4-39 二人の決着
轟雷が響き、天と地が衝突する。
体に衝撃が走り、全身を囲ったせいで光も入らず真っ暗で何も見えない。
それに、全身痺れて上手く動かない。
けど、意識はある。
《空間把握》で周囲の状況を把握しながら目を開け、慎重に防壁を還元していく。
目に入るのは、防壁があった場所を除き焼け焦げ真っ黒になった大地、倒れた敵の姿。
多くを見ずとも、勝ち残ったのは俺だと指し示すには十分な情報だった。
......行かなきゃ。
今もレイは敵と戦ってる。
それもかなり不利だ。
こんな所で寝てるなんてレイに示しがつかない。
......動け!
痺れ震える足を動かし、走り出す。
「《火炎》!ああもうさっきから面倒臭い!」
さっきから何回も焼き払ってるのに何回も何回も生えてくる!
やっぱり纏めて焼かないと駄目?
いや、ここで私が消耗するのは良くない。
二人より魔力量多いとはいえ使えば減るし限りもある。
まだ敵も残ってるしできるだけ魔力を残して勝ちたい......んだけどこいつ多分消耗させるのが狙いだ。
明らかに相性悪いし、実際何回も焼かれてるのに性懲りも無く何度も生やしてくる。
何回も焼いたせいで灰が積もってるし、それが邪魔なのか生えにくくなって有利にはなってきてるけどそれじゃ遅い。
こいつは私達が地上に降りた時まだそれなりに魔力残してたから消耗戦はあんまり良くない。
......やっぱりどっかで大技使わないと決めきれないか。
仕方ない。やろう。
そして、やるなら相手の出だしが遅い今!
「『それは焔の名を冠する世界』『全てを灰燼に帰す終焉の具現』!」
「チッ!やっぱりそう来るよな!《樹木の芽吹き》!《木枝の防壁》!」
「遅い!燃やし尽くせ!!《灰燼世界》!!」
また生やそうとしたがもう遅い!
大量の魔力を注ぎ込み、私の周囲全てを焼き払う。
レイチェルちゃんと一緒に練習した、一番火力が高い魔術だ。
ごっそり魔力持っていかれたけどこれで決着つけられた。
これでレイチェルちゃんの所に合流でき──
「──死に絶え』『子はその──がはっ──屍を喰らい』『歴史を紡ぐ』」
詠唱!?
さっき生やしたやつが間に挟まって焼ききれなかったか!
「くっ!《火炎》!!」
「はっ!さっきの言葉そっくりそのまま返させてもらうぜ。遅い!芽吹け!!《封印世界樹》!!」
さっきとは真逆の状況。
相手が間に合って、私が間に合わなかった。
名前を唱えると同時に地面に積もった灰が消える。
還元!?いや、この感じはそのまま他の魔術に組み込まれた?
だとしたらこれまで生やしてきた草に使った魔力がそのまま上乗せされてるはず!
属性はまだレイチェルちゃんの冷気があるから変わってないはず。
なら、また同じように地面から生える!
「《ドラコウイン──!?」
飛び上がり避けようとする──が、避けられない。
例の追尾性能に加え、あまりにも成長が早い。
あっというまに足を取られ、腕を縛られ、動きを止められる。
そして、体から魔力が抜けていく。
これ、私の魔力を吸い上げてる!?
多分これは拘束用の術式だ。
相手はとっくに倒した。
それなのにこのままだと私も動けなくなる。
それだけはまずい!
今レイチェルちゃんが頑張ってるのに加勢に行けなくなる!
それだけは駄目だ!
「アアアァァァァァアァァァアアア!!」
意味の籠っていない声を張り上げ、出せる限りの炎を全身から出す。
もう魔力の温存とか言ってられない。
ここから抜け出さなきゃ何も出来ない!
「燃──えろッ!!《灰燼世界》!!」
今出せる限りの火力を出し、魔力を吐き出す。
ただ、厄介なことにこれは私の魔力を使う。
そのせいで燃やしても成長するし、段々燃えずらくなってきてる。
魔力を吸い上げられ、今まで体験したことの無い速度で魔力が減っていく。
「燃、えろォッ!!」
なけなしの魔力を炎に変え、焼き尽くす。
──体に衝撃が走り、多分地面に落ちる。
魔力使いすぎて気持ち悪い。
気持ち悪すぎて、目も開けられない。
手持ちの魔道具を還元し、ほんの少しだけど魔力の足しにする。
本当の使い方じゃないけど魔道具作り手伝ってよかった。
練習した甲斐があった。
......いつか絶対ちゃんとした使い方で使ってやる。
まあ、そんなこと今はいい。
ほんのちょっとだが魔力が回復したおかげか少し気分がマシになった。
目を開け、周りを見渡す。
倒れた敵、積もった灰、黒焦げの服。
色々見えるけど、結局やらなきゃいけないことは変わらない。
もう何分経ったかも分からない。
もう遅いかもしれない。
けど、行かなきゃ。
杖に体重を預けながら、歩き出す。




