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第十一話 契約条件

 妖怪の存在を広めるに辺り、いくつか条件を出された。


 広める妖怪は月に一体とする。


 古文書、もしくはそれに類する解読が必要なものを提出する。


 必要な経費はドラゴンの買い取り金額から引く。


 重要なのはこの三つ。他にもあまりカラルで活動しないなどもあったが、あまり気に留めるつもりはなかった。どこで何をするのか、それは個々の自由であり縛ることが出来るのは己のみ。


 一つ目の条件、妖怪を広めるのは月に一体のみ。これにはぬえは反対したが、大老の言葉を聞いて納得した。

 妖怪と言う存在を確実に浸透させるため。例えば毎日新しい妖怪の情報が出れば個々の印象が薄くなり、更新され続ける情報で古い者は忘れ去られてしまう。一週間でもまだ短いという大老の言葉を信じ、一月に一体となった。

 それに妖怪は不死、多少時間が掛かろうとも妖怪からすれば短い時間に過ぎない。


 二つ目、古文書、またはそれに類する解読必要なものを提出。


 これは今までの人と魔物という分類から新たに妖怪と言う種を作るための工作。

 古い話だとでっちあげ、昔には人でもない魔物でもない妖怪と呼ばれる存在がいたとするため。そして月に一体分しか解読できない、と表向きにはすることになった。

 これはマヨイガを探せば和紙程度なら見つかるだろうし、内容は日本語で書けば解読必要となり丁度良い。


 またこれらをするための必要経費はドラゴンの買い取り金額から引く。


 ミミリナへの賠償請求のために売ったのだが高額になるらしく、ミミリナに損害の倍位渡しても七割余るらしい。

 妖怪に飲食は不要であり、余った金で使うとすればカラルで見たこともない道具を買うなどに限られる。ある程度残れば良いのでそれを承諾した。


 ぬえと風狸(ふうり)は大成果と言っても過言ではない結果を得た。またドラゴンの遺骸も勝手に売り払ったおかげでインパクトで霞むこともない。

 これほどの成果なら伝承審査についてもかなりの優遇を期待できる。

 上機嫌でマヨイガに帰って行った。




 大老はぬえ達が帰り、城壁の下でピンピンしていたミミリナに今日の事を誰にも話さぬように命じ、冒険者ギルドに戻ると口の堅い職員を叩き起こし城壁の外にあるドラゴンを回収に急いだ。

 門では大老の権力を用い、街中も夜なのでほぼ見つかることなく運ぶことが出来た。


 今はベテランの手によりドラゴンの解体作業に移っているが、残念ながら順調とは言い難い。

 皮膚が、鱗が堅過ぎて並の刃では傷も付けられない。傷口を少しずつ切り開くように解体中だ。


「あれが何か分かったか」


「大急ぎで調べておりますがそれと見つかった文献は二つ。

一つは最高位冒険者の手記で、カロ山脈へ調査に行った時にカロ山脈の魔物を容易に蹴散らし食べている姿を確認し、カロ山脈の主と書かれておりました。

もう一つは古い物になってしまいますが、国を一つ滅ぼしたドラゴンです。これに危機を覚えた国々が連合を組み討伐に挑みますが相打ちとなっております。軍は壊滅するも、怪我を負ったドラゴンは海の上で力尽き沈んだと」


「カロ山脈の主と、国滅ぼしのドラゴンか」


 ドラゴンにも種類がある。二足で翼をもつ飛龍(ワイバーン)、火山や凍土など極端な場所を好んで住み特徴的な色を持つ色龍(カラードラゴン)、凶暴にして獰猛、他と違い翼を持たないが地上では敵なしと言われる恐龍(レックス)

 このドラゴンはどの分類に入るのか、身体の巨大さで言えば地上の覇者と言われる恐龍(レックス)だろう、しかし四肢と翼を持つなら色龍(カラードラゴン)か、しかし特徴的な色は無く一般的な緑と茶の混じった色なら飛龍(ワイバーン)とも言える。

 どれが正しいのか、最近分類について悩むことが多いと大老は思っていると、大物専門のドワーフ解体班班長が血だらけで大老の下までやってきた。


「ありゃなんですか大老。今まで何体ものドラゴンを解体しましたがありゃ別格ですぜ。ドラゴン用の解体刀を使いましたが切れ込み入れるので精一杯ですよ。しかも信じられんもんまで出てきた」


 解体班班長が取り出したのは何かの毛。ドラゴンも白い毛が生えているが、目の前にある毛はかなり濃い茶色。


「解体中に分かったことなんだが、あのドラゴンは鈍器のようなもので殺されている。骨は砕けても皮膚に切れ目がねえんだ。で、致命傷と思われる胸のでかい穴にあったのがこの毛。絶対とは言い切れないがあのドラゴンは毛のある生き物に殴り殺されている。三体とも全部。しかも相手は一体。傷跡が同じだからな。で、大老は何を知っているんです。聞けば城壁のすぐ外にあったらしいですが」


「ドドンよ、お主の解体技術はカラルに於いて右に出る者はいないと思っておる。また口の固さも信用に値する。故に、今の事は誰にも言うな。お主を失うようなことはしたくない」


「了解です、解体にだけ集中します」


 何かを察したドドンは疑問に蓋をして解体場に戻った。


 大老はドドンの見解を聞きぬえの言葉の信憑性が増したことで、妖怪との約束を確実に叶えるため各方面への根回しについて頭を悩ますことになった。

 しかし諦めることは出来ない。何せ国を滅ぼせる魔物を軽く滅ぼせる存在が、すぐそこにいるのだから。


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