第1章:きらめきのかけら 5
ネオスの瞳が、一瞬だけ、微かに光を帯びた。
サファイア・ペガサスが振り下ろした蹄――
その軌道を裂くように、眩い閃光が走る。
「っ……!?」
激突の瞬間、何かが弾けた。
ペガサスの足が跳ね返され、重たい着地音と共に後退する。
「ネオス……今の、君が……?」
ハネクリボーが驚きに目を丸くする。
ネオスの腕には、残光のような粒子がわずかに揺れていた。
けれどネオスは困惑したまま、自分の手をただ見つめていた。
「……体が……勝手に……」
ルビーカーバンクルは、そっとネオスの背に身を寄せる。
前方では、サファイア・ペガサスが苦悶のような嘶きを上げ、霧の中へと姿を消していった。
――仲間を、攻撃してしまった。
その痛みが、胸の奥に鈍く残る。
「……あれが、闇の力……?」
ルビーの声は、揺れていた。
「うん。でも……完全には、染まりきってなかった」
ハネクリボーの声には、わずかな安堵と希望が混じる。
ネオスは記憶をなくしても、本能は仲間を守っていた。
そしてペガサスも――ほんの一瞬、蹄を緩めた。
「……なら、間に合う。まだ、みんなを取り戻せるかもしれない」
ルビーの瞳に、決意の光が宿る。
「ネオス、一緒に行こう。レインボードラゴンも、アンバー・マンモスも、みんな――!」
ネオスは言葉を返さなかった。
けれどその瞳は、静かにルビーを見て、うなずいた。
「……行こう」
その一言は、小さいけれど、確かだった。
谷の高台――
三体の小さな影が、いまだ見ぬ闇の世界を見つめる。
足元には、まだ温かな土の感触。
けれど、その一歩は、確かに未来を変えようとしていた。
彼らはまだ谷にいる。
だが、心はもう、希望という名の光に向かって歩み始めていた。




