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第三話  大街カラル

 大街カラル。

 どこの国にも所属せず、決められた軍隊を作らず、王を持たない街。

 どの国の首都よりも大きく、どの場所よりも金を生み、世界の果てとも言われる場所にある。

 小さな問題はそれぞれの部署で処理し、大きな問題は部署の長が集まって話し合う。

 知らぬ者無しと大街カラル。




 危険と死を引き換えに莫大な金を生み出す冒険者ギルド。

 常に騒がしい場所だが、今日はいつもとは異なる騒がしさに包まれることになる。


「た、大変だ!」


 ギルドの扉を勢いよく開き、一人の男が転がり込んできた。

 緑の髪にと整った顔立ち、長い耳に鍛えても太くなりそうにない細腕。背には弓を携えるギルドではそれなりに名の売れたエルフの男だった。


「どうしたクラー。お前が慌てる所なんぞ久しぶりに見たぞ」


 出迎えたのは髭と小さいながらも全ての部位が太い身体を持つドワーフの男だった。今までギルドにある酒場で樽一つを呑み終え、まさに依頼に出かけようとしていた所だった。


「カ、カルの森の浅層にアシュラベアーが現れ――」


「なにっ!」


 ギルド何にいる冒険者がすぐに沸き立つ。

 カルの森。様々な魔物と素材が取れる広大な森。浅層なら弱い魔物が多く、深層なら強い魔物が多い、ベテランからルーキーまで世話になる森。

 ただカルの森の更に奥、カロ山脈には単体で都市を滅ぼせるほど強い魔物が生息している。そこで生存競争に負け、カルの森まで降りてきて生態系が一時的に崩れることがある。

 アシュラベアーは深層でも強者に入る魔物。ベテランの冒険者でも間違えれば命を落とす、浅層を中心に活動しているルーキーでは出会えば即座に殺される。


「それはまずい。まずギルドに話して依頼を出させよう。それから」


「待ってくれ。違うんだ。……アシュラベアーが現れて、瞬殺されたんだ」


 場が一瞬で静まり返った。

 アシュラベアー程の魔物を瞬殺できる相手。一握りの人間だけが上位冒険者、その更に一握り、最強と呼ばれる最上位冒険者か、カロ山脈に住む魔物ぐらい。

 そして今、最上位冒険者は所要で全員大街カラルを離れていた。


「どんな奴だ」


「でっかい一つ目に足は一本。けむくじゃらで襲い掛かってきたアシュラベアーを二本の腕が一発で押し潰した」


 なんてこった、とギルドのあちこちから悲鳴にも似た声が上がる。

 カロ山脈の魔物。数は少ないが何体かの情報はあった。過去の最上位冒険者が倒したことがある。

 しかし、その中に単眼単足の魔物の情報はなかった。


「くそっ! 何てこった。最上位の連中がいない時に。俺やお前、他の上位冒険者を集めて」


 危機感が伝わったのか、ギルド内にいる冒険者達も上位冒険者がどこにいるか話をし、単眼短足の魔物について職員と共に調べ始める。

 

「さすがにカロ山脈の魔物となれば冒険者ギルドだけでなくカラルが動くはず。代表は徹夜で大変だろうが、明日の朝には討伐組まれる。俺やお前が呼ばれる可能性もある。とりあえずお前は報告したんだ、よくやっ…………おい」


 ずっと震え続けるクラー。ドワーフは最初カロ山脈の魔物を見て恐怖で震えているのだと思っていた、逃げ出せた今なら震えが残っても若干の安堵が生まれてもおかしくない。

 だが目の前のクラーは今もなお怯え続けている。


「……一匹だけじゃない。同じ姿じゃなかったが、今まで見たことのない魔物がいたんだ。しかも集団でまるで仲間意識があるようだった。まるで散策するように歩いて、襲い掛かってくる魔物を単眼単足の魔物ともう一匹、でかい蜘蛛みたいな胴体に化け牛みたいな顔をした魔物が倒していた。そいつはエアスネークに毒煙を吐いて殺すと食っていたんだ」


 まるでそのことすら聞かれるのを恐れるのかのように小声で言われ、聞こえたのがドワーフ一人だけだったのは運が良いのか悪いのか。

 ドワーフはこのことを伝えるのか少し考え、これ以上混乱させても仕方がないと伝えるのを止めた。




 気が付けば日は落ち、闇夜の時間が来ていた。

 妖怪の時間がやってきていた。


「ぎゃああー!」


『カラル』

 異世界にあるどの国にも属さない街。軍隊を持たず、莫大な金を生み出す街だが危険も隣り合わせ。他の国は何度かこの街を手に入れようとするも、冒険者などカラルの住人に敗北。住人超強い。


『カルの森』

 素材も食料も魔物も豊かな森。浅層には弱い魔物が、深層には強い魔物が生息している。しかもここの素材は非常に珍しく効能もすばらしいものばかり。ただし死と隣り合わせということを忘れてはいけない。


『カロの山脈』

 未踏の山。その奥にはもっとすごい物があると言う伝説まである。生息する魔物は都市を単体で滅ぼせる。そんなのが跋扈している。最上位冒険者でも行けば死ぬだろう。


『クラ―』

 大街カロルの冒険者をしているエルフ。上位冒険者と非常に優秀で弓の名手としても知られている。カルの森で妖怪を発見、魔物と認識。見つからず逃げれたと本人は思っているが、妖怪たちはしっかり気づいていた。ただ人間ではなかったのでスルー。人間だったら……。

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