破片は踊る
男の目の前にあるカプセルは、先程まで空だった。異変が起きたのは数秒前、警報が鳴り響いたのはそのすぐ後だ。
プラトー施設内、男の私室兼研究室であるそこは、普段と違い酷く散らかっていた。それもそうだろう。部屋の中央にあったカプセルには、《ディメンシャード》レリクスが鎮座していた。完成には程遠く、外装しか存在していなかったが。突如として動き出し、周囲の物を破壊しながらどこかへ消えていった。
「移動に足を使った様子はない。次元を越えているな」
平坦な男の声が、その状況を読み解いていく。けたたましい警報を止めながら、カプセルの中を覗き込む。
先程まで空だったそれに、一つ二つと破片が集っている。
「戦闘し、砕かれ、それでも破片は残った。そして、ここから消えた時と同じように。破片は次元を越え、ここへ帰還した」
男は小さく首を横に振る。
「勝手なものだ。制御されるつもりはないが、協力はしろとでも言いたげだな」
そう言っている間にも破片は増えていく。破壊されなかった物もあれば、今この瞬間に増殖している物もあるだろう。その在り方こそ、男が設計した成果物……次元を超越した破片だ。
しかし、これは完成品ではない。とある次元理論を、狭義で解釈し再現したに過ぎない。
「理論提唱には遠い。加えて、再現性があまりにも低い。となれば」
男はカプセルに備え付けてある端末を操作し、破片の増殖と再構成を促進させる。
「これはこれで完成品として、活躍して貰うしかないか。君が何なのか、どんな存在なのかは分からないが」
男は破片達を一瞥し、僅かに笑みを浮かべる。
「戦いを挑み、勝ちたいのだろう? あのレリクスに」
血と氷を纏ったレリクス……《ディメンシャード》を打ち砕いた存在だ。
「力を貸そう。幸いここは、天才には事欠かない」
言葉を交わした訳ではない。だが、男と破片……《ディメンシャード》は意思を通わせ、共闘を決めた。




