■旅のはじまり
飛竜船は、まさに豪華客船で、客層は貴族や豪商が主。一般市民などが乗り合わせることはない。
3カ所のダイニングがあり、ディナータイムは、フルコースでも一品のみでも上質な料理から好みのもの食べられるという。
また、ビュッフェレストランもあり、カジュアルで雰囲気は明るい。異国の料理も満喫できる、というのが謳い文句。
子供が飲むことはないが、ワインも豊富なんだとか。
子供向きではないが、カジノもあるという。一度でいいから、その雰囲気を味わってみたい。
また、楽団による演奏や合唱、ちょっとしたパーティなど、色々な催しが開催されていた。
移動速度が速いが、それでも帝国まで数週間かかる。
だが、私アナスタシアは、なによりも広大に広がる空、雲のさらに上を飛ぶ情景に、心躍った。
この胸の高鳴りは、私に溶けた佐藤亮二の、長年の憧れが重なったものなのだろう。
亮二には隠れた憧れがあった。パイロット。飛行機のパイロットになって自由に空を羽ばたくこと。
妻や娘たちにさえ知られていない、その憧れ。それが飛竜船で叶ったのだろう。
私とニーナは、船の最上階デッキ中央に位置する部屋に案内された。最上位の客室だという。
ニーナはテキパキと荷を解くと、キョロキョロと見て回る私に、お茶を用意してくれた。
いつもと同じティータイム。自然と笑みが溢れ、ニーナと顔を見合わす。
「船のものだろうけど、良いお茶のようね」
お茶の良し悪しに満足げに頷く私を見て、そっとお茶請けを差し出すニーナ。
「お菓子も最上級のようですよ、お嬢様」
優雅に飛ぶ飛竜船は揺れもせず、静かに進む。
お腹も満たされ、緊張がほぐれたのか、いつの間にか寝ていたらしい。
ハッと目を開けると、ニーナがそれに気づく。
「そろそろお夕食のお時間です。」
二人でダイニングに向かうのであった。




