1話 誕生
気がつくと何もない所にいた。
本当に何も無い、見渡す限り真っ黒な景色。
身体はある…が、目につく自分の身体は真っ白なのだ、状況がつかめず思考も定まらない。
するとどこからか声が聴こえた。
「あなたは選ばれました」
聴こえた、と言うが正確には音としてでは無く脳内に直接響くような感じだった
「どういう事だ?選ばれた?!何に選ばれたんだ?そしてここはどこなんだ?」
声を出したがそれは音としてでは無くさっきの声のように脳内にだけ響く。声も出ない、音も聞こえない、1種のテレパシーのような…
困惑しているときまた声が聞こえた。
「あなたは死にました。
ここは神々の空間です。
神によって無作為に選ばれた転生者として第2の人生を送ることが出来ます。
これは決定事項です。」
は?、なんだそれ、転生者?本当にそんなものがあるだなんて信じられないだろう?まるでアニメやマンガのような話だ。俺も信じられないがその声は優しいようなそれでいて無機質に淡々と話す。
俺は情報を整理しようと語りかける。
「決定事項って事は、俺に拒否権は無いって事か?」
「はい、拒否は定められていません。」
「転生者に選ばれたと言ったが、これから俺はどうなるんだ?」
「あなたは今から別の肉体に転生し、新たな生を受け、神からの使命を全うするのです。」
「使命?なんなんだ?使命って
魔王にでも挑んで世界を守れとかそういうことか?」
「いえ、あなたには剣聖になる使命が課せられています。
ただそれだけです。」
だそうだ。意味が分からない、転生して剣聖になれって…なんで???、
でもまぁ考えてもみろ、人生は死んだら最後、だけどまた自分の意思で生きられるのなら儲けものじゃないか?剣聖になるってのはどうもよく分からないが、なるようになれ、だ。
「分かった、剣聖になる。」
「では、頑張ってください
次の人生では、あなたに幸が多からんことを」
次の瞬間真っ白な光が体を包んだ、それと同時に意識が途絶えた。
気が付くと俺は女の人に抱かれていた。なんて言うか…とても美人だ。
真っ白な髪、凛とした顔立ち、だが母性が溢れ出る雰囲気が漂っている。
「レイン、会える日をずっと楽しみにしてたわ」
涙ぐみながらそう語り掛ける女性は母親だろう、その女性の傍らには端正な顔、それでいてすらっとはしているが筋肉質な男が立っていた。俺の父親だろうか、男も号泣していた。
「レイン、産まれてくれてありがとう
そしてアルバ、レインを産んでくれてありがとう」
「アンセル、これからきっと大変でしょうけど3人で頑張っていきましょう」
どうやら母の名前はアルバ、父の名前はアンセル、そして俺の名前はレインと言うらしい。レインか…我が事ながらとてもいい名前だ。
そうして俺は2度目の誕生を果たした。