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魔嬢様の遊び  作者: たんぽコロ
1ー魔嬢様の人形遊び
15/44

王妃のバカンスー4

危険な山道をスムーズに進み、夕方にユラピカ村に辿り着いた。山に囲まれた小さな谷にあるユラピカはぷち観光地で、満月達を反映する湖は幻想的だとか。その為、宿がいくつあって、ほぼ全部の部屋に湖を見渡せるバルコニー付き。


ギルドに進められた宿はちょっと裕福旅人向けの優雅な所だった。貴族にとって部屋は小さかったし、使用人部屋もなかったけど、二人には十分だ。

ちょっと高かい宿泊代だし、ギルドから遠いので冒険者は少ないと聞いた。また知り合いに遭遇するのは避けたい。


「あら、風呂から湖を眺められる。ちょっと長風呂しそうだわ。」


夕日が水を染め始めた時、カインは悩んだ。

国王は何故カインを選んだのか。少ないが王妃専属護衛には3人ぐらい女性騎士が居るはず。


マルコが言った【身内】だからか。でも正直王妃と親しくない。ずっと嫌われると思ってたし。


国王の信頼の証か。


守れる。裏切らない。手を出さない。


息子だからか。

仕事はいつもきっちりこなすからか。

王妃を怯えたからか。


薄いドアの向こうに王妃は鼻歌を歌った。小さな水音が聞こえた。


トントンとノックの音がカインをビックリさせた。護衛失格。


「すみません、食事を持ってきました。」


この宿は食堂がなく、各部屋に食事を取る仕組みだった。感知捜索して問題なかったので、小さなカートを部屋に運び込んだ。鴨のロースと薄くスライスしたじゃがいもと野菜のキャセロールが主になって、他に小さな嗜みがいくつあった。


「アリスさん、夕食は準備終わりました。」


テーブルにセットした後、そう呼び掛けると王妃は風呂場から出た。


髪の毛にまだ湯気が残ってて首にしがみついた。薄い生地のワンピースの上に焦げキャラメル色のストールを羽織って、ベルベットスリッパを履いてた。


「カインは食事にする?お風呂にする?フフフ。それとも。」


なんの冗談か分からないが、カインはろくでもないことぐらい分かった。


「お供に夕食取らせていただきます。」


「あら、そう。」


毒見人がない限り、カインは最初に食べないといけなかった。

けど、それは何故王妃がああんしてあげる形になったのか解らなかった。


「あの。アリスさん。普通にして下さいませんか。」


「ん?普通にしているよ。たまにこうやって食事を上げたりするの。流石に人前でやらないけど。」


宮殿に毒見の人にああんしたのか?!


もぐもぐ毒見終わると、王妃はニコった。


「別に毒見しなくてもいいけど。私に毒が効かないし、効いたとしてもすぐ治せるから、毒見ちゃんはほぼ食事友みたいな感じだわ。」


そう言って、カインに食べさせたフォークをそのまま使い続けた。


それは珍しくなかった。カトラリーに毒を塗られた可能性はあるから。けど、その淡いピンクの唇はペコリとフォークを挟むと、カインはそわそわした。


「はい、これも。」


高そうなワイングラスを魔法空間ストレージから取り出して、宿が手配した赤ワインを注いだ。二口ぐらいしか入れていないガラスを渡され、カインは無言で半分ぐらい飲んだ。

美味しかった。濃厚で滑らかな舌触りと喉に残る香りは絶妙なバランスをとっていた。


「うん。美味しい。当たりだわ。明日出る前に一ダース買っておこう。」


王妃の好みでもあったようで、すぐまた注いだ。けど、何故か二口だけで、またカインに渡した。


「。。。何のおつもりですか、アリスさん?」


「毒見だわ。だって、こうしないと付き合わないでしょ。一人酒は寂しいよ。」


「護衛は酔ってはいけません。」


「なら酔わなければいい。実際、癒せるし。」


渋々と飲んだ。やっぱ美味しかった。食事と合って、味もしっかりしてて、甘くどくなかった。ほんの少しの苦味は他の味を引き立てて、口の中を満たした。


「フフ。」


ガラスを返そうとしたら、王妃は笑ってそのままワインを足した。魔法空間ストレージからもう一つのガラス取って、それにも注いだ。


「はい、乾杯。」


カチンと綺麗な音が鳴った。


このガラス、多分美音結晶(ハルモナイト)から作られた品だ。凄い高いはずの物を普段から歩き持っていたのか、王妃。


疑問を顔に出てたのか、王妃が教えてくれた。


「これ、自分で作った作品。これは【秋】、それは【夏】。【春】と【冬】もあるけど、白ワイン向けなの。」


「自分で作ったんですか。」


「うん。王妃らしくないと言われて隠させられた。だからいつも魔法空間ストレージにしまっている。」


手にある物を細かく検討した。薄くて何時でも割れそうなのに手に持つと安定感がある。ステムから咲く細かい模様があって赤ワインが入れると映えた。


これ、素人が作る物じゃない。


店にあったら一つ50金貨以上の値段になる気がした。


宮殿いえにいた時、いつもこのような作品を作ったんですか。」


「そうね。私は結晶が操り易かったので、ガラス作品が多いね。」


「他もありますか。」


「ん、ビアグラスやティーセットもいくつか作ったし、カトラリーセットも作った。あれは大変だったわ。調子に乗ってフルセットにしてやると変な意地を張って、結局半年ぐらい掛かった。

あ、ミランネちゃんに一つのワインセットを売ったね。【朝】【昼】【夕】【夜】の。使ってくれているかな。」


「え、売ったんですか。」


「そうよ。元々魔法操りを教えてもらったのはミランネちゃんだから。彼女のお陰で五年間職人ライフを楽しんできた。」


「その前は?」


「忍びで冒険しまくってた。カインみたいに。」


ワンピースの一つ目のボタンを外して、ギルドのプレートを見せた。綺麗な純金色だった。


「金ですか。」


どれだけ冒険したのか。カインだって後ニ・三年続かないと金に辿れない。


「ニ十年近く続いたんだもの。報酬を気にしないで、面倒臭そうな難易度高いクエストをしまくったらこうなった。ポーションや避妊薬もギルド通行で売ったりしたね。温室にある植物を全部薬に使う物にしたの。」


「何故?」


王妃は珍しく答えなかった。食事を食べ終わると、話を変えた。


「ね、ちょっとバルコニーに移動しよ。」


暗いバルコニーは涼しくて、気持ちいい風が顔に触れた。そこにあったのは二人掛けのベンチと小さな低テーブル。いくつかのクッションを部屋から持ってきて、アリスは腰を掛けた。


「カインはこっち。」


カインは静かに隣に座った。肘にアリスのストールは柔らかく触れた。僅かな体温を感じた。


目の前に広がったのは四つの月の光景だった。暗闇の中で完璧な夜空反射は本当に幻想的で、視界がただ星数々と月になった。不思議とサオ月の赤とミオ月の緑が薄くなって、全部違う色になってた。


「綺麗だね。【宇宙】みたい」


聞いたことのない言葉が出て、カインはつい聞き返した。


「ウチュウ?」


「うん。空の向こう。えっと、真上に飛び続けたら世界から離れて、宇宙に入るの。視界が星空だけになるわ。こんな感じに。そして、世界が玉っぽい感じになっちゃう。でっかい色付きな月みたいに。」


想像出来るような出来ないようなイメージだった。


「空の向こうまで飛べるのか。」


「うん。凄く難しいし、空気ないから大変だけど、行けるよ。私の故郷なら、ね。ここだと分からないわ。」


「行ってみたいな。」


つい呟いた。その話を聞いて、これしか浮かばなかった。


アリスはクスクスと笑い、肩をカインの腕に当たった。


「やっぱカインもそう思うね。私、子供の頃から宇宙に行くのが夢だった。誰に笑われても変わらなかった。勉強して、体作って、頑張った。だけど、【一流大学】に合格した時期、世界中に怪獣が出始めた。世界が混乱に落ちて、【宇宙飛行士】を育つような状況じゃなかった。大学は中止されて、私は軍人に抜擢された。で、基地に行く前の夜、ここに招きされた。

最初は助かったと思って感謝してた。戦わなくていい。殺されなくていい。何もしなくていい。ただほのぼのの生活を続ければいいと思った。多分最初の一年ぐらいはそんな感じだった。


カインの事で全部変わったけどね。」


名前が出てきてビクッとしたカインはその時気づいた。アリスはカインの肩にもたれかかっていた。


「ガラスの城が崩れたね。あの人は本当に私ではなく、聖女と言う物を欲してた。カインの母と私の違いはそれだけ。もし彼女が聖女だったら、彼女は王妃になってカインは王太子になってたよ。」


酔ったのか感情狂ったのか分からないが、アリスから言葉が溢れ出した。もう曖昧な言葉を選ばず、まっすぐに語った。


「だから宮殿から逃げて、ギルド登録して、子供を一人で育ててやると呑気な事考えた。もう本当に馬鹿だった。授かり六ヶ月の妊婦さんは何も出来なかった。王都から逃げなかった。ただギルドにポーションやエリクサーを売りまくった。

私を見つけ出したのはラオダ公爵。ミランネちゃんのパパね。小さな借り部屋に住んでた私に彼は土下座して頼んだ。『四年間、耐えて下さい。子供を王族にして下さい。その後、まだ宮殿にいたくないなら、全面的に協力します。王妃は亡くなったとでも言いふらして、自由にして見せます。だから、四年間だけ待ってもらえますか。』とお願いされた。


もう、完全に騙されたわ。宮殿に帰ってマルコを産んだら、子供を捨てて逃げる訳ないでしょ。この国に王太子が必要だった。聖女の王妃も必要だった。


それでも、四年後はラオダ公爵に頼んで内密結婚解除してもらった。本当に書類上で誰も知らないけど、どうしても縁を切りたかったわ。あの人みたいに浮気したくなかった。ま、相手達は知らなかったから彼等にとって同じ事だったけど、私の中で大違いだった。でも、誰も長く続けられなかった。浮気大丈夫な人は嫌な感じだったし、嫌だった人に真実を教えられなかったから、自然と去ってた。」


カインはアリスの話を聞いて、色んな感情が湧いた。複雑な母の思い出や護衛騎士勤務に疑問と思った事を思い出した。ちょっと辛いと反面に嬉しかった。


これは絶対誰も聞いたことのないアリスの話だ。






「ごめんね。重い話よね。綺麗な光景を台無しにーー」


彼女は誤魔化すように気楽な態度で喋り始めた時、胸が急に傷んだ。


だからその言葉を防ぐ為にキスした。


柔らかい唇はちょっとワインの味が残ってた。

えっと、はい。そういう事。


(;´д`)トホホ…


元々全く違う設定だったのに、カインを書いてみたら面白くて、王妃の護衛に抜擢されたらと思って、こんな結末に。。。


R18のラインをギリギリ避けないといけない話になってしまいました。

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