表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/59

嫉妬のかけら 3

Scene:灰色の谷 ― 強さの影


谷の奥へと進むにつれて、足元の土は乾ききり、風すらも鳴りを潜めていった。


「……さっきから、誰かに見られてる気がするよ」


おじゃま・グリーンが不安げに呟く。


ネオスは周囲を見渡しながら前へ進む。岩壁には、かすかに焼け焦げた痕跡が残されていた。爆発の跡とも、衝突の痕跡ともつかない、異様な爪痕のような傷。


「戦った跡……かな。でも、誰と……?」


そのとき。


ザリ……ザリ……


岩の上を、何かが這う音がした。


「来るよ!」


ハネクリボーの声と同時に、谷の天井を駆けるように影が走った。


暗がりから――


ごうっ、と風が唸った。


「下がって!」


ネオスが叫ぶ間もなく、爆風のような突風が岩壁をえぐり、岩片が飛び散る。


煙の中から現れたのは――


鋭い角、鋼の翼、荒れ狂う黒の気流を纏った龍の影。


「アームド・ドラゴン……!?」


だが、その姿は明らかに“以前の彼”とは違っていた。


体の一部はひび割れ、ところどころに黒い結晶のようなものが食い込んでいる。眼は正気を欠き、怒りとも悲しみともつかぬ色に濁っていた。


「違う……これは、ボクたちが知ってる“あいつ”じゃない……!」


おじゃまたちが言葉を飲み込む。


「でも……なんとなく、伝わってくるんだ」


おじゃま・ブラックが、小さな声で続けた。


「どうして“あいつばっかり”って、ずっと思ってたのかもしれない。だから……」


ルビーがその場に立ち尽くしながら、ぽつりとつぶやいた。


「……誰かに助けてほしいって、心のどこかで叫んでる気がするの」


ネオスは拳を握りしめた。


「だったら、俺たちは……その叫びを無視するわけにはいかない」


黒き竜が、吠えた。


音が地を揺るがし、谷を震わせる。


それは、怒りの咆哮か。それとも、届かぬ助けを呼ぶ声か――。


ネオスたちは、立ち上がる。


「行こう。あいつを“止める”ために」


「うん。でも、“倒す”んじゃなく、“取り戻す”んだよね」


「当然だよ!」


おじゃまたちが続いた。


――その牙の奥にあるものが何であれ、いまはただ、その力に呑まれる前に、届くことを信じて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ