某ラブコメ展開、毎朝パンを咥え走るのですが、幼馴染とぶつかり続け、もう3年も経ちます!
某ラブコメ展開、毎朝パンを咥え走るのですが、幼馴染とぶつかり続け、もう3年も経ちます!
「ハァ、ハァ、ハァ...」
初夏少しずつ蝉が鳴き始めた。
僕ー 朝霞優はそんな初夏、朝でも暑い日差しに照らされながら走っていた。
やばい、8時15分に間に合うか?
「ひほふひほふ〜(遅刻遅刻〜)。」
パンを咥えながら走っていると声が聞こえた。今だ!
僕は十字路をまっすぐに行こうと飛び出す。
すると横からパンを咥えた女子がぶつかった。
「「ふぐっ!」」
互いに尻餅をつく。
「何で今日も普通に来ちゃうかなあ。」
慣れからかぶつかったことに少しも反応せず立ち上がる女の子ー 足尾瀬奈は手にパンを持ち、僕を睨んでそう言った。
「そっちこそだろ。恥ずかしさを知らないのか?」
「知ってるし!恥ずかしいけど...負けるわけにはいかないし!
あんた良い加減に負けを認めなよ!私があんたに負けるなんてあり得ないんだから!まあ他にも理由はあるんだけど...。」
瀬奈は何故か僕の体を舐めるように見た。
「ん?なんだ?」
「まあ優くんには分からないだろうねっ!」
「?ま。いっか。んじゃ、さっさと学校行くぞ?」
「はい〜?そこはもっと聞くところじゃないかな?」
「ん?分からないだろうって言われたんだから聞いても分からないんじゃないか?」
「聞いたらわかるかもしれないでしょ?」
「そんなに話したいなら話して良いが?」
「優くんのバカっ!」
何故か顔を赤くした瀬奈が僕の顔をビンタした。彼女は黒髪のポニーテールをフリフリして学校の方向へ走っていく。
ビンタの衝撃で座り込んだ僕は
呆然と座り込んでいた。
ああ瀬奈どうしたんだろう。
朝の時間は瀬奈を思い出すことが日課になっている。あんな顔やこんな顔、小学6年生までのことを思い出しては何か胸がギュッとなる。
何て、椅子に座っていると
「キンコーンカンコーン」
鐘がなり終わり教室が静かになる。
しかし先生はなかなか来ない。これは朝のホームルームが遅くなるんじゃないか?
「皆おっは〜!」
いや、先生が丁度に来た!?
と思い、皆がドアの方向を見たが、いたのはこのクラスのばんちょー的存在、手賀未散だった。
先生かと思い驚いていた僕らは
あぁ〜と言う雰囲気になる。
未散と仲の良いカースト上位男子が未散に声をかける。
「未散はやっぱり先生の真似上手いな。」
「そうだろうそうだろう。皆ありがとよ!まだホームルームまで時間あるしここで〜!
一発ギャグ〜!!!」
「「「「いえ〜い!!!」」」」
すげえ陽キャのノリしてやがる
ガラガラガラ....
しかし、一発ギャグ大会は...惜しくも開催されず。入ってきた先生に
「あんた達!朝からふざけないの!」
と雰囲気を一蹴された。
「あちゃー。」
未散達は残念そうに席に戻る。
未散はこちらへ向かってきた。
未散の席は僕の隣だからだ。
「お!優くんおは〜!」
「ああ。おはよう。」
「相変わらず塩だね〜?」
「そりゃどうも。変わりなくやらせていただいてます。」
「ふむ。さすがユー。ノリがわかってらっしゃる〜。」
彼女はそのビジュの良さと面白さから、1週間前に来たばっかりの転入生だと言うのに
『学年1の美少女』と呼ばれている。
茶髪でショートで少しボーイッシュな感じの美少女なのだが可愛いと評判なのはその性格だ、すごく面白い。
距離も近いもんだから男子人気は半端なく、その優しさとビジュから女子人気も高いカーストトップスの人間だ。ここまで陰な俺にも話しかけるところあたり、もう完全に陽である。まあ席が隣なのも大きいのだろうが。
こんなの好きな人のいない陰な人だったらすぐおちるわ。
「はいじゃ。ちゃんと1時間目の用意しろよ。終わり!」
なんてぼーっとなにかと考えているうちに朝のホームルームはサクッとおわっていた。
ふむ。何か重要なことは言っていたのかな?
「ユーはまだあの変なゲームやってんの?」
うおっ...!僕は後ろから抱きついてきた未散に驚き、そして落ち着き振り払った。
「まあな。朝からやってきたよ。負ける気はしないね。」
未散はため息をついた。
「ユー良い加減にしなよ。そんなゲームやる意味ないでしょ〜。足尾さんと仲良くないんでしょ?何でやるの?」
何でそんな質問をするのかと問いたいもんだったが少し痛いとこをつかれた。
何でやるの...か......。
僕は何がしたいんだろう。
僕が1番幸せだった時を考えると
瀬奈と過ごした幼少期が思い浮かぶ。
そうか。僕は瀬奈とのつながりを消したくないのか。
小中高一貫校に中学から入って4年目。あの出来事の次の日の入学式から今日まで、クラスは一度も同じにならないし、幼馴染とも公言してないしで、ほぼ絡む機会はなく、どんどん疎遠になっていった。
そんな僕らが毎日会う瞬間。それがパンを咥えてぶつかる瞬間だ。喧嘩の際瀬奈が提案したゲームで、それが恥ずかしくなって逃げたら負けと言うゲームだ。僕らは意地を張り続けもう3年以上ゲームを続けている。
理由を探しているうち気づいた。
そうか。僕はつながりを消したくなかったのか。
自分の心を理解した僕は何だか悔しくなった。
何で僕は瀬奈が忘れられない?あんなに嫌われてるのに。どーして僕は瀬奈を求めているんだ。
忘れられない自分の弱さに悔しさを覚えた。
「分かったよユー。話したくないんだったらしょうがない!そろそろ1時間目終わるし用意しよ?」
あっ......
未散は一言も声を発さない僕に何かを察したのかさささっと隣の席に座り、1時間目の用意を始めた。ハッとした僕はそうだな、僕も用意しよう。とカバンをいじり出す。先生に目つけられるのは怖いからな。
「ユー。一緒にかえろ!」
「えぇ?」
放課後、未散に声をかけられた。あまり一緒に帰るのは嫌なんだがなんだかんだ最近はよく未散と帰っている。まあそのせいで予想通りクラス内に噂が広まり、恋人説が盛り上がっている。まあ彼女は帰国子女だから距離感がわからなくて抱きついてくると言うのも相まってかもしれない。まあ断ったら断ったで問題になるからどうしようもできないのだが。
「まあ。良いよ。」
「やった!ユー流石。優男だ優男!」
「まあな。」
カバンをさっと持って2人で教室を出る。
すると唐突に未散はこっちを見た
「ユーはさ。瀬奈のこと好きなの?」
「......は?」
「だって毎日ボディータッチでしょ?好きじゃないとやってらんないよ。」
「そんなことないだろ?」
「ええ?好きじゃないの〜?」
「そりゃそうだろ。好きなんかじゃないわ!」
確かに幼馴染に特別な感情は抱いているのかもしれない。でも、あんなことをする奴を好きになるとは思わない。
未散は俺の言葉を聞いて笑った。
「ふーん。ユーは瀬奈のこと好きじゃないんだ。」
未散はそう呟くと僕に聞こえないほどの小声で「じゃあ.....良いんだね。」といった。聞き取れはしなかったけれど、なんて言っていたのだろう?
その後はいつも通り明日の授業の話など他愛のない話をしていたらあっという間に家に着いた。
「んじゃ。またねー!」
「じゃあな。」
「ユー。何かあったら相談するんだよ?」
「分かった。」
未散は何故かそんなことを言うと手を振って帰っていった。
翌る日の朝。僕はいつも通りパンを咥えた。
「行ってきまーす!」
「「「いってらっしゃ〜い!!!」」」
家族3人は僕がパンを咥えて出ていくのには慣れており、自分達がご飯を食べる日も僕のだけパンを用意してくれている。うちの家族はそう言うのを面白がるタイプで、たまたまぶつかったところを見た姉のせいで皆理由を知って協力的なのだ。ほんっとよく分からない家族だ。
8時6分か......。
実際のところタイミングを合わせるのは至難の業である。だから大体早く来てタイミングを合わせようとするのだ。
あと5分ぐらいは大人しく待つか......。
5分経ったか...。
一応周りに誰もいないことを確認し、できるだけ大声で
「ひぃこくひぃこく〜(遅刻遅刻〜」
と叫ぶ。
のだが...
......あれ?
あっちから声が返ってこない。
いつもならこちらに合図として叫ぶはずなのに。
いや...おかしいけれどこれは騙しだ。タイミングがわかっていないと合わせにくい、だからこちらを困らせるための作戦だろう。
フーッと息を吐いて決心し、僕は走り出す
トットットッ...
聞こえるのは己の足音のみではあるが僕は信じたかった。
「いない......。」
左を見ればそこに瀬奈がいることを...。
何で来ないんだ?待っても待ってもそこに瀬奈は来ない。
来ないと言うことが分かるチャイムの音が鳴った瞬間。
瀬奈...。
僕はもう理解していた。僕は瀬奈が好きなんだ。好きなんだ...。
そう理解した時、自分を責める声が頭の中をガンと駆け巡った。
瀬奈のあの気遣いを...僕へのあの励ましの心を台無しにしたのは僕なんだ。
僕は本当は頭では分かっていたんだ、自分が悪かったことが。
思い出すあの日ー 小学校卒業式の後僕は瀬奈の口から出てくる言葉に驚き、泣きじゃくった。
「瀬奈は、1週間後の父の海外赴任についていく」瀬奈の両親の離婚話なんて頭には入ってきてはいなかった。瀬奈が海外へ行く。その事実だけが僕の頭を苦しめた。
ただ、その日から1週間経ったある日瀬奈はその目立つ茶髪を黒髪にし、僕の元を訪ねてきた。僕は知らずに玄関を開けた。そこで告げられた。
「ドッキリだよ。私は海外には行かない。」
と言う言葉。その言葉は僕の頭に抑えることのできない火を着火した。
「もう帰ってくれ。整理がしたい。」
そう、喜びもクソもない声で瀬名に言ったのを覚えている。何故か頭は冷静で、怒れ怒れと言う心に従うことなくそう言ったのだ。
その時の瀬奈の顔は忘れられないほどの悲しい顔だった。それを機に僕等はこうも疎遠になったのだ。
確かにきっかけは瀬奈が悪かったとしても、瀬奈はその次の日から遊びに誘ってくれたり、話したり、何かと気まずい空間を柔らげてくれた。そして今俺の心の救いとなっているこの毎朝の時間を提案してくれたのだ。それに対し僕はどう対応しただろう。
考えれば考えるほど僕が悪いと感じる。もしかしたら瀬奈は僕の為に日本に残ってくれたのかもしれない。それなのに僕は何て事をしているんだ。
自分を、自分を、自分を責めた。素直になれずあんな事をして、そりゃあ見放されて当たり前だ。
そんな時後ろから声が聞こえた。
「ユー。大丈夫?」
後ろを見ると未散がいた。僕はこのまま誰かと話すと自分の感情をコントロールすることができないことを悟りどう逃げようかと思い、後ずさる。
そうすると未散は抱きついてくる。
「よしよし、優くん。頑張ったね。偉い偉い。」
道路のど真ん中彼女は僕の頭をよしよしとし、膝枕をする。
僕は初めての体験に驚愕し、先程までの悔しさなどどこかへと消えていった。
柔らかい柔らかい柔らかい柔らかい...
ただ、その未散らしくないお姉さんな感じに何か昔の瀬奈の姿が見え少し身震いをする。
未散はそれに気付いたのか頭を強くよしよしする。
「優くん。私が悪いから自分を責めないで?」
は?
何でお前が悪いんだ?
未散の唐突な言葉に困惑し、怒りが湧き上がってくる。
僕は彼女の優しさと知りながらも苛立ちが込み上げ抑えられなかった。
「何だよ。俺の辛さも知らないで『私が悪い』?ふざけるな!お前は何様なんだよ。」
口に出してからアッと思ったがもう遅い。未散の顔を伺うと意外にも決心した様な顔をしていた。
「何様か教えてあげる。私の家に行こ!話すから。」
口調はいつも通りなのに何か普段より力強さを感じるその言葉と、未散の暖かい体は僕を、放すことはなかった。
「ここだよ。」
無言で歩いて徒歩5分。着いたのは白色の一軒家。未散は中へと入っていく。
「ただいま〜。ちなみに今家誰もいないから。」
「お邪魔します。」
2人きりか。とか喜べるほど僕の気持ちは明るくはなかった。
玄関のドアを開け未散に案内され未散の部屋に入る。何か未散らしさを感じる部屋だった。
「ちょっと飲み物用意してくる。」
本当は学校に行かなければいけないことなど忘れた僕は初めてくる女子の部屋と言う物にはしっかり興味を示していた。未散の部屋はピンクが基調。ボーイッシュな感じだが何か未散らしい部屋である。
ん......え.......?
次の瞬間目に入った瀬奈と僕のツーショット。明らかにこの部屋にあるべきでない物に驚きを隠すことができなかった。
「は?」
............
その声は大きかったのか知らないが未散は次の瞬間部屋へと入ってきた。
「写真見たかな?」
「見たけどどう言うことだ?瀬名からもらったのか?」
「違う。これは優くんと私の写真。それで私が持ってた。」
「私の写真ってどう言うこと...?」
僕の頭は未散が何を言っているか理解していなかった。
「これは瀬奈と名乗っていた私の写真。私達双子なの。」
「双子......。」
僕は現実を受け止められず絶句する。
どう言うことだ?
頭は働いていなかった。
この写真はあの日の1週間前。まだ仲が良かった頃に撮った写真だ。
もし、未散が本当のことを言っているとしたら?3年前のあの日僕は未散と写真を撮ったと言うことになるのか?は?
「えっと......?僕は未散と昔会ってるってことかな?」
「そうだよ。ゆうくん...?」
急に顔を近づけてきた未散に驚き、反射的に手でガードする。未散は大人しく引き下がるとニヤッと笑った。
「優くん!変わらないねえ?」
その顔は仲が良かった頃の瀬奈を思い出してしまう様な。
最高に可愛い笑顔だった。
次の日ー
僕はぼーっとしながら登校していた。
明らかに様子のおかしい僕に家族はズル休みしたことを怒らずに相談に乗ろうとしてくれた。今日は僕が否定しなかったからか隣に姉ちゃんがいる。
「なあなあ優よ。いっつもぶつかってる女の子はいずこに?」
「姉ちゃん?その話し方何なの?」
「さあ?そんな事は良いじゃないか優よ。それよりいずこだいずこだ〜?」
姉ちゃんー朝霞鴫紫は変わった人だ。相当な気分屋でその時々アウトラインが変わる。そんな姉ちゃんな癖に学校では生徒会長で文武両道、容姿端麗な完璧な人間である。
「今日は良いんだ。」
「ええ?何で、何でじゃ〜。いっつもはスキップでもするかの様に行くと言うのに。」
「まあほっといてくれ。」
なかなか個人的に強めにいったつもりだったのだが鴫紫は何も思わないのかふーんと呟いて前を向いた。
「あ!ほら!あの子じゃない?」
そこには何故だか知らないが未散がいた。
「よっす優くん!おはよ!後は...お姉様ですかね?足尾未散。もとい手賀未散と申します。どうぞよろしく。」
「おはよ。」
「こんにちは!未散ちゃんって言うんだ。うちの優がお世話になっております。」
「誠に誠にお世話させていただいております〜。」
「何の会話だ?てか未散どうしたんだ?」
「いや〜優くんが私達のこと分かったかな?って。」
「ふむふむ。優。何のことだね?」
姉は僕とは違ってコミュ強なタイプで、空気を和ませるのが上手いなと感じる。
「.......」
僕達の話を説明すると鴫紫姉はほおっと頷き目をキラキラさせる。
「良いね良いね。青春だね〜。我が弟よ、未散殿との初接吻はいつなのだい?」
「......」
「その顔。やっぱり我が弟だ!」
この姉は本当にこう言うところあるから少し困るんだよな。ちょっとM的なところがある。
「姉様。私たちの初キスはなんと3歳の頃!優くんが鬼ごっこの時急に私を捕まえてアゴをクイっと!そして、優くんは顔を少しづつ近づけ......イテテ!」
「作り話をするな!俺らはそんな関係じゃない。」
「ふーん?優くん意外と鈍感?頑張れ未散ちゃん!」
「確かに弟さんにはなかなか困りますね。」
「何がだよ!」
「それより未散ちゃん。あなたは帰国子女なんだよね?」
「はい。そうですけど?」
「未散ちゃんは小学校6年の時に瀬奈を名乗り写真を撮っているんでしょ?」
「そうですね。」
「てことは小6までこっちにいた瀬奈ちゃんは海外に行ったってことで...あってる?」
頭が混乱していた僕は姉ちゃんの言葉にハッとした。そう言うことか。僕の中で糸が繋がっていく。瀬奈は未散で小6の時に海外に行ったのか、確かにそこで髪色も性格も変わった。いや、そういえばあれが2回目だった様な...
「小3までは瀬奈だったのか?」
未散は驚いた様子で言葉を返してきた。
「正解!!ようわかったな優くん。」
「ふーん?なかなか拗らせてるようじゃん。」
「いや面白そうに言うなよ!」
「どうよどうよ優くん?驚いたかなあ〜?」
「あんま実感わかんなあ。」
僕は何故かその事実に実感が湧かずあまり驚かなかった。
「てことはだけどさ...。」
未散が言いにくそうに声を発す。
「優くん。この前言ってたこと覚えてる?あれは私のせいなんだよ。君を変えたのは私なの。」
「何の話だ......」
未散は急に申し訳無さそうに謝る僕はいきなりことに驚いたが.....理解した。
ああ。そうか。そうだったのか。
目の前に広がる青空は僕の一つ一つの感情に赤、黒、青...と色を変えていっている。
そのうち僕は怒りが込み上げたが...
グッと抑える。
自分を叱りつけたかった。泣き叫びたかった。ただ、状況を察し先に学校に行ったのか、僕の隣にいた人は消え、真正面に向かう瀬奈と向き合わなければいけないことはよくわかっていた。
そうか。僕は逃げていたんだ。逃げたかったんだ。僕の中の天使はまたあの時と同じように微笑みを浮かべる。
僕はその微笑みに従うように走り、学校へ向かった。
優くんが行ってしまった。その事実に寂しさを感じるとともに少し安心した。
私はフラれた方がいい。
私は瀬奈の応援をしなければならない。
あの日私が別れが辛くて海外へ行くとか本当のことを言わなければこんな事にはならなかった筈。
そう。そう......
何度も何度も自分に言い聞かせても勝手に涙は溢れるばかりだった。
彼に何を言われたわけでもないのに何故か涙は溢れて止まらなかった。
私が真実を告げた時の彼の顔。私は真実を告げて楽になろうと思った、それで彼に大きな負担を与えたのだ。
そのとき、ずっと彼の中に溢れていた瀬名に対する怒りの感情がだんだんと色を変え、私に対する感情がどんどんと暗く染まっていくのが見えた。見えたんだ...
私は負けたんだ。最低な女だ。あきらめろ。
無理だ無理だと事実を絡め自分に言い聞かせる。でも涙は溢れた。なんでだ。なんでなんだ。
あっ...........
唐突に浮かんだ優くんの顔。
その時私はこの恋が終わることのないものであると知ったのだ。
走った。ただ走った。
奥に見える白い建物は僕を迎えているようには見えなかった。
中にいて鬼の形相で構えているであろう人が見えるように想像できたからである。
昨日は彼女は風邪をひいていたらしくいつものところに来れなかったそうで、それを未散が伝える予定だったそうだが未散が堪えられなくなって昨日あの状況になったのだと、未散から聞いた。
ということは僕は「昨日の驚きからそのまま学校に来てしまった。」という言い訳もできないもんで、怒られるのは目に見えていたのである。ただ、未散から逃げてきた手前僕はやらなければならない。未散と向き合うことを強要された時、僕はそれよりも瀬奈と向き合うべきで合った事に気づいた。僕は小学3年生の頃瀬奈にかなり頼っていて、それを不安に思った瀬奈は未散に自分の代わりを頼んだのだと聞いた。僕は瀬奈に迷惑をかけたのにも関わらず、あんな態度をとってしまったのだ。今すぐにでも謝らなければならない。
学校につき瀬奈のいるクラスへと向かった。ただ、考えても考えても言葉はまとまらない。何を伝えれば良いのかどうすれば良いのか分からなかった。
僕は走ることしか考えられなくて吸い込まれるかのように1の3に飛び込んだ。
「瀬奈!!」
僕の方にクラス中から視線が向く。
「...優くん?」
彼女は怒っているようでは合ったが僕の様子を不思議に思ったのか少し困った顔をした。
「ちょっと来てくれるか?」
僕が発した声にクラスの雰囲気が甘くなる気がした。
「愛の告白?愛の告白?」
「隣のクラスの朝霞だっけか?確か幼馴染のやつだよな?」
そんな声を無視し僕は瀬奈の手を引っ張り、校舎4階端多目的室へ引っ張り込んだ。
「何?優くん。」
瀬奈は心配そうにこっちを見ていた。あまりにも僕の様子がおかしかったのだろう。
「未散から話を聞いたんだ。」
そんな目が僕の一言で一気に色を変え、少し怒りが見えるけれど何とか冷静になろうとしている目に変わった。僕はその時ことの重大さを身に沁みて感じたのである。
「そっか...聞いちゃったんだね。」
僕がひと通り何を聞いたか説明すると少し寂しげに目を伏せた。
「瀬奈。今までごめんな。」
僕がいうと瀬奈はさらに寂しそうな顔をした。
「謝られたくなかったんだけどな...。君を傷つけたのは未散じゃないの?それが原因なんだから未散が悪いじゃない。」
「それでも僕は非を認めるべきだよ。」
「それなら謝るよりこれからの行動で示して!」
「......」
「昔みたいに遊んでよ!なんで今日分かってたのに私のところに来なかったの?もしかして未散と話してたの?」
「......。」
「何にも言わないんだね。良いよ、私は甘いから許す。次はないからね。」
瀬奈の言葉は普段の瀬奈からは想像できない怒りが見えて、震える。
去って行くその後ろ姿を見て僕はやっと...
彼女の中に7年前の彼女を見た。
翌朝僕はいつも通りパンを咥えた。
「いってきまーす!」
元気よく家を飛び出す。
いつもの曲がり角に着き時を待っていると
「ひほふひほふ〜(遅刻遅刻〜)。」
「ひほふひほふ〜(遅刻遅刻〜)。」
2人の声が聞こえた。
「ひほふひほふ〜(遅刻遅刻〜)。」
僕は元気に返す。
1.2.3...
僕は十字路へと飛び出した




