的過ぎて誰も知らない物だ。市販には勿論売ってない特殊品。その適切な描写は間違いなくアリス本人の下着を見たに決まっている。
「残念です」
綺麗な笑顔で白鳥の顔がぶれた。
黒髪の色が流される様に薄暗い茶色になった。紫目ではなく、真っ黒な鋭い目がリクを観察した。二十歳ぐらいの堅苦しそうな女に変わった。
「チェ、エルちゃんの勝ちか」
ラウンジチェアの娘は拗ねる。桜色の髪とターコイズ色の目がもっと大人びいた顔立ちはその滑らかな声と似合ってた。リクと同い年かちょっと下に見える。
「フア...」
うさぎの娘は可愛くあくびしながら縮んだ。色がどんどん薄くなって、真っ白な幼児は眠そうにソファにもたれかかる。
「残念。ランを知らない人は彼女を救う権利はない。そもそも救う理由はない。ここは彼女が望んだ居場所だ。」
恐太子はニヤリながらそう言った。隣に立つメイドの手を取って、指にキスを落とした。
は?
メイドは眼鏡を外した。印象薄い灰色の目と髪は濃くなって、見事なアメジストの目がそこにあった。ヘッドドレスを外したら、オニクスの艶々な髪が腰まで波打つ。アイボリーの肌は頬に赤らんで独特な色気を増した。
「俺はアリスの為にミランネ嬢をカヒラに帰す。」
そうはっきり言った。だって、最愛の人だから。
「ミヨタ様、私はカヒラに帰ってもアリス様の為になりませんわ。だって、彼女はそこにいないです。」
「は」
「先月、アリス様を故郷に帰しました。」
「故郷に‥帰し‥ました?」
「あら、まだ広まっていませんか。エル、もうちょっと宣言しないといけませんわ。」
「畏まりました」
白鳥が頭を下がった。
「私はこの世界の事情で勝手に招きされた異世界人に帰る選択を与えています。ミヨタ様は故郷に帰りたいんですか」
「ねぇよ」
「左様ですか」
「それよりアリスは」
「故郷に帰りました。若返らせて招きされた時点に戻しました。」
「俺はアリスの故郷に行くのは」
「一人では不可能です。カヒラの王太子と一緒なら一応可能ですが、ミヨタ様の故郷に行ってしまう確率は高いですね‥‥それに、アリス様は一人の連れと一緒に帰郷したので」
「あぁ、やっぱり国王か」
純粋なアリスは夫と幸せになるのを頑張った。だからリクは彼女の邪魔にならない為に去った。彼女の幸せは王の側に−−
「いいえ。若い騎士さんと駆け落ちしました」
「.....ハ」
もう今夜何回目のマヌケ返事なんだ。
嘘でしょ。彼女は不倫に罪悪感を抱いて、リクを避けた。泣きながら謝るアリスは今でも明確に覚えている。家族は大事だから傷付きたくない。リクと恋人になったら誰かに気付くに決まっている。嘘の中に生きるのは辛いって言ったよね。
「彼女の故郷が危機に瀕しているらしく、救うために帰ると言いました。詳しくは知りませんが」
あ。
それを聞いて、リクは冷静さを取り戻した。
アリスは聖女だ。故郷を救わないはずが無い。駆け落ちなんてミランネ嬢の勘違いだろ。護衛を連れて行っただけ。そう。リクは誰よりもアリスを知っている。間違いない。だって、最愛の人だから。
「分かった。俺はマルコと集合してアリスを助けに行く。」
「...えっと。人の話、聞いてます?」
「もういい。飽きた」
猫の娘が急に喋った。
返事出来る前に部屋が魔素に満ちた。
「ウォ」
動こうとしたが、体が上手く動けない。
「姉貴?!」
恐太子が叫んだが、部屋は濃霧に覆われて、誰も見えなくなった。
「おい!どういう事だ!」
声の響きが違う。見覚えのある体験だ。これは...
霧が晴れると、懐かしい場所にいた。
「...嘘だろ?!」
バイバイ、勇者様。
アリスが面倒臭がって、別れ話に手を抜いたら、この結果になりました。




