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怪物

掲載日:2026/02/26

この頃とにかく自分が揺らぐ。インスタの親友が物語っている。いや、親しくない。でもなんとなく、外すと悪いから、惰性で入れっぱの友達bが大量発生してしまう。

「進路、もうそろそろちゃんと決めなさい。」

「うん」

正直それどころではない。高校とか、社会人になってからとか、どうだっていい。これは僕だけなのか。もしくは、大人になるとそのことすら忘れてしまうのか。

「ほら生返事、分かったなら机に向かって勉強しなさい」

「…分かってる」

いや全然?分かってない。分かるわけないだろ。よっぽど利口な子供時代だったんですね。

「ほら高木、緩めず走りきれ」

馬鹿じゃねえの。緩めてねえよ。吐きそうなほど辛いからペースが落ちたんだよ。

そうそれ、他人というのは、ここまで分かち合えないものなのか。同じ人間なのに、しかも、人と分かち合えないと考える人は他にもいるのに、じゃあなにがそこまで分かち合えなくするのか。僕には分からない。し、この先分かるようになる算段もない。え、じゃあなに、このまま孤独に死ぬの?なら、え、生きていけるかな。

人類が二足歩行を初めて、恐らく核戦争で滅ぶその時まで、実は、人類はまるで数を増やさなかったという。それはないか。

「山田と市ケ谷、付き合ったって。ドンマイ、高木。」

「は…いや、別に、気にしてねえし…」

「はは、怒るなって。あ、岩崎くん、え、今日?今日は…まあ空いてるっちゃ空いてるけど…」

そう言って、すぐ西本は何処かに消えた。あれー、あいつが失恋したときは僕、ラーメン奢って、徹夜で電話して励ましたのにー。

あいつの調子が悪い時以外、僕は一人だ。逆に言うと、調子が悪いあいつを慰めるのは、どんな時だって僕だ。そお、でもそんなもんだよな。人って結構、薄情だよ。授業聞くだけじゃ当たり前に半分取れない数学も、テストに向けて自習するからいい点が取れる。けど道徳にテストはないからなあ。

夕日に照らされて、みっともなく影が延びる。その点、太陽が出てるときは、その丈にあった、公平な量の影が延びて、おお、こっちの方が道徳?いやでも、あいつにとって僕の丈がそれほどでもなくて、人気者のご機嫌取りがそれに勝っている可能性もあるから、そうでもないか。

なのに、お日様の光が出す暖かさが好きなんだ。もう一度触れたいけど、怖いし、何よりもうそんなに要らないかもしれないから、ほんとは誰も入れたくない。親しくない。


「こんにちは、鹿児島から転校してきました難利光です。こうって読んでください。あと、東京のことはよく分からないので、いっぱい教えてください。」

彼女が話終えて、硝子だ、と思った。目を瞑りたくなるほと眩しい。反射も屈折もせず、自分が受け取るはずだった光を僕らに共有して、影と暖かさを届けてる。

「なんりさんは岩崎くんの隣に座ってください、ああ、一番右列の後ろから二番目ね。」

「…よろしくね」

岩崎は慣れてる。

「じゃあ次のところを、なんりさん」

「えと、ごめんなさいまだ…」

「せんせー、山田が読みたいらしいでーす」「は?いってねえよ!?」

「おーそうかー、じゃあ山田」

その後の授業、岩崎のたった一瞬で、山田に注目が向く。誰も損することなく(山田以外)、教科書がまだ配られてない難利さんは顔を赤らめて彼にお礼を言った。岩崎は慣れてる。

そして岩崎自体まあ、いい奴、だからすぐに難利さんは岩崎に色目を遣うようになった。

そして、まもなく、難利さんは不登校になった。

僕は友達という友達がいなくて、大分遅れて、彼女が首をつって死んだことを知った。

酷いいじめにあっていたそうだ。だって、岩崎は浅田と付き合ってるからね。そしてその浅田は、人を殺せるほどの人脈をもってる。

僕は悲しくなった。難利さんのこともあるけど、それ以上に、うん、怒っていいのは、殺していいのは浅田だけだろ、それ以外の取り巻きは、西本は、何。難利さんの死が学年中に知れ渡ったころ、そんな事を言って浅田の取り巻きを糾弾するやからがうじのようにわいてきたからだ。そして同じ過ちを繰り返そうとした。先生にそれはすんでのところで止められて表面は事なきを得たけど、多分そいつらは何処に生きてもそうなんだろうな。

「なあ、高木、なんで助けてくれなかったんだよ、俺、辛かったのに。」

「ごめん、西本、僕も、気付けなくて」

「言うなら、難利さんが、勝手に死んだんじゃないか。僕は何もしてない、俺が殺したんじゃあないよ!」

「そうだね。」

『私もそう思う。』

『さすがにやりすぎたよな、俺らも』

『ごめんな』

『ごめんな。ごめんなーーーーー

「俺も、そうおもうよ西本、ごめんな。」

「ううん、高木、いいよ。」


世界でどんな事が起きてようと、それを写してるはずの衛星写真をルーズでみると、何故か景色が変わっていないように見える。それはおかしな事のようで、結構この世界の的を得ていて、頭のいい人がわざとそうしてるのかもしれないと思った。

それから、西本は少し大人しくなった。周りも少しだけ、西本をいい意味でも悪い意味でも腫れ物のように扱った。多分もう僕も、西本に何かを奢ることはない。

辺りはすっかり寒くなったのに、僕は夏のような陽気が未だに嫌いだ。いつもなら暑い日に食べるかき氷や、清み渡る冷房の香りがなかなかに恋しくなるのに、今年はそうでもないらしい。というか、匂いが全部、学校で配られるチラシの匂いっぽく感じる。悪い匂いではないし、何か嗅ぎたくなる独特の中毒性があるけど、別にそれに意味は感じない。

教室の窓が結露して、余計に光が入らなくて、もしかして、どの建物に入ってもこれか、と、それなら別にいっかと、最後の進路希望調査の紙は今まで書いてた文字を全部消して、白紙で出した。

その日最後に、思いっきり地面を踏みしめて、ぶっ倒れるまで走って、乾燥して痛む喉を無理に震わせて、ばかどもみんなしんじまえって叫んだ。

割と、それだけ来年もやりたいと思ってしまった。唯一、まあ、未練である。



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