憤怒のかけら 1
Scene:黒煙の谷 ― 滲む天空
熱い。
この身を焼くような感情が、もはやどこから湧いてきたのかも分からない。
ブルーD――D-HERO ブルー・ディーは、黒く淀んだ空を見上げていた。
その両の拳から、赤黒い稲妻が絶え間なく漏れ出している。地面は焦げ付き、空気さえも歪んでいた。
「どうして……!」
低く、震える声。
その奥にあるのは悲しみか、それとも悔しさか。
いや、すべてを内包し、最終的に噴き出したのは――怒りだった。
「なんで……なんで、オレが、仲間に……!」
彼の背には、何体ものD-HEROが倒れていた。
操られた仲間を止めるために戦ったはずが、力を制御できず、気づけば彼自身が傷つけていた。
「オレは……ヒーローだったはずなのに……!」
ブルーDの目が、血のように赤く染まっていく。
止められない。全身を駆け巡る怒りと後悔が、理性の境界を越えていく。
彼が積み重ねてきた正義の意志さえ、今は闇の熱に焼き尽くされかけていた。
「守りたかった……だけなのに……!」
振り上げた拳が、目の前の虚空を砕く。
その一撃に、何の意味があるのかも分からない。
けれど、止まらなかった。
「だれか……!」
その言葉は、叫びにもならず、ただ震える呼吸とともに溶けて消えた。
そして――
彼の背後に、静かな足音が忍び寄る。