魔嬢様の格闘ゲーム・ラウンド2
ミランネの物語を読み続けて有難う御座います。
本当に半思い付きで書いているので展開のペースが早いと自覚あります。長年の癖です。細かく書くとついつい編集ループに入って、結局全然終らなくて途中で飽きます。
ペレニア夫人は慌てて誘った。この子達はただの準備運動だったのか。
「ご親切にどうも有難う御座います。」
また断れない誘い。
数人の上位夫人と令嬢達グループと一緒にお散歩コースに入った。
丁寧に育った花を見ながら雑談するが、誰も私に声をかけなかった。
スルー作戦か。逆効果だけどね。お前らと話したいと一切思わない。
「エル、この色のガーベラ美しいね。特種ですかね。」
「そうですね。庭師に聞いてみますか。」
ん?ペレニア家の庭師と話すわけがない。
エルは何かの通知魔法を使ったら影から気配を感じた。
『失礼します、お嬢様』
一人の男性が影から出た。見慣れたルイン家の作業服を着ているレクセ。ルイン家の庭師。
「どちらの花が気になりましたか。」
彼の優しい笑顔と声は恐ろしさを隠せない。
今、影歩きしたよね。優秀な使用人は私の誇りだと思っているが、庭師にこんな能力を求めていない!!
「白とラベンダー色のガーベラです。」
私は答えないまま、エルが教えた。
「流石お嬢様。お目が高いです。あれは確か白いガーベラに適度のユウサコウが入れた水を与えるとあの色になります。隣のペオニーも変色していますね。」
「あ、本当ですね。緑はちょっと暗いです。」
エルは花を覗いて見た。
「貴方達、何を目指しているの?」
「いつでもお嬢様のお役に立てたいだけです。」
影歩きは暗殺用に考えられた技だ。エルは護衛の為に学んだ時に才能があったから使うが、使用人を呼び出す為の技術ではない。
「ミランネ様、その方は?」
ペレニア公爵の次女ヒーミが急に話しかけた。あら、沈黙破って大丈夫なの?
「お宅の使用人ですが。」
使用人を数人連れても問題ないでしょ。急に現れたのは多分良くないが。ちゃんと観察しないとただ影に立っていた人が歩き出したにしか見えないから多分彼女は気づいていないが。
「使用人ですか。」
彼女は喰らうようにレクセをガン見している。
何処か変なのかな。ルイン家特殊の作業着は真黒の上下と襟がついた白シャツ。汚れにくくて丈夫な布で作られた物は商会の衣類部の作品。動きやすいように工夫されているが、何時でも貴族の目に入っても大丈夫なシャープな輪郭に仕立てた。ピカピカと黒く輝くロング革靴と白い手袋は今試作中の汚れ防止液が付けているだろう。
レクセは確か二十代後半。庭師だからまぁ肌は焼けているが、カヒラ時代から長年日焼け防止兼日射病防止の被験者に半強制抜擢されたから健康そうなライトキャラメルに落ち着いた。ただ、焦げ金髪は日光に曝してほぼ白金になって、彼の珍しい萌木色の目を引き立てた。
うん。ルイン家の使用人。
もうちょっと暑くなると全身白になる。新作の布で出来た頭巾付きのデザインは砂漠の国サンドリアの民服を参考した。真夏でも涼しいと期待出来そうで皆は楽しみにしているらしい。
レクセは視線を意識しないようにして、目にかかりそうな前髪を細やかな仕草で直した。
「えぇ、植物に詳しい方です。今日は折角ペレニア家の素敵な庭を拝見すると知りまして、彼を連れてきました。」
庭師を連れてくるのは怪しいので、そこは誤魔化す。執事達も汚れる仕事をすると作業着を着るので、彼らが着てもいいデザインにした。背広と軍人の礼装を混ざった感じで女子使用人達の中でかなり評判は良いと聞く。
「ああの、彼の意見を聞いてもいいですか。」
ん?なんで私の使用人と話したいの?
あ。
フフ。乙女心を壊すには行かないね。
「では、一時間彼を借りてもいいですよ。対価にペレニアの庭担当者を貸してくだされば。」
「っはい!」
娘の暴走を止めないペレニア夫人を見ると、彼女は素早く使用人に指示を出して庭師を呼んでくれた。親子は男趣味が合ったかしら。
「お母さんはついて来なくていい!」
違う方向に行こうとしたヒーミはそう言ったが、夫人は折らなかった。
「たかが使用人とはいえ、男女二人で散歩するのは駄目だわ。私は監視者としてついてくるわ。」
「そうですね。
レクセ、悪い噂に上がらないよう、貴方は決して彼女達を触らない様にして。例え彼女達は転んでも事故でも触れたら、強制転移動で邸宅に帰らせる。分かった?」
芝居の為に魔法を操ってレクセを包んだ。条件付き転移動はこんな簡単に出来るわけないが、彼女達はそれが知らない。彼の襟に魔印を残した。
『やばかったら、自力で逃げてね』
魔法が薄くなる前に密かに指示しといた。
「畏まりました、お嬢様。」
レクセの眩しい笑顔に惚れ最中の親子を置いて、戸惑っている老人の庭師は案内始めた。数分経つと彼は打ち解けて、饒舌になった。かなり仕事が好きだと感心した。面白い植物にも紹介されて、勉強になった。
一時間後、お茶会の場所に合流したら、レクセはまだいた。てっきり彼女達は我慢出来なくてつい手を出しちゃうと思ってた。
レクセは笑顔のままだが、かなり疲れたようだ。お疲れ様。
彼は素早く私の後ろに控えた。
「ルイン侯爵、素晴らしい熱心な使用人を持つね。羨ましいわ。」
頬を赤らんでいる夫人を見て、私は振り返らない様に我慢した。一体何が起こったの。
「お嬢様、ペレニア夫人は欲しい物がお見えになったら好きに取れば良いと言いました。お目につく植物はありましたか。」
それ、多分口説き文句だったよね。でも、遠慮なく頂くわ。
「そうね。千年アイビーは素晴らしかったわ。」
それはそうよ。栽培難しくて幻の薬の処材の一つである。
夫人は戸惑った。もうちょっと甘くしよっか。
「でも、栽培は難しいと聞いているわ。レクセはここの庭師から育て方を教えてもらわないといけないので、諦めるわ。一回二回じゃ済まないよね。そんな時間を取らせるのは流石出来ないわ。」
「問題ないわ。彼は何時でも来てもいいよ。」
食いついた。そんなにタイプだった?
ま、彼は帝王国には珍しい顔立ちだし、エキゾチックな魅力に惹かれたかも。制服パワーもある。
「では、遠慮なくそうさせて頂きます。」
その夜、魔印を消し忘れて、アズ兄が訪ねた時に見つけられたレクセは死ねるぐらい悪圧感に襲われて私の所に影歩きで逃げて来た。あの時のアズ兄は正に魔帝王の弟と思った。別に嫉妬する様な事でもないと思ったが、彼は本気で怒った。綺麗な青い炎が体から溢れて、通った所は燃やし始めた。
やっと落ち着けさせたのに、大変だった。物凄く恥ずかしかった。
それから数日後、何故か使用人の襟に私の印が現れ始めた。魔印ではなく刺繍した物だが、色と形が完璧に似る。エルに聞いたら、笑顔で「お嬢様の所有物の証」と答えた。奴隷売買者じゃないと突っ込んだが、「お守りです」と切り替えた。皇太子に襲われちゃう守りはもはや呪いではと反論したが、彼女達は誇りとして付けていると返した。
私をからかっているしか思わないが。
魔印事件として邸宅の者の中にも焼き付きました。
今回のバトルは容易かったが、それはミランネが田舎国カヒラの落ちこぼれと思われて舐められたからです。次は手応えある敵を期待します。
女子はイケメンに弱いです。優しい仮面の執事[ではなく庭師]を呼んだのはエルの神判断。彼女は結構勝手に動くが優秀な下女です。




