失意
破壊の痕が残る街を、四人は歩く。
エイトの視線は真っ直ぐに白衣の男を射抜く。あれが元凶、プラトーのドクターだ。
その隣をゼロが歩く。ゼロは周囲を見渡しながら、活気の失った街を見てつまらなそうにしている。
その傍ら、比較的平らな道を選び、車椅子は進んでいく。そこに座っている鈴城緑は、舞い踊る破片の群れを見て苦々しい表情を浮かべている。
その車椅子を押しながら、狗月光は逃げ惑う人々を見ていた。その表情は苦しげだったが、頭を振って正面を見据える。
白衣の男、プラトーのドクターと正対するように、四人は立ち止まる。
「初めて見る顔だ。自己紹介は必要か?」
エイトはそう問い掛ける。白衣の男は首を横に振る。
「いや。こちらは名乗る必要がないし、君達のことは知っている。《アーマード》タイプと」
白衣の男は緑を見る。
「《アールディア》タイプ。それぞれ別の方向性で完成した、究極のレリクスだ」
そこまで言うと、白衣の男は周囲を見渡す。
「二騎だけなのか? 片羽唯と、氷のレリクスがいないようだが」
エイトはちらと緑を見る。緑は頷き、口を開く。
「別件です。貴方の企みは、私達が阻止します」
緑の簡潔な宣言を前に、白衣の男は考える素振りを見せる。
「そうか……」
白衣の男は、あくまで無表情を貫いていたが。言葉の端に、残念だという感情が滲み出ている。
そして、それを補足するように男は小さく首を横に振る。
「片羽唯も、血と氷のレリクスもいないのか。これでは……《ディメンシャード》が勝ってしまうかも知れないな」
強がりや落胆ではない。ただ事実だけを口にしている。そんな様相だ。
「そこまで容易いつもりはないが」
故に、エイトもまた事実だけを返す。その右手には、左義手型アームドレイターが握られている。
「自信があるって事ですね。わざわざ現場に来てますし」
緑は冷静に分析しながら、膝の上に右義足型レッグドネイターを置く。
白衣の男は一歩二歩と下がる。逃げる為ではない。主役に場所を譲る為だ。
破片の群れが、大きくうねりながら地面へと積み重なる。
それを見据えながら、エイトは左義手型アームドレイターを左肩に装着し、緑は右義足型レッグドネイターを右下肢に装着した。
『Connected Arm』
『Connected Leg』
エイトの隣にいたゼロが、一歩前に踏み出して振り返る。エイトは初弾装填を済ませたアームドレイターの手を開き、ゼロへと差し出す。
その手の平に、ゼロは自身の手を添える。少女の姿は燐光となり、アームドレイターへと溶けていった。
『ArchiRelics......《Armordraw》』
緑は義足の力を借りて立ち上がり、その隣へ光が並び立つ。二人は同時に蹴りを放ち、緑の義足と光の足が交差した瞬間、光の姿は消えレッグドネイターに燐光が宿る。
『ArchiRelics......《S》』
エイトは左義手を眼前で握りしめ、緑は蹴りの勢いのまま回転、相手に背を見せるようにして義足の爪先を地面に突き立てる。
「フェイズ……オン」
「フェイズ、スタート!」
エイトは左義手を左背面に振り抜きながら、緑は爪先で地面を叩きながら始動キーを唱える。
『PhaseOn......FoldingUp......』
『PhaseStart.....Sealeding,Right......』
エイトは左義手を中心に外装を展開し、緑は右義足を中心に外装を展開する。数秒も掛からずに、二人はレリクスを身に纏う。
白の重装は左義手を眼前に戻すようにして反動を殺し、翡翠の戦士は三基のサテライトシールドを跳躍して潜り、着地する。
『......《Armordraw》Relics』
『......《Sdear》Relics』
エイトとゼロは《アーマードロウ》レリクスとなり、一歩踏み出す。
緑と光は《シールディア》レリクスとなり、その膝にサテライトシールドを格納する。
そんな二騎の前に、破片の群れは集約していく。
あっという間に、それは人の形へと至る。のっぺりとした銀色の外装に、七色に発光する無数のエネルギーライン……破片は集い、《ディメンシャード》レリクスとなった。
「……挑戦を始めよう」
白衣の男が呟く。それが契機となり、二騎と一騎、三騎のレリクスは眼前の敵へと飛び込んだ。




