それでもかけがえの無いものだと分かれよ?
久々で夜中まで熱中して書きました。
是非見て頂けたら嬉しいです。
「なるほど...いまのやってるとこは活用形のところね...パターンさえ覚えてればちょちょいのちょいだわ。」
身体を共有している今、自分がごちゃごちゃ喋りながらみるみると問題を解いていく光景をただみているだけだった。
そして人間離れしたスピードで回答...いや答えを埋めていった。
「よし、完璧っ〜」
書き終わると机に伏せた身体は俺の意識を取り戻しつつあった。
そして回答時間を30分以上残し終え、1時限目の古典は終了した。
もうなにがなんだか自分は状況を把握出来ないままでいたが、ここは冷静に幽霊との交信に試みることにした。さっきみたいな痛い目は浴びたくないので屋上に呼ぶことにもした。
「あの...知遥さん?なにを僕の身体に入れたのですか?」
「決まってるでしょ?幽霊なんだから身体を貸してもらったのよ。」
まぁ幽霊からしたら当たり前か...
「ひょっとしてこれが秘策というやつですか?」
「高スペックな妹で良かったわね〜」
「最初からこれすれば良かったじゃんか!!」
「ふふふ...お兄ちゃんの頑張りも見てみたかったのよ」
家でコイツの指導の下で結構勉強したがそれでさえ無駄になるとは...哀れな兄だ。
「はぁ...とりあえず残りのテストも任せていいんだな?」
「計画のためなら私は手段を選ばないわ!!」
「これから付き回されるこっちの身にもなってくれよぉ...」
チャイムが鳴りそうなので教室に戻り、あとは知遥に身を任せた。
...どーせこの後の展開は分かりきった事だし次に行こうか!!
〜そして放課後〜
西は太陽による紅く染まった空が広がり、東は暗い夜の訪れが始まっていた。
そして私、新道真琴は浮遊する幽霊とともに家に帰る途中であった。
「いやぁ...今日はお兄ちゃんにとって人生のターニングポイントになったねぇ」
「人ならざる者に手を借りてまでこうしたくは無かったのに...」
1日を乗っ取られていたせいで学校での記憶はあるのに、登下校をしているだけの感覚であった。
先程も言ったような伝えづらいのだが意識はあるのに感情は無くなったようだ。
それに横にいるコイツと身体をシェアしたと思うと気持ち悪いけど...
やめてよね?そんなクセのある趣味は流石にないからね?
「テストはもう聞かなくても...大丈夫だよな?」
「え?気にしてたの?」
「だよな。」
この話は大前提だ。
問題はこの先に言いたいことなのは承知の上だし。
「なぁ...これで俺が探偵事務所に入ったら何をすればいいんだ?」
プカプカ浮いてる幽霊は俺の少し前を行き、
照らされる太陽の背景をセットに喋り始めた。
「まず他の4人と仲良くしてください!!」
「ほんっとなにをするか全く読めないのだが...」
とても意味不明だ。
けれど知遥の役にも立って探偵事務所の子達と仲良くなれたならそれは一石二鳥でもある。
霧島さんとは普段から話してるからいいとして、残りの3人は顔も名前も知らないのだから少し緊張もするし、仲良くなれるのかも不安だな。
俺。若干コミュ障だし。
「捜査をするならまずは行動力と効率化を求めないとでしょ?6人(内1人は元人間)で犯人探しした方が早いって!」
「まぁ...それもそうだけど、まさか前に言ってた事務所の方々と密会って仲良くすることかな?」
「その通りだっ!」
「とても嬉しいけどとてもめんどくさいな...」
愛想をつかせた知遥はこっちを見て妹バレては気まずい、かつ深刻な精神的ダメージを震わせる一言を口ずさむ3秒前だった。
「あれ?ハーレムがなんたらかんたらって言ってなかった?」
「その話聞いてたんならお前もここまでだ。昨日勉強のついでに調べた覚えたてのお経を試そうかな。」
「くっ!?そうはさせないっ!」
焦り出したのかたちまち知遥はまた俺の身体を乗っ取ろうと侵入してくる図だった。
まぁ油断せず気を確かにしていれば入ってこられないというのはテスト中薄々気づいていたがな。
「南無妙法蓮華経...南無妙法蓮華経...」
「ぎゃあああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
登下校にこんな時間かけたらお母さん心配しちゃうから以下略で家の前まで行こうか。
「「ただいま〜」」
靴を脱ぎ、リビングへのドアを開けるとキッチンで晩御飯の用意の最中であり外見を珍しくポニーテールにした母親の姿と二人分のハンバーグとサラダなどテンプレートなメニューにも関わらず魅力的かつ食欲をそそるものがそこにはあった。(阿〇々木風)
「あら?真琴がこんな遅く帰ってくるなんて珍しいわね〜。あ、もしかして女かぁ?」
時計をみたらもう19時を回っていて。テレビの番組はゴールデンタイムが彩を見せていたり。
でもとりあえずニヤニヤこっちを見てくる母親に元とはいえ実の妹と帰ってるし、疎か合ってるのでなんかムカついたり。
「もう...俺に出来る分けないじゃん!」
切なそうな表情を浮かべながらこっちを見られると更にムカつく。クソっ...
「お母さん将来が心配よ...」
「なんとかするからそこは黙ってよぉ。」
今後の人生設計考えると、とてもそうはいかなそうだけど。
「ご飯出来てるから着替えたら降りてきてね」
「はいはい」
リビングをあとにして廊下に戻り、今度は階段の方へと軌道を変えて自分の部屋へと帰ってきた。
「ふうぅぅぅぅ...なんだか疲れてもいないが疲れたよ。」
部屋に戻りベッドにダイブして独り言を喋ってるのでは無く、ちゃんと交信をしている。
「なによそれ...頑張ったの私じゃん。
お兄ちゃん乗っ取られただけじゃん。」
「その乗っ取られることで疲れたんだよ。」
少々の沈黙が流れ、予想外の返事が返ってきた。
「......えっぐ...うぅぅ...」
「ちょっ?えぇ?」
その瞬間知遥の目からはポロポロとひと雫の涙がこぼれ始めて、床につく前にそれは蒸発するかのように消えていった。
悲しいことを言ってしまったか?とは思ったが一言も口ずさんだ覚えもない。
きっと女の子の気持ちってどんな生物やどんな者でも共通で分からないだろうな。
「お、おい。どーしたんだよ」
そして数秒後に顔を下に向き始め、ゆっくりと身体を埋め始めた。
「私、お兄ちゃんに迷惑掛けてるよね、自分のワガママだけで事を進めててなんだか申し訳なくなっちゃったよ。」
「そんなことないぞ?俺は妹のやりたいことだったらなんでも付き合って...」
「そんなこと...ないなくないよね...」
頑なに拒否を始めてなんだか知遥らしくもないし、むしろ始めて見たかもしれない。
「私はもうこの世界にはいちゃいけない存在で、いては迷惑な存在になることもある。
そんな者が例え身内であったり家族であってもここにいるのはダメな気がするよ...
お兄ちゃんが辛い思いしちゃうよ...」
いや、とりあえず素のありのままの知遥の意見が聞けてとても良かった。
これで心置き無く言えることもある。
「お前がここにいなきゃどうするんだ?」
「...え?」
「知遥を殺した犯人...一番の目撃者はお前だろ?大切な1人の妹を失わせたクズ野郎を俺は一刻も早く見つけたいし、少なくともお前が必要な存在であるのは確かだ。」
「でも...お母さんやお父さんにも悪いよ。」
「なんも悪くねーよ。お前は家族の一員だ、ここにいてなにが悪い?」
知遥に近づいて触れようするが
透き通る身体には肌で感じることは出来なかった。
けれど頭に手を当て、撫でるような仕草をしているとその存在を感じ取ることはハッキリと出来た。
あと頭の輪っか無性に邪魔だよ...
「心配するな...お兄ちゃんがなんとかしてやるよ。頼りがいのないヘタレ野郎だけど、それでもお前の力には絶対なってみせる。」
「二人で犯人見つけようぜ?」
決まったァァァァァァァァァァァァ
普段は見せ場のないアホ兄貴の時に見せるちょっとかっこいい名シーン。
ま、まぁそれは置いといてムクっと立ち上がった知遥は涙を拭いこちらをみて微笑みを浮かべてくれた。
こうみると幽霊じゃなくてほんとに天使みたいだ。
そんなサービスタイムはつかの間に終わり、いつもの知遥へと戻った。
「今普段は見せ場のないヘタレお兄ちゃんがちょっとだけいいこと言ったって心の中で思ってたでしょ?」
「うっ...そ、そんなことないぞぉ?」
「バレバレだわ…ほんっとアホでバカでマヌケなお兄ちゃんだね!」
「やめてくれ...恥ずかしくなってきた。」
「でも...」
「でも?」
頬を赤らめた知遥は焦らすかのように見つめ合いを始めて数秒後やっと答えを貰えると思ったけど...
「やっぱりなんでもなーいっ」
なんでもないんかーい...
「はぁぁぁぁ...なんだそれ。
とりあえず母さんも待ってるし下行くぞ?」
「うんっ!!」
次回はハーレム計画?いや、犯人探しへの第一歩です。