■ニーナの戦い
ダンッ
ニーナは隠し持っていたナイフを、ハイジャック犯たちの背後に投げつける。
突き刺さる音に驚き、全員がそちらを睨む。
視線を逸した隙をついて、ニーナは私を抱え客室に向かう。
向かうは私達の部屋、最上階デッキ中央だ。
途中、ニーナは華麗な足さばきでハイジャック犯たちを蹴り倒す。
後頭部、顔側面、みぞおち。各所に一撃決め、そのままノックアウトする。
長いスカートから見える、長いしなやか足。いわゆる美脚を惜しげもなく見せつけるように蹴りが冴え渡る。
私を部屋の前に静かに下ろした。
「お部屋でしばらくお待ちくださいませ」
私が頷くより前に、ニーナは甲板に向かっていた。
部屋に入ろうとした瞬間、手前の客室の扉が開き、私はまんまとハイジャック犯に捕まるのだった。
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そんなことは露知らず、ニーナは甲板に急ぐ。
甲板につくと、人質たちが見える。後ろ手に縛られ、喋れないように口を塞がれていた。
ハイジャック犯の鎮圧。これを成し遂げなければ、アナスタシアの安全は確保できない。
そう思ったニーナは、人質相手に油断しているハイジャック犯から、ひとり、またひとりとしずかに討ち取っていく。
あらかた片付けたところで、ニーナは甲板中央に居たボスらしき人物に対峙する。
「なんだぁ、てめぇ」
ボスは凄み、剣を前に突き出す。
ニーナの本気。オーソドックスな構えながら、後ろに重心を置き、利き手を後ろに下げる。
ゆっくりとした動作だったが、それはむしろ優雅な所作と呼ぶべきであろう。
ビュン ビュン
剣が空を斬る。
ボスの剣戟は、並の人間であれば太刀打ちできないレベルであったが、ニーナはさも当然と、まさに紙一重で躱す。
業を煮やしたボスは、後ろに飛び退き、秘密兵器である風の魔術を繰り出していた。
両手で印を組み、目を閉じて願いを呟く。
精霊語で、精霊に呼び掛けて願いを聞いてもらうのだ。
事前に交わした盟約により、精霊が手を貸してくれる、という寸法だ。
術は成功すると、陣が足元に浮かぶ。
ズババババババッ
かまいたちは甲板の床、柱、木箱、なんでもかんでも切り裂いた。ニーナ以外は。
ニーナは、スカートに切れ込みが入り、縞模様の可愛い肌着が見えることも憚らず、全ての刃を避けきった。
傷ひとつないニーナを見て、ボスは唖然とする。
そこに、アナスタシアを逆さまに、片手で吊るし上げた大男が割り込んできたのであった。




