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第十一話  協力者

「お偉いさんだったん! すまないんよ」


 謝意など一切伝わってこない謝罪でぬえは大老の肩をバシバシ叩く。

 叩かれ続け迷惑そうにしながらも大老は、気にしなくて良い、と大人の対応を続け僅かにぬえから距離を取る。


「さて、事務的な話はこれで終わりとしよう。実はミミリナ君やクラー君から君らの話を聞いていてね。個人的にも興味があったんだ。話を聞いても良いかな。勿論、君の話が重要ならそちらを優先するが」


「ん? ああ、重要な話なんよ。丁度良いから一緒に聞いてくれるとありがたいんよ」


 遠慮も配慮もないぬえは大老の言葉に乗りここに来た理由を話す。

 妖怪と言う存在を広めてほしい、非情に簡単な相談だとぬえは思っていたが。


「人でも魔物でもない何か、か。その何かを、どう妖怪と見分ければ良い? そもそも、妖怪とは?」


 出だしで躓いた。大老の問いにぬえは答えることが出来なかった。

 これは妖怪である、そんな見分け方などない。そもそも考えたこともなかった。日本なら異形の存在、もしくは人の姿であれど長生きであり不可思議な力があれば大抵妖怪扱いになった。

 しかしこの世界には異形の存在、魔物がいる。長生きな種族もいれば、不可思議な力(魔法)を使う者もいる。

 更には妖怪とは何かと聞かれ、異世界の日本と言う所にいたと言って信じられるか。更には妖怪には元神だったり、神に近かったり言いにくい存在が多い。ハニヤマに相談せず言える内容ではない。

 

 ミミリナに妖怪と言ってすぐ認められた所為で、楽だと勘違いしていた。不特定多数に妖怪であるとはっきり伝えるのは想像以上に難しいことだった。


「何か方法ないん?」


「こちらに利にもならんと言うのにそんなことは」


 バンッ!

 断られる寸前、扉に何かが勢いよく当たった音が響いた。

 事態を見守っていたミミリナがすぐに扉を開けるとそこには猿のような狸のような化物死体が、ではなく風狸(ふうり)が死んでいた。

扉に激突した衝撃で死んだようだが、風が吹くとすぐに蘇った。

 蘇った風狸はぬえに音の速度で突撃をかますが、哀れ見事に掴まれる。


「早かったんよ。もうがしゃどくろと話しついたん? ……ああ、あれでかいから外に。大老、悪いんけど城壁まで来て欲しいんよ。どうもばれずに街中に入れるのは難しいらしいんよ」


 そもそもばれずにカラルの街に入れるのが問題なのだが、ぬえも風狸(ふうり)もあまり気には留めていない。ミミリナも深刻には考えていないが、大老だけは内心対策を考えていた。

 

「分かった。それで、どこに行けば?」


風狸(ふうり)、ゴー!」


 ぬえの言葉と同時に風の様に飛んでいく風狸(ふうり)。その後をぬえが走る。

 まさかの疾走に反応が遅れた二人を置いて行き、ぬえと風狸(ふうり)は目的地一直線。

 やや遅れて我に返った二人はすぐに追いかけた。獣人であるミミリナはともかく、老体とはいえ元は最高位冒険者。大老はミミリナ以上の速さでぬえの後を追った。

 そして驚くべき光景を目にし、足を止めた。

 ぬえが城壁を垂直に走っていた。一切変わらぬ速度で。

 

 妖怪とは何なのか、一つの答えのようなものを得て、二人は階段を探して城壁を上った。




「遅かったんよ。すでに二匹まで運び終わってるんよ」


 置いて行った側とは思えない台詞でミミリナと大老を迎えるぬえ。

 常識なんぞそもそも通用しない相手なのだと、先ほど痛感した二人は城壁の外に目を向ける。


「暗いな。どの辺りだ?」


「ちょっと待つんよ。鬼火で照ら……丁度来たんよ」


 ぬえの言葉通りカルの森の方から何か、異様な気配がゆっくりと近づいてくる。

 かなり巨大な存在、しかし足音すら立てずこちらに近づいてきている。

 何なのか、気配を探っても曖昧にしか分からなかった。


「がしゃどくろ、暗くて見えんから鬼火で照らしてほしいんよ」


「お前が出来るじゃろ。仕方ないのう」


 ボッ、と空中に一つ火の玉が生まれた。そして次々と火の玉が生まれ、そこに現れたのは。

 ドラゴンを背負った巨大な人骨。


骸骨兵(スケルトン)!」


 ミミリナは驚きのあまり城壁から落ち、大老も態度では動じなかったものの、内心思考がまとまらない動揺していた。

 骸骨兵(スケルトン)は人骨から生まれる。城壁以上に大きな骸骨兵(スケルトン)など聞いたこともなかった。


「透ける? ああ、そういう魔物がおるん? あれはがしゃどくろ。妖怪なんよ」


「ぬえ、置いておくぞ。わしは伝承について考え直さなければならんから帰る」


 ドラゴンの遺骸を適当に投げ置いて鬼火を周囲に残すと、がしゃどくろは暗闇へと消えていった。

 それを見送りつつドラゴンの遺骸を見て、常識を一度捨てて妖怪とどう付き合うか、カラルの街にとってどうするのが最善か考える。


「ぬえ君、あれは君たちが総出で倒したのかね?」


「え? あれはカロ山脈の魔物強さを調べるためにいっぽんだたらが単体で倒したんよ。そこそこ程度の強さだったらしいんよ。で、売れる?」


「ああ、売れる。売れるとも」


 カロ山脈の魔物。それもドラゴンとなればカルの森にすら降りてくることのない上位の魔物。カラルの街が総出でかかっても討伐すら怪しいというのに、目の前の妖怪はそこそこ程度の強さと言ってのける。


「そういえば、もし妖怪の存在を広めるのを手伝えなかったらどうするつもりかね?」


「その時は、個々でどうにかするしかないんよ。何するかは知らんけど」


「……もはや脅しだな。良いだろう! 大街カラルの冒険者ギルド、ギルドマスターとしてお前さんたちに協力しよう」


「ありがとうなんよ!」


 その日、妖怪は真の意味で協力者を得ることに成功した。


『だいだらぼっち』

 とてつもなく巨大な妖怪。山を作れるといえばどれほど巨大かが分かる。また色々な名前があり『でいだらぼっち』『だいらぼう』など様々。今は地獄で運搬の仕事をしている。親戚に海坊主がいる。


『銭神』

 妖怪なのかどうかは分からないが夢のような存在。衝撃を与えれば大量の銭がこぼれ落ちるという。まるでどこかの配管工のブロックのような存在。なお1upはしない模様。


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