■破壊司令
馬車中央の特等席に座らせてもらい、ラインハルト皇太子殿下と向き合う。
カーテンを締めると、ちょっとした密室になる。
ガタンゴトンと揺られながら、優雅に馬車は進む。
ユリアンについて話を聞くと、彼は恩赦によって、殿下直々の密偵になったらしい。
本人同意のもと、裏切ることのできない呪縛を施したのだとか。なにそれ、ちょっと怖い。
飛竜船での事件の話になると、殿下は謝りっぱなしになった。
それはそうだ。可憐な乙女を危険な目に合わせたのだ。それなりの誠意を見せなくちゃ駄目よね。
ハイジャック事件のあと私は、犯人たちに奉仕活動をするよう指示した。
飛竜船が帝国に付くまでの間、乗客に見える場所で絶え間なく奉仕させたが、なかなかの働きっぷりだった。
もちろん、ニーナ(というか私)がそれとなく監視しており、彼らは心を入れ替えた、というアピールも兼ねていた。
25名、全員星印五つよ。それはそれは素直に従ってくれた。
殿下が直々に差し出す茶菓子を頬張りながら、他愛のない話が弾む。
ドオォーンッ
大きな衝撃のあと、馬車は急停車した。
私は前に押し出され、思わず殿下の胸に抱きつく。
華奢だが、引き締まっていることを肌で感じると、途端に熱を帯びるのを感じた。
殿下が私を抱きしめている。顔を見上げると、殿下の顔は真っ赤だった。
つい、その変化を嗤う佐藤亮二を感じたが、すぐさま素に戻る。
「お嬢様、身を低く。」
ニーナが殿下から私を引き剥がし、もとの位置に戻る。
馬車の、外開きの扉が開こうか、という瞬間。殿下の蹴りは扉もろとも、扉の先を蹴り飛ばす。
襲撃だった。白昼堂々、皇太子殿下の乗った馬車への襲撃。
外を見渡せば、近衛騎士が各所で切り合っている。
空港は帝都から少し離れた場所に位置した、平野に建設されていた。
殿下は蹴り飛ばした相手の剣を奪うと、馬車に近づけさせまいと構えを取るのであった。




