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第六話  邂逅

 各々で考える、解散! となった翌日。

 ぬえは猫又と共にカラルへと来ていた。猫の姿で。


「何で私があんたに付き合わないといけないのよ。一人で行動しなさいよ。人になれるでしょあんた」


「邪険にしないで欲しいんよ。人になっても人としての行動を知らないんよ? へまして尻尾を出すのは時間の問題。それなら尻尾が二つに分かれようが注意されない猫の方が良いんよ。でも猫の行動も知らないんよ。だから本物に協力して欲しいんよ」


「……ふん、私は勝手に行動するからね。指図は受けないよ」


「別に良いんよ。今回の目的はこの街の様子を観察のみ、猫又がこの辺りの猫のボスになろうが、涼しい所を探そうがお好きにどうぞ」


 ぬえのことなど無視して猫又は器用に壁を蹴り家の屋根まで到達、そのまま屋根伝いにあちこちへ飛び回る。通常の猫では飛べない距離でも妖怪なら歩く如く超えていく。


「他の妖怪は何してんのよ」


「そりゃいくつかに分かれてるんよ。雪女など外に出れない奴、ぬっぺふほふのようにそこまで強くないん奴はマヨイガで自分の伝承をどう伝えるか考えてるんよ。

風狸(ふうり)や一反木綿、影女など移動能力が高いか潜伏能力が高いのは他の地域を見てくるってお出かけ。

いっぽんだたら、牛鬼とか強い奴はカロ山脈に行って魔物の強さを調べるって。多分、弱ければ殲滅も視野に入れとる気がするんよな。

 で、俺らや座敷童とかはカラルへ来とるんよ。偵察組が派手にやってお仕置きされてるから自重するとは思うんよ?」


 何だかんだ妖怪全体の行動を知っているぬえに、ふぅんと猫又は感心した様子を見せるが、すぐに眼下で行われている目的の物を見つけ好戦的な笑みを浮かべた。

 眼下で行われていたのは猫会議だ。


「ぬえ、あんたここで待ってなさい。あんたがいると面倒だから」


「あいよー。高みの見物なんよ」


 ぬえの返事を最後まで聞かず、猫又は猫会議のど真ん中へと飛び込み。


「雑魚共、これからは私がボスよ。分かったわね」


 全ての猫に喧嘩を売った。




 結論のみで言えば猫又の圧勝だった。

 最初は喧嘩を売られ反抗的だった猫も、猫又が妖力を漏らせば実力差を理解して即座に白旗を振った。

 ただそれだけでは終わらなかった。

 揚力を感知して人がやってきてしまった。


「な、何なの今のは?」


 初めて見る猫型獣人にぬえは珍しい物を見る目を向けつつ、ばれないように背後へと回る。退路は絶った。

猫又も変な物を見つけた目を向けるが、積極的な行動はしない。獣人という種族がどんなものなのか分からないからだ。


「えっと『何かあったのかニャア? 教えてほしいなニャア』」


 突然何を言っているのか、ぬえには理解できなかったが猫又には理解できた。猫語だった。

 周りの猫たちは話すべきか、困惑した様子を見せたが猫又が妖力を漏らさず無言の威圧を掛けるとすぐに察して黙った。


「あれ? 『どうしたのニャア? 話してほし』」


「ニャア、ニャアうるさいのよあんた」


 猫又は猫型獣人に喧嘩を売った。


「え? 今普通に喋った? と言うか尻尾が二つ?」


「何? 文句あんの? 食うわよ?」


 他の猫とはまるで違う存在感。自然と足が後ろに向いた猫型獣人はようやく自分の退路が絶たれていることに気づく。


「え? 後ろにも同じ猫」


「違うわよ。ってそいつは猫でもないわよ。猫なら気づきなさい。あんたそれでも本当に猫? 自覚あんの? 猫としての自覚」


 ボッロボロの言い草で猫型獣人は状況が急変しすぎて理解が追い付かなかった。

 だが自分が混乱しているくらいの理解はあった、だから一度基本に戻り呼吸を整えて落ち着く。そして。


「初めまして。私はミミリナと申します」


 やっぱり混乱していた。猫に自己紹介など常人の沙汰ではない。だが、これが正解だった。


「あらそう、始めましてミミリナ。猫又よ。後ろのはぬえ。猫じゃないわ。じゃあ何か言われても困るわね。ぬえあんた何なの?」


「ぬえ」


「死ね」


 その日、妖怪と異世界の住人が邂逅を果たした。


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