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ノノメ  作者: 風風
村を出て、冒険の始まり
1/15

プロローグ ~ 俺の夢と、あの日の約束 ~

「待てコラァァァァァ!金払えぇぇぇぇッ!」


村の食堂の厨房から、怒鳴り声が響き渡る。

その声の主は、がっしりした体格の大男、サブロー。

そして、その男の怒りの矛先は――


「ひゃっはー!タダ飯最高ーっ!」


逃げるのは、十八歳のくせ毛少年、黄泉神トウマである。


「待てコラ!いつもいつもツケで済むと思うなよ!」


「いいじゃんサブローさん!俺、世界一の祓い屋になったらまとめて払うって約束するからさ!」


「お前なんか、虫一匹も祓えねぇよ、このアホがぁぁぁ!」


怒りのサブローが包丁片手に追いかける中、村のあちこちを駆け抜けるトウマ。


「やっべぇ……あの人、今日ガチで怒ってる!」


慌てて物陰に隠れ、息を潜める。

その瞬間――不意に、幼い頃の記憶が蘇った。


***


薄暗い森の中、小さなトウマが、仮面をつけた男の隣に座っていた。

その男には顔の表情がなく、ただ静かに空を見上げている。


「ねぇ、センセー。俺、どうやったら強い祓い屋になれるの?」


そう尋ねる幼いトウマに、仮面の男は少しだけ考え込んだ。


「んー……そうだな。もっと鍛えた方がいいんじゃないか?」


「ふん!じゃあ俺、絶対センセーより強くなってやるもん!」


「ハッ、寝言は寝て言え。」


そんな他愛もないやり取り。

けれど、トウマにとっては大切な思い出だった。


***


「……消えちまってさ、センセー。今どこにいるのか知らねーけど……俺、証明してやるからな。」


そう呟いた瞬間――


「みーつけたぁぁぁ!」


「ひぇっ!」


隠れていたトウマの背後から、再びサブローの怒号が響く。


「あ、どーも。」


「『どーも』じゃねぇ!金払えぇぇぇ!」


ヤバい、とトウマはポケットを探るフリをする。


「あー……えーと……ほら、今出すからさ!」


と、見せかけた次の瞬間!


ガッ!


トウマの足が素早くサブローの股間にクリティカルヒット。


「ぐふっ……!?」


「約束するってば!今度絶対払う!」


そう叫びながら、再び村の路地裏へと駆け抜けるトウマの姿。


「このクソガキがぁぁぁぁぁ!」


サブローの怒号が、今日も村に響き渡るのだった。

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