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第1話 OKAERI
気がつくと いつも夕暮れがあった
ランドセルを背負って家路に向かう いつものメンバー
シュシュで束ねた髪をほどきながらの 他愛もない会話
心の中には九十パーセントの満足と十パーセントの未練
後ろ髪を引かれる思いはどの娘も同じ
手を振るたびに少しずつ寂しくなる帰り道
一人になって足早になるのはいつものこと
最後の関門は 灯りも疎らな薄暗い路地
全力で走り抜けると そこには小さな白い灯り
そして
「おかえり」
優しい笑顔と言葉
心が温かくなるのがわかる瞬間
帰る場所があることへの安堵感
あれから どれくらい時間が経っただろう
ここは あの頃とは時間も空間も異なる世界
シュシュもランドセルも存在しない世界
けれど 笑顔や言葉が持つ意味は何も変わらない
時間を隔てても あの頃のまま
だから 迷い彷徨うキミに言ってあげたい
ここはキミが帰る場所なんだって
そして とびきりの笑顔で言ってあげたい
OKAERIって
RAY